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生きて働くぼくらの旅行記『生きるように働く』

撮影/馬場磨貴

撮影/馬場磨貴

ページをめくりながら思い出したのは、『深夜特急』でした。『深夜特急』は、若かりし日の沢木耕太郎氏が、世界中を旅してまわったときの旅行記で、今なお多くの人に愛されている作品。我が家の本棚にも、破れかけのカバーの6冊が、ちょこんと並んでいます。これまでも旅のお供にバックパックに忍ばせたり、何でもない日常の中で読み返してきたりしました。

生きることと働くことの境界

『生きるように働く』を読んでいたとき、私はなぜか『深夜特急』を思い出していました。今回は、その理由を考えつつ、本書のご紹介ができればと思います。

著者のナカムラケンタ氏は、求人サイト「日本仕事百貨」の代表であり生みの親。「日本仕事百貨」は、一般的な求人サイトと異なり、募集先の話を丁寧に聞き、独自の観点で編集されています。より深く人や仕事に入り込んでいくスタイルで、人の手をかけてつくられたその求人案内は、条件や募集要項が単に羅列されたものとは、明らかに一線を画しています。

本書では、著者が自身の半生を振り返りながら、これまで出会ってきた様々な仕事人とのエピソードを思い出していきます。そして、「生きること」「働くこと」「生きるように働くこと」についての思索を、丁寧に紡いでいくのです。

エピソードは、例えば、ITベンチャーや起業家が集まる徳島県・神山町を訪ねて、その秘密の一端を垣間見たこと。島根県の山間にある小さな町で、古民家を10年かけて修復して宿にしたある夫婦を訪ねたときのこと。沖縄の「月光荘」では、地元の人々と酒を飲みかわし、東京のブックカフェのオーナーには、オープン当時の話を聞きに行ったりもします。

「ここは私の理想の暮らしの場なんですね。その理想の暮らしを世の中に問うてみたい、という気持ちでここを宿にしました」

「つくっていて楽しいというのを表現できなくなると、たぶんアウトだなと思っていて」

「損か得かで考えないで、根本的な必要性から考えたい」

「自分が35歳のときに、食べ物について考えさせられることがあって。売ることではなくて、みんなにとって食べ物はどういう役割を果たすのか。どうあるべきだろうか。おいしさってなんだろうということを考えはじめたんですね」

「すでにあるものを提供するのではなく、一緒につくること。みんなでつくる時代なんです」

その出会いや言葉たちが、「生きること」や「働くこと」というテーマへと繋がっていきます。

ビジネス書のような、旅行記のような

様々な場所を旅して、多くの人に出会い、そして語らう。「仕事」という、ある意味で究極の日常性の中に隠れていた、「生き方」という深遠なテーマが顔を出して、本書の中ではそれらの境界もぼんやりとあいまいなものになっていきます。その境界の溶け方が、なぜか「旅」を連想させたのかもしれません。

生きていることが仕事につながって、働いているときのように日々を愛する。二つのボーダーが、ゆるやかなものになった先に、あたらしい生き方(働き方)があるのかもしれません。そのときの自分は、なんだかいまより楽しそうです。

ページをめくるたびに、本書はきっと違う印象を与えてくれます。そして、「生きるように働く」ためのヒントも。まるで、何かを探しながら働くぼくらのための、「旅行記」のようです。

(文・中田達大)


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    カルチュア・コンビニエンス・クラブに新卒入社後、CCCマーケティングにてTポイント事業の法人向け新規営業に従事。2018年4月より現職。お客様が理想のワークスタイルを見つけ、実現していく一助になるような売り場づくりを目指し、日夜奮闘中。

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