花のない花屋

殴られ、くも膜下出血になっても父親を支援する優しい娘へ、花束で素晴らしいXマスを

殴られ、くも膜下出血になっても父親を支援する優しい娘へ、花束で素晴らしいXマスを

〈依頼人プロフィール〉
蓮田葉子さん(仮名) 46歳 女性
神奈川県在住

今年4月に社会人になり、11月から一人暮らしを始めたばかりの次女に、クリスマスの花束を送りたいです。

彼女は小さなときから自立心が強く、負けず嫌いでがんばり屋さんでした。長女が高校生のときに統合失調症になり、次女にかまってあげられなかったときも、彼女は一人で高校受験を乗り越え、推薦入試で大学に進みました。

そんなバイタリティーのある次女ですが、大学に入って一年目のとき、くも膜下出血で生死の境をさまよいました。実は、父親に暴力をふるわれてのことです。

今はすでに離婚していますが、元夫は結婚当初からDV(ドメスティックバイオレンス)があり、3人の子どもたちにも年に2、3度手をあげていました。彼は自分の思い通りにいかないとカッとなり、お酒に酔うと暴力をふるっていたのです。

次女が大学に入った年に、私はもう耐えきれず、子どもたちを連れて家を出ようとしましたが、娘たち2人は飼い犬がいたこともあって家に残ることになりました。私は一番下の長男だけを連れて出ていましたが、その2週間後に夫が“爆発”。次女が殴られてくも膜下出血を起こし、ICUに3日間も入っていました。

医師からは急変することもあるので「覚悟をするように」と言われました。幸い娘は回復しましたが、帰宅後の安全が確保できないとのことで、なかなか退院することもできませんでした。

医師にシェルターに入ることを勧められましたが、娘は大学を休みたくないとのことで、結局娘たち2人も私の家で暮らすことになりました。彼女はその後もまじめに大学に通い、すばらしい成績で卒業。今年の4月からはSEとして働いています。

元夫はDV専門の治療プログラムを受け、最近はだいぶ改善してきたようです。次女もあんなに大変なことがあったにもかかわらず、いまだに父親には笑顔で接し、立ち直るのを支援しようとしています。そういう優しい子です。

そんなこともあったので、親としては結婚するまで手元に置いておきたい気持ちもありましたが、その反面、つらい思い出ばかりがある家からは早く出て行き、自由に自分の人生を歩んで行ってほしいという気持ちもありました。そんな複雑な思いを抱えながら、一人暮らしをする娘の引っ越しを手伝いました。

これまでどれほど娘の笑顔にたくさん救われてきたことか。どれほどがんばる姿に力をもらってきたことか……。私は未熟な母親ですが、つらい経験を乗り越え、新しい一歩を踏み出した娘へエールの花束を送りたいです。「あなたには人を元気にする力があるのよ」「世界で一番愛しているよ」という思いを込めて……。

娘はクリスマスが大好きなので、クリスマスの気分が盛り上がるかわいい花束だとうれしいです。「今年はクリぼっち」と言っていましたが、少しでもうれしい思い出が増えれば、悲しい思い出が薄れていくような気がします。

東さんの花束が、娘の人生に幸せな一ページを刻んでくれますように。そして、今後つらいことがあっても、その思い出が希望になってくれますように……。

殴られ、くも膜下出血になっても父親を支援する優しい娘へ、花束で素晴らしいXマスを

花束を作った東さんのコメント

一人暮らしを始めたばかりでクリスマスが大好きな次女様へ。お母様のご依頼通り、クリスマス感がたっぷりな花束に仕上げました。

ポインセチアは通常は鉢で見かけるかと思いますが、アレンジに加えてみました。可愛らしい”実もの”ヒペリカムを全体的に散らし、マツカサ、ヒメリンゴも入れてみました。後は、ケイトウ、ヒバ、ヒムロスギ。様々な赤色の花を織り交ぜ、クリスマス気分を盛り上げてくれるように工夫しました。

悲しい思い出が薄れていきますでしょうか。ぜひ、温かいクリスマスをお過ごしください。

殴られ、くも膜下出血になっても父親を支援する優しい娘へ、花束で素晴らしいXマスを

殴られ、くも膜下出血になっても父親を支援する優しい娘へ、花束で素晴らしいXマスを

殴られ、くも膜下出血になっても父親を支援する優しい娘へ、花束で素晴らしいXマスを

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(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

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PROFILE

  • 宇佐美里圭

    1979年、東京都生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒。在学中、ペルー・クスコにて旅行会社勤務、バルセロナ・ポンペウファブラ大学写真専攻修了。ワールドミュージック誌、スペイン語通訳、女性誌、『週刊朝日』編集部を経て、『アサヒカメラ』編集部。料理研究家・行正り香さんの書籍を多数手がける。ラテン音楽、山、ワインが好き。

  • 椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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どんな時も「疲れた」とは言わない。大学院を首席卒業後に牛乳屋を継いだ男友達へ

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