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逆転受賞に不当圧力…2019米国の映画賞シーズンは大混戦

アカデミー賞との一致率の高さで知られる「クリティクス・チョイス・アワード」の授賞式が日本時間1月15日、米国サンタモニカで開催されました。本命不在と言われる今年の映画賞シーズンですが、ここで流れが変わるのか……。一方で、お祭りムードに水を差す不穏なニュースも飛び込んできました。

逆転受賞に不当圧力…2019米国の映画賞シーズンは大混戦

クリティクス・チョイス・アワードの女優賞を分かち合ったグレン・クローズとレディー・ガガ/Reuters

「クリティクス・チョイス・アワード」は、放送映画批評家協会が1995年の設立時から続ける賞。全米のテレビやラジオ、オンライン番組に出演する約330人が選びます。投票者の人数が多く、他の批評家団体賞よりも大衆的な作品が選ばれやすいところは、アカデミー賞に通じるものが。

実際、昨年は作品賞の「シェイプ・オブ・ウォーター」をはじめ、監督、主演男・女優、助演男・女優、脚色、脚本、撮影など14部門の受賞結果が一致。この10年の作品賞のうち7本がオスカー作品賞と重なりました。ちなみに、ゴールデングローブ賞はドラマとコメディ/ミュージカルの2部門で作品賞を選んでいるものの、オスカーとの重複受賞は5本どまり。アカデミー賞と有権者が重なる監督組合賞、俳優組合賞などの職能団体賞以外では群を抜く的中率です。

逆転受賞に不当圧力…2019米国の映画賞シーズンは大混戦

作品賞受賞を喜ぶ「ROMA/ローマ」のアルフォンソ・キュアロン監督と主演のヤリッツァ・アパリシオ/Reuters

24回目を迎えた今年の作品賞は、アルフォンソ・キュアロン監督のNetflix作品「ROMA/ローマ」。監督・撮影・外国語映画も含め今回最多の4部門で受賞を重ね、人気の高さを裏付けました。女優賞は、ゴールデングローブ賞も受賞した「天才作家の妻-40年目の真実-」のグレン・クローズと「アリー/スター誕生」が同時受賞するという意外な結果になりました。

逆転受賞に不当圧力…2019米国の映画賞シーズンは大混戦

女優賞の受賞スピーチで涙ぐむレディー・ガガ/Reuters

2人目の受賞者として名前を呼ばれたレディー・ガガも驚きの表情。受賞スピーチでは感極まって涙で声を詰まらせる瞬間もありました。男優賞は「バイス」のクリスチャン・ベイル、助演男優賞は「グリーンブック」のマハーシャラ・アリ、助演女優賞は「ビール・ストリートの恋人たち」のレジーナ・キング。いずれもゴールデングローブ賞にも選ばれた顔ぶれでした。一方、ゴールデングローブ賞のドラマ作品賞、男優賞を獲得した「ボヘミアン・ラプソディ」は無冠。ファンには残念な結果となりました。

逆転受賞に不当圧力…2019米国の映画賞シーズンは大混戦

プレゼンターのニコール・キッドマンから男優賞を贈られたクリスチャン・ベール/Reuters

アカデミーの「圧力」に俳優労組が抗議

授賞式が開かれたのは、アカデミー賞ノミネートの投票締め切り日の前日。投票先を決めかねていた浮動層にこの日の結果がどう影響するのか、気になるところ。ノミネートは1月24日に発表されますが、その前に衝撃的な出来事が報じられました。アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミー(AMPAS)が俳優たちに他の映画賞の授賞式への出席を自粛するよう圧力をかけていたというのです。

逆転受賞に不当圧力…2019米国の映画賞シーズンは大混戦

コメディ映画賞はアジア系俳優が活躍した「クレイジー・リッチ!」/Reuters

俳優たちからの報告を受けて、米国最大の俳優労組「米映画俳優組合/テレビラジオ芸能人組合(SAG-AFTRA)」は1月14日付でAMPASに対して異例の抗議声明を発表しました。授賞式への出演をコントロールしようとするAMPAS側の動きは「利己的な脅迫」であり、「我々の仲間である俳優たちに授賞式を欠席させようとする露骨な企ては、明らかに言語道断で容認できない」と痛烈な言葉で非難。AMPASからはまだ反応はありません。

アカデミー賞の授賞式は視聴率の低迷が続き、昨年はついに過去最低を記録しました。しかも今年は司会者に予定していたコメディアンのケヴィン・ハートが過去の同性愛者差別ツイートで降板し、本番まで1カ月半を切った今も後任の司会者が決まっていません。有力作をめぐっても、スタッフやキャストの問題発言や巨費を投じた宣伝キャンペーンといったスキャンダラスな話題が次々飛び出し、映画ジャーナリストからは「近年にない醜悪な賞シーズン」との批判も。賞の行方だけではなく、賞のあり方そのものが注目されることになりそうです。

クリティクス・チョイス・アワードの映画部門の受賞結果は以下の通りです。

作品賞 「ROMA/ローマ」
男優賞 クリスチャン・ベイル 「バイス」
女優賞 グレン・クローズ 「天才作家の妻 -40年目の真実-」、レディー・ガガ 「アリー/スター誕生」
助演男優賞 マハーシャラ・アリ 「グリーンブック」
助演女優賞 レジーナ・キング 「ビール・ストリートの恋人たち」
監督賞 アルフォンソ・キュアロン 「ROMA/ローマ」
演技アンサンブル賞 「女王陛下のお気に入り」
若手俳優/女優賞 エルシー・フィッシャー 「Eighth Grade(原題)」
脚本賞 ポール・シュレイダー 「First Reformed(原題)」
脚色賞 バリー・ジェンキンズ 「ビール・ストリートの恋人たち」
撮影賞 アルフォンソ・キュアロン 「ROMA/ローマ」
美術賞 「ブラックパンサー」
編集賞 「ファースト・マン」
ヘア&メイクアップ賞 「バイス」
ビジュアルエフェクト賞 「ブラックパンサー」
長編アニメーション賞 「スパイダーマン:スパイダーバース」
アクション映画賞 「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」
コメディ賞 「クレイジー・リッチ!」
コメディ男優賞 クリスチャン・ベイル 「バイス」
コメディ女優賞 オリヴィア・コールマン 「女王陛下のお気に入り」
SF/ホラー映画賞 「クワイエット・プレイス」
外国語映画賞 「ROMA/ローマ」
主題歌賞 「シャロウ」(「アリー/スター誕生」)
作曲賞 「ファースト・マン」

文・深津純子

ルート・ブリュックを追いかけて

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異例の大混戦 もうすぐ発表、アカデミー賞の注目ポイント

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