花のない花屋

どんな時も「疲れた」とは言わない。大学院を首席卒業後に牛乳屋を継いだ男友達へ

どんな時も「疲れた」とは言わない。大学院を首席卒業後に牛乳屋を継いだ男友達へ

〈依頼人プロフィール〉
市井京子(仮名)さん 44歳 女性
大阪府在住
会社員

社会人になってから仲良くなった男友達にお花を贈りたいです。彼は土木関係の勉強をし、大学院を首席で卒業しましたが、専門の道へは進まずに祖父が創業した家業、“宅配の牛乳屋”を継ぎました。

今や都内に残る数少ない牛乳屋で、従業員は20人ほど。数年前にお父さまががんを患い、病状が悪化してからは彼が社長となってスタッフを引っ張っています。

社長である彼自身も、毎日欠かさず夜明け前に牛乳を配達しているので慢性的に寝不足気味。そんなときにお父様が倒れ、自宅での看護も加わり、そろそろ体力も限界なのでは……と、少し心配しています。

彼はどんなときでも決して「疲れた」とは言いません。月に一回ほど、仕事で上京するたびに会いますし、よくLINEでやりとりもしていますが、愚痴を聞いたことは今まで一度もありません。

彼が話すことは、たいてい仕事の悩みやお父様の様態のこと。ネット宅配が浸透し、栄養の摂り方も変わってきた今、宅配牛乳は伸び悩んでいます。また、早朝宅配の仕事をするスタッフもなかなか集まりません。その一方で、ネットに不慣れで外出も難しい高齢のお客様が毎朝牛乳の宅配を待っているのも事実。そういうお客様がいる限り廃業にはしたくないと言っており、昔ながらの地域密着の商売を続けながら、新しいビジネスができないか模索しているようです。

仕事も家族も周りの人も大切にし、ずっと精一杯走り続けている友人。社長として新しいビジネスに挑戦しようとしながら、お父様の介護をしている彼へ、これまでのねぎらいとエール、私からの尊敬の念をこめて花束を贈りたいです。

彼はやんちゃでお酒とお祭り好きな一方、ひたすら親思いで、まじめで繊細。いつも人に囲まれたリーダーシップのある少年がそのまま大人になったような人です。元高校球児で、野球部ではキャプテンも務めていました。

今は心身ともに疲れていると思うので、心が落ち着くようなグリーン系のアレンジをお願いできますでしょうか。

どんな時も「疲れた」とは言わない。大学院を首席卒業後に牛乳屋を継いだ男友達へ

花束を作った東さんのコメント

20人ものスタッフをかかえ牛乳屋さんをされていることは凄いこと。また、それをご友人がくみ取ってお花をお贈りするなんて、素晴らしい関係かと思います。

お忙しそうですから、花もちの良いものを優先しました。花材は、スモークグラスをはじめ、バーゼリアやグロリオサ、シキミア、トルコキキョウ、ヒカゲ、アセボ、セダムで、心身の疲れをいやすグリーンのアレンジにしました。

僕の地元では新聞と牛乳の配達はセットだったのを思い出します。40歳にもなると色々と考えますよね。いよいよ人生の折り返しのタイミング。つぼみをいれて、「これから花を咲かせる」というエールを込めました。

どんな時も「疲れた」とは言わない。大学院を首席卒業後に牛乳屋を継いだ男友達へ

どんな時も「疲れた」とは言わない。大学院を首席卒業後に牛乳屋を継いだ男友達へ

どんな時も「疲れた」とは言わない。大学院を首席卒業後に牛乳屋を継いだ男友達へ

どんな時も「疲れた」とは言わない。大学院を首席卒業後に牛乳屋を継いだ男友達へ

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」まとめ読み

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PROFILE

  • 宇佐美里圭

    1979年、東京都生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒。在学中、ペルー・クスコにて旅行会社勤務、バルセロナ・ポンペウファブラ大学写真専攻修了。ワールドミュージック誌、スペイン語通訳、女性誌、『週刊朝日』編集部を経て、『アサヒカメラ』編集部。料理研究家・行正り香さんの書籍を多数手がける。ラテン音楽、山、ワインが好き。

  • 椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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殴られ、くも膜下出血になっても父親を支援する優しい娘へ、花束で素晴らしいXマスを

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