猫と暮らすニューヨーク

2匹の猫が、愛する人を笑顔にしてくれる

2匹の猫が、愛する人を笑顔にしてくれる

家族写真を撮りますよ、はい、カメラを見て! 笑顔の飼い主とは対照的に、ニコとクリオは同じ姿勢でそっぽを向いたまま……

[猫&飼い主のプロフィール]
猫・Cleo(クリオ)9歳 メス ラグドール、Nico(ニコ)2歳半 メス 雑種
飼い主・映像制作会社オーナーで映像作家のロン・ヤッセンさんと、弁護士のデビー・ヤッセンさん夫妻。イーストヴィレッジのアパートメントで猫2匹と暮らしながら、ハンプトンにある一軒家の別荘にたびたび猫を連れ、滞在している。

デビーさんは生来の猫好き。幼い頃から絵に描くのは、なぜか猫ばかり。9歳で念願の飼い猫を家に迎えるまでは、近所の猫を頻繁に拝みに行く日々を送っていたという。「そういえば、初めてのボーイフレンドからもらったプレゼントも、“猫”のイヤリングだった」と笑う。アリゾナ州の大学に進学し、保護施設で出会った黒猫を譲り受け、大学の寮でこっそり猫暮らしをスタート。その後、ロースクール(法科大学院)に通い、NYで弁護士として働くようになるまで、「人生の節目はすべてその黒猫と一緒だった」と振り返る。人生の伴侶ともいえる最愛の猫を亡くしたのは、約10年前のこと。悲嘆にくれていたデビーさんが、夫のロンさんと共に飼い始めたのが、ふわふわのロングヘアが自慢のラグドール猫、クリオだった。

それから数年後の2017年、ドナルド・トランプがアメリカの大統領に就任した。そのニュースによって「再び悲嘆にくれてしまった」というデビーさんは、猫の保護活動に興味があったことから、夫のロンさんと保護猫を譲り受けることを考えた。「猫が私たちの気持ちを上向かせてくれるのでは。そんな期待もあったんです」(デビーさん)。そうして二人が偶然保護施設で出会ったのが、3本脚の猫、ニコだった。

2匹の猫が、愛する人を笑顔にしてくれる

ロックバンドのヴェルヴェット・アンダーグラウンドに参加した女性シンガーから名前をとったニコ。クリオの名前は、もちろん女王クレオパトラから

元野良猫で、交通事故にでも遭ったのか後ろの左足が悪く、切断手術を受けたというニコを飼うことに、「始めは不安しかなかった」とデビーさん。獣医師の友人に相談したところ、何も心配はないと背中を押され、迎え入れる決心をしたという。「飼い始めて最初の2カ月は、ニコに付きっきり。悲嘆にくれている暇なんて、まったくなし(笑)。猫を譲り受けて正解でした」(デビーさん)

ジャンプすることができないこと以外は、普通の猫となんら変わりはないというニコ。姿勢を低く保ちつつ3本脚で力強く歩き回り、キャットタワーやソファに前脚でつかまりながら、器用によじ登る。そんな姿を目にすると、誰もが心を打たれ、勇気をもらうのだという。「ニコは魔法使い。どんな猫嫌いも、ニコを見たら猫好きに変わってしまうから」とデビーさん。また、かつてのタフな野良猫生活からは想像できないほど温厚で優しい性格で、人間を引っかいたり、パンチを繰り出したりすることは皆無。まるで「巨大な愛の塊です」

2匹の猫が、愛する人を笑顔にしてくれる

この愛くるしい丸顔。いちゃいちゃしたいと願うキャットシッターは数知れず。でもそうはさせてくれません

一方のクリオは、女王キャラ。気まぐれで好き嫌いが激しく、飼い主である夫妻以外の人間にはなかなか心を開かない。あの手この手でクリオを手なずけようとする、どんなキャットシッターにもなびくことはなく、最後は必ず人間のほうが音を上げるという始末。つい最近も、クローゼットの扉の前に居座り、中から出ようとするキャットシッターを完全にブロック。扉の外に出ようとするたびに、パンチを繰り出し恐怖に陥れたという。またハンプトンの別荘では、階段にどっしり構え、キャットシッターに階段を使わせない、いじわるな作戦を決行。「頑として譲らない強い個性で、どんな人間をも従わせてしまう。それはクリオの天賦の才能ですね……」(デビーさん)

猫2匹との暮らしは、「私の人生に与えられた最大の恩恵」とデビーさん。生活のため弁護士という職は欠かせないけれど、できることなら猫の保護活動に身を捧げたい、というのが本心なのだとか。そうやって終始笑顔で猫について語るデビーさんを見守っていた、夫のロンさんが最後にひと言。「彼女が幸せそうにしているから、私も猫が好きなんですよ」。猫のピュアな存在感、動きの美しさ、ちょっとまぬけなところ、魅力はいろいろあるけれど、愛する人を笑顔にしてくれることが何より一番、とロンさん。2匹の猫は夫婦円満の役割も担っているようだ。

>>写真のつづきはフォトギャラリーへ(↓画面下にもあります)

連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

クリオとニコのインスタグラム
https://www.instagram.com/nicoandcleo

ロンさんの映像制作会社Roadside Entertainment
https://www.roadsideentertainment.com/

写真・前田直子

PROFILE

仁平綾

編集者・ライター
ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
http://www.bestofbrooklynbook.com

前田直子(まえだ・なおこ)

写真家

24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
http://www.naokomaeda.net

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九つの命をもつ、おじいちゃん猫

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