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〈ART&MOVIE〉この冬は充実の音楽映画に酔いしれたい!!

&w(アンド・ダブリュー)編集部がおすすめする、アートや映画の情報を随時ご紹介します!

『ボヘミアン・ラプソディ』(c)2018 Twentieth Century Fox


『ボヘミアン・ラプソディ』(c)2018 Twentieth Century Fox

『ボヘミアン・ラプソディ』

この11月から1月にかけて心動かされる音楽映画が多く公開される。映画を見ながら一体何度「生まれ変わるなら人の心を動かすミュージシャンになりたい」と思ったことか。

まずは、未見であればぜひおすすめしたいのが英国出身のロックバンド「クイーン」を描いた『ボヘミアン・ラプソディ』(公開中)だ。リードボーカルであるフレディ・マーキュリーの半生を中心に、彼がまだ何者でもなかった時代から、今なお語り継がれる20世紀最大の音楽イベント「ライヴ・エイド」まで、クイーンの魅力を28の名曲とともに余すところなく伝える。クイーンというバンドの土台であり、強みである“家族”的なつながりを発見できる。

1970年、ロンドン。昼は空港で働き、夜はライブ・ハウスに入り浸っていたフレディ・マーキュリー(ラミ・マレック)は、ある晩、お気に入りのバンドのもとへ向かう。ところが、ギタリストのブライアン・メイ(グウィリム・リー)とドラマーのロジャー・テイラー(ベン・ハーディ)からたった今ボーカルが脱退したと聞かされ、すかさず自分を売り込むことに。2人のつれない態度にフレディは諦めるどころか突然歌い出すと、ブライアンとロジャーも目を輝かせて一緒にハモり出す。

1年後、ベーシストのジョン・ディーコン(ジョー・マッゼロ)がバンドに加わり、フレディのアイデアでバンド名は「クイーン」に決定。4人はアルバムを制作し、やがて『キラー・クイーン』が大ヒット。名曲が次々と生み出されていく……。

(c)2018 Twentieth Century Fox


(c)2018 Twentieth Century Fox

最大の見どころはやはり、クライマックスの「ライヴ・エイド」のシーン。「アフリカ難民救済」を目的に1985年に開催された20世紀最大のチャリティーコンサートで、クイーンは参加者の中で最多の6曲を披露した。

一つの家族としてつながっていたクイーンだが、フレディがメンバーに告げずにソロ契約をしたことでバンドは崩壊寸前に陥ってしまう。そんなクイーンが再び“家族”の絆を取り戻し、メンバーが全霊を込めて挑んだのがこの「ライヴ・エイド」だった。

英国・ウェンブリースタジアムの巨大ステージは、ボービントン空軍基地にセットが組まれ、壁のはげかけたペンキや水道管のサビに至るまで再現されたという。スタジアムの観客はもちろん、中継された国々のファンからも大反響だったステージを見事に再現。映画を見る者もライブに立ち会っているかのような臨場感に興奮を抑えきれないはず。筆者は涙しながら彼らの歌を口ずさんでいました。クイーンの全てが詰まったかのような21分のパフォーマンスをぜひ体感してほしい。

(c)2018 Twentieth Century Fox


(c)2018 Twentieth Century Fox

『ボヘミアン・ラプソディ』
英国のロックバンド「クイーン」のボーカル、フレディ・マーキュリーの人生を中心に、クイーンの誕生から伝説となった20世紀最大のチャリティー音楽イベント「ライヴ・エイド」のパフォーマンスを再現した最高の音楽エンターテインメント!
監督:ブライアン・シンガー 出演:ラミ・マレック、ルーシー・ボイントン、グウィリム・リー、ベン・ハーディ、ジョー・マッゼロ、エイダン・ギレン、アレン・リーチ、トム・ホランダー、マイク・マイヤーズ、アーロン・マカスカーほか。全国にて公開中。

『エリック・クラプトン~12小節の人生~』

(C)BUSHBRANCH FILMS LTD 2017


(C)BUSHBRANCH FILMS LTD 2017

「ギターの神様」「世界3大ロックギタリスト」の一人などと称される英国出身の世界的なミュージシャン、エリック・クラプトンが幼少期から現在までを正直に自ら語ったドキュメンタリー。 

母親に拒絶され、祖父母に育てられた不遇の少年時代はもとより、親友ジョージ・ハリスンの妻パティへの愛、激しい女性遍歴、クスリとアルコールに溺れる日々。はちゃめちゃな人生に光を与えてくれた息子の誕生、そしてまさかの息子の事故死……。ひとりの人生にこんなことが起こるんだ? と思ってしまうほど、多くの悲しみに彩られたクラプトンの人生に愕然(がくぜん)とする。

(C)BUSHBRANCH FILMS LTD 2017


(C)BUSHBRANCH FILMS LTD 2017

 

だが、そんな彼にはいつも音楽が救いとなっていた。ラジオ番組で聴いた英国でマイナーだった黒人音楽、ブルースに取りつかれたことをきっかけに、クラプトンのミュージシャンとしての揺るぎない根を築くことになった孤独な子供時代。酒とドラッグに溺れ、パティへの思いに苦しむ時も、歌で彼女の心をつかもうとする。最愛の息子を亡くした時は、誰もが「しらふで乗り越えるのは難しいのでは」と考えたが、クラプトンは悲劇をポジティブに替えて生きようと決心。朝から晩までギターを弾き続けた。そんな中で生まれたのが名曲『ティアーズ・イン・ヘヴン』だ。

いくつもの困難にぶつかってはへこたれるも、自ら這(は)い上がり音楽を奏で続けたクラプトン。終盤にB.B.キングがコンサート会場で語る「我が友クラプトン」の言葉は、ブルースを愛し続けてきたクラプトンにとって最高の賛辞だったに違いない。

名声や金よりも音楽がすべて。人生を賭けてそう語れるクラプトンはやっぱり、偉大だ。

(C)BUSHBRANCH FILMS LTD 2017


(C)BUSHBRANCH FILMS LTD 2017

『エリック・クラプトン~12小節の人生~』
少年時代の孤独、親友ジョージ・ハリスンの妻への恋、ドラッグとアルコール漬けの日々、息子の死など紆余(うよ)曲折のクラプトンの人生を、貴重なアーカイブ映像とともにクラプトン自ら語る音楽ドキュメンタリー。
監督:リリ・フィニー・ザナック 製作:ジョン・バトセック 編集:クリス・キング 出演:エリック・クラプトン、B.B.キング、パティ・ボイド、ジョージ・ハリスン、ジミ・ヘンドリックス、ロジャー・ウォーターズ、ボブ・ディラン、ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・ビートルズほか。11月23日からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開。

『ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~』

(C)2018 WH Films Ltd


(C)2018 WH Films Ltd

ホイットニー・ヒューストンに映画『天使の贈り物』(1996年)の取材でインタビューしたことがある。当時、彼女はちょうど妊娠中。左手の薬指には見たこともないようなまばゆいダイヤモンドの指輪が輝いていた。何を話したかよりも、そのダイヤのきらめきと妊娠を俳優仲間に伝える幸せそうな笑顔ばかりが、いまも印象に残っている。

だからこそ、余計に思っていた。なぜ、ホイットニーが不慮の死を遂げなければならなかったのか。元夫ボビー・ブラウンのせいだと勝手に思っていたものの、ずっとその思いが心にくすぶっていた。人の心を揺さぶらずにはおかない、奇跡の歌声を持った彼女がなぜ人生を誤らなければならなかったのか。そんな疑問に答えてくれるようなドキュメンタリー映画が『ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~』だ。“協力するが口を出さない”という約束で、ホイットニー・ヒューストン財団の完全な協力のもとに制作されただけに、初公開となるホームビデオや音源など貴重な映像や音声が満載。ホイットニー自身の言葉が少ないだけに、家族や友人、元恋人、音楽関係者らで彼女を知る多くの人の証言を様々な角度から紡ぎ合わせ、ホイットニーその人を浮き彫りにしている。 

(C)2018 WH Films Ltd


(C)2018 WH Films Ltd

83年にテレビ初出演を果たし、全米に衝撃を与えたホイットニーはインタビューで、数多くのライバルたちに勝てる点を問われて言う。「私は神様から特別な才能を授かった。それを世界に広めるんだから負けるわけがない」。 

その言葉の通り、ファーストアルバム『そよ風の贈りもの』はシングルカットしていった曲は軒並み大ヒット。7曲続けて全米シングルチャート1位に輝いた。しかし、ホイットニーの成功はやがて、次第に自身の足を引っ張るようになる……。 

マネジメントに乗り出し“王様となった”父、妹を守るためと言いながらやりたい放題だった兄弟たち。麻薬に手を出すようになったホイットニーは、薬物が禁止されている日本でさえも手に入れたという。ボビー・ブラウンとのDVや離婚問題、父との間に起きた泥沼訴訟、さらに幼少期にいとこから受けた性的虐待など、これまで語られてこなかった胸が痛くなるようなエピソードが次々と明らかに。金銭的な問題を抱え復活ツアーを目論(もくろ)んだものの全盛期には程遠い歌声で会場に立つホイットニーの映像はショッキングだ。

もちろん、ホイットニーの「影」ばかりを追っているわけではない。1991年の第25回スーパーボウルで全米を一つにした国歌斉唱をはじめ、聴く人の心を鷲摑(わしづか)みにしてしまう奇跡の歌声を持つスーパースターの姿も映し出す。

だからこそ、本作を見てさらにホイットニーの死を悼む気持ちは増した。同時に、ホイットニーの歌声がより強く鮮明に蘇(よみがえ)った。

(C)2018 WH Films Ltd


(C)2018 WH Films Ltd

『ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~』
初公開となるホームビデオやアーカイブ映像、未公開音源などを交えながら、家族や友人、仕事仲間などの証言をもとにホイットニーの素顔に迫るドキュメンタリー。
監督:ケヴィン・マクドナルド 製作:サイモン・チン、ジョナサン・チン、リサ・アースパマー 出演:ホイットニー・ヒューストン、シシー・ヒューストン、エレン・ホワイト、メアリー・ジョーンズ、パット・ヒューストン、ボビー・ブラウンほか。2019年1月4日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。

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