猫と暮らすニューヨーク

猫と赤ちゃん、毎日少しずつ、家族になっていく。

猫と赤ちゃん、毎日少しずつ、家族になっていく。

ジェフさんとダリアさんの婚約日と、フラニーが保護された日が同じということもあって、運命的なものを感じたという夫妻。大きなツリーが飾られた家で初めてのクリスマスを迎えます。

[猫&飼い主のプロフィール]
猫・Franny Apple(フラニーアップル)5歳 メス トラ柄と三毛の雑種
飼い主・UXデザイナーのJeff Bartenbach(ジェフ・バーテンバック)さんと、メイクアップアーティストで、ハンドメイドのせっけんブランドFreckles and Honeyを主宰するDahlia Warner(ダリア・ワーナー)さん夫妻。NY郊外の街コールドスプリングにある一軒家で、生後4カ月の長女Marigold(マリーゴールド。愛称はゴールディー)ちゃんと暮らす。

今から約4年前のこと。婚約したばかりのジェフさんとダリアさんは、ブルックリンにあるレストランで週末のブランチを楽しんでいた。するとダリアさんの携帯電話に、フェイスブックから通知が届く。「地元にある猫の保護施設から、新着の保護猫がいるというお知らせでした。当時私は12年一緒に暮らした愛猫を亡くしたあとで、ほかの猫には一切興味がなかったし、ジェフも猫を飼った経験がなかった。でも、その日は何かが“保護猫をちらっと見に行ってみてもいいかも……”と私に思わせたんです」(ダリアさん)。

同意したジェフさんと共に、軽い気持ちで猫の保護施設へ。たくさんの子猫が戯れているなかで、目と耳だけがやけに大きく、「まるでキツネみたいだった」というメスの成猫(せいびょう)に目が留まった。猫を譲り受けるなんて一ミリも思っていなかった(少なくともそのつもりでいた)2人だけれど、あっさりその猫を家に迎えることに。巡り合わせとは、まさにこのこと。猫との出会いは、思いがけずやってくるのだ。

サリンジャーの本『フラニーとズーイ』みたいな、ちょっと時代遅れの名前がかえってかわいらしい。そんな理由から、2人は保護猫をフラニーと名づけた。甘えん坊な性格で、抱きかかえられてダリアさんに歌を歌ってもらったり、体を2人にぴったりくっつけて眠ったり、「赤ちゃんみたいに扱われるのが好きなんです」とダリアさん。猫を飼うのが初めてのジェフさんも、人懐っこいフラニーのおかげで、戸惑いを感じることなく、すんなり猫生活をスタートすることができたという。

猫と赤ちゃん、毎日少しずつ、家族になっていく。

大自然のなかに建つ一軒家。迷子になると困るため、家猫として外には出ずに暮らしているフラニー。万が一に備えて、名前と電話番号を記した首輪を付けています。

そんな2人&一匹の暮らしに、うれしいニュースがもたらされた。ダリアさんが妊娠したのだ。妊娠によって、猫との暮らしを続けることに不安を覚える妊婦さんもいるけれど、「私はあまり気にならないタイプ。念のためドクターに確認したら、猫のトイレ掃除にだけ気をつければいいというアドバイスでした(猫の糞便(ふんべん)を通して人間に感染するトキソプラズマ症を避けるため。かなり限られた条件と期間の感染によるが、胎児にも影響を与えることがある)。だからジェフとトイレ掃除を交代したぐらいです」(ダリアさん)。

一方のフラニーは、ダリアさんの体の変化と、家族の中で新しい出来事が起こりつつあることを敏感に察していたという。ダリアさんの膨らんだおなかに乗ってきては、前脚で“ふみふみ”をし、頻繁に甘えてきた。「だからフラニーにも、面と向かってきちんと説明をしたんです」とダリアさんは笑う。「これから何かが変わるけれど、私たちの間では決して何も変わらないからね、って」。

猫と赤ちゃん、毎日少しずつ、家族になっていく。

結婚、新居への引っ越し、ダリアさんの妊娠や育児を見守り、共に経験してきた猫のフラニーは、家族の一員。こうしてみんなで寄り添い、過ごす時間は「猫との生活で一番すばらしい瞬間」とダリアさん。

出産まで数週間と迫ったある日、一家は郊外へ引っ越すという一大イベントを決行。休暇で何度か訪れていた郊外の街が気に入り、一軒家を購入して住むことにしたのだ。「私もジェフも物を作る仕事。静かな環境に身を置くことで、よりクリエーティブになれるんです」(ダリアさん)。都会とはがらりと異なる環境に、フラニーはむしろ喜んでいる様子。家の中には冒険するスペースが十分にあるし、窓外の庭や裏山には、鳥や七面鳥、ときにはアライグマや鹿もやってくる。

ほどなくして、めでたく待望の赤ちゃんを迎えた一家。赤ちゃんが家にやってきたその日だけは、さすがのフラニーも警戒して一日中椅子の上に座り、様子をうかがっていたけれど、それから4カ月、赤ちゃん用のベッドに登ってみたり、赤ちゃんのおもちゃで遊んでみたり、猫ならではのアプローチでゴールディーちゃんとの距離を少しずつ縮めているようだ。「そのうちフラニーが、ゴールディーのベビーシッターをしてくれないかと期待しているんですけどね」と夫妻は笑う。

猫と赤ちゃん、毎日少しずつ、家族になっていく。

ドリーミーな子ども部屋。フラニーとしては、気になるおもちゃがたくさんあって目移り。ゴールディーちゃん不在時に、ぬいぐるみをくわえて振り回し、遊んでいたこともあるとか。

生まれた時から、猫が身近にいる暮らし。ゴールディーちゃんにとって、どんな意味があると思う? そんな質問にダリアさんは頰をゆるめ、こう答えた。「私が生まれたとき、家にはマウスっていう名前の猫がいたんです。確か私が4歳のときに死んでしまったけれど、それでもその猫がとても愛(いと)おしい存在だったことを、今でもちゃんと覚えているんです。猫と私は、まるで姉妹みたいな関係でした。同じような経験をゴールディーにもしてもらえたら、そう思っています」。

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連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

ダリアさんのウェブサイト
http://dahliamakeup.com/

Freckles and Honeyのウェブサイト
http://frecklesandhoney.com/

ダリアさんのインスタグラム
https://www.instagram.com/DahliaWarner/

Freckles and Honeyのインスタグラム
https://www.instagram.com/frecklesandhoneyco

ジェフさんのウェブサイト
http://jeffbartenbach.com/

ジェフさんのインスタグラム
https://www.instagram.com/jeffbartenbach

写真・前田直子

PROFILE

仁平綾

編集者・ライター
ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
http://www.bestofbrooklynbook.com

前田直子(まえだ・なおこ)

写真家

24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
http://www.naokomaeda.net

芸達者な猫、“お手”は飼い主とのコミュニケーション

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猫好き夫婦。理想は90歳で9匹の猫と暮らすこと

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