花のない花屋

実家を出て生活していると親と会えるのは年間24時間だけ? 1人で過ごす母へ花束を

実家を出て生活していると親と会えるのは年間24時間だけ? 1人で過ごす母へ花束を

〈依頼人プロフィール〉
柳信子さん 42歳 女性
兵庫県在住
パート職員

一昨年12月のこと。78歳の父が風邪のような症状を訴え、日曜日にかかりつけの病院へ行きました。そして水曜日の朝、症状がひどくなって父の意識が薄れ、これはおかしいと思った母が救急車を呼んだところ、すぐに入院。肺炎とのことでした。

私はそれほど深刻なことだとは思っていませんでしたが、翌日病院に駆けつけた兄からは「覚悟をした方がいい」と電話が。とはいえ、私は埼玉の実家からは遠い関西に住んでいますし、子どもの大事な行事があったため、すぐに実家に駆けつけることはしませんでした。

そして、金曜日には、母から電話で「ありがとうと手を握ってくれた。持ち直したみたい」との連絡がありました。しかし、ほっとしたのもつかの間……。あれよあれよと様態が悪くなり、入院してから4日後、クリスマスイブの前日に父は旅立ってしまいました。今思えば、母への言葉は最後の力を振り絞った言葉だったのでしょう……。

父は特に病気があったわけでもなく、本当に突然のことでした。私たち兄弟が巣立ってから15年ほど父と二人暮らしだった母にはショックが大きかったようで、しばらく心にぽっかり穴があいたような状態のようでした。もっとあれも食べさせたかった、あそこにも一緒に行けばよかった……と、そんなことばかり考えてしまうようで、電話をすると泣いているときもありました。

会社人間だった父は、電球の替え方もわからないほど、家のことはすべて母任せでした。父は食べるのも飲むのも大好きで、夜はお酒の付き合いも多い人でした。父の体を心配し、母が強い口調でたしなめている姿を何度も見てきました。

そんな父でしたが、母のことはとても大事に思っていたようで、亡くなった後、カード入れの中に母の若かった頃の写真が入っているのがわかりました。そんなことは母も知らなかったので、とても驚いていました。

最近、ようやく母は趣味の卓球やボーリングに出かけることができるようになってきましたが、近くにいてあげられないので気がかりです。一説によると、実家にいない人が親と会える平均時間は1年で24時間だそう。あと残りの人生、私は母と何日間一緒に過ごせるのだろう……と考えると切なくなってきます。

そこで、遠くにいる母へ、少しでも元気になれるような、父と過ごした素敵な時間に包み込まれるような花束を造っていただけないでしょうか。

母の誕生日は6月で、あるとき父は母の誕生日にすずらんの鉢植えを買ってきてプレゼントしたそうです。母はとてもうれしかったようで、今も大事に育てています。また、母はクレマチスを育てているのですが、水をやるのは父の担当でした。母はオールドピンクが似合う雰囲気なので、やわらかい、淡い色のアレンジだとうれしいです。

実家を出て生活していると親と会えるのは年間24時間だけ? 1人で過ごす母へ花束を

花束を作った東さんのコメント

残されたお母様が少しでも元気になれるような、優しいピンクの色合いのアレンジです。

スズランとクレマチスを採用した理由は、非常に香りが良いから。「お父様と過ごした素敵な時間に包み込まれるような花束」ということですので、香りを楽しみつつ、素敵な時間を思い出していただければ。あとは、スイートピー、スカビオサ、ピットなどを使用しています。

「実家にいない人が親と会える平均時間は1年で24時間だそう」とのことですが、この花束を作りながら、実際に私も家のことを思い出しました。実際に24時間だと思いますし、共感しました。

実家を出て生活していると親と会えるのは年間24時間だけ? 1人で過ごす母へ花束を

実家を出て生活していると親と会えるのは年間24時間だけ? 1人で過ごす母へ花束を

実家を出て生活していると親と会えるのは年間24時間だけ? 1人で過ごす母へ花束を

実家を出て生活していると親と会えるのは年間24時間だけ? 1人で過ごす母へ花束を

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

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PROFILE

  • 宇佐美里圭

    1979年、東京都生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒。在学中、ペルー・クスコにて旅行会社勤務、バルセロナ・ポンペウファブラ大学写真専攻修了。ワールドミュージック誌、スペイン語通訳、女性誌、『週刊朝日』編集部を経て、『アサヒカメラ』編集部。料理研究家・行正り香さんの書籍を多数手がける。ラテン音楽、山、ワインが好き。

  • 椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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殴られ、くも膜下出血になっても父親を支援する優しい娘へ、花束で素晴らしいXマスを

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「専門学校入学日に退学」「彼と住むために家をでる」 それでも味方でいてくれる母へ

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