野村友里×UA 暮らしの音

野村友里さん「離れるからこそ、見えること」

野村友里さん「離れるからこそ、見えること」

私が漬けている、発酵白菜

「eatrip」を主宰する料理人の野村友里さんと、現在カナダで暮らしている歌手UAさんの往復書簡「暮らしの音」、今回お二人が選んだテーマは、「テレパシー」です。互いに遠くにいるからこそ考える、人と人の距離、通じ合うこととは?

>>UAさんの手紙から続く

うーこ

最近はどう?
寒い冬。
ギュッと、おしくら饅頭のように家族で顔をつきあわせたり

ほぐれたりしているのかしら?
窓からみえる景色も空気もまたカナダの島だと違うのでしょうね~
と想像してみたりしてるわ。

やっぱり、メールでの往復書簡とはいえ
こうやって目の前にいない相手にむかって想像したり想いを馳せたり
自分の内側をパカッと開いて “もしもし、最近の自分はどうですか?” って

自分が自分に話しかけるような時間も大事だなと改めて思うわ。

野村友里さん「離れるからこそ、見えること」

『孤独の愉しみ方』は折り目だらけ。。。

それにしてもこの往復書簡、結構悩む! 考える!
SNSで自分の思考、思ったことをぱっぱと上げられ、
また、人様のもうかがい知れる時代になったとはいえ、
こうやって特別な相手がいての(しかも相手はあなたでしょ笑)手紙なんて、
そう容易に書けないのよね〜。。。
手書きの手紙だとしたら、書き直した紙屑の山ね、
きっと。

そう言えばね、
今年初めに読んだ本で、ほぼ全ページが付箋、折り目になってしまった
ヘンリー・ディヴィッド・ソローの著書『孤独の愉しみ方 森の生活者ソローの叡智』の中に、
“親密な交友を楽しもうとするなら、二人の距離は遠く離れていなければならない”という言葉がでてくるの。
その意味はね、会話とは内面の声が聞こえない人の便宜のためにあるようなものだ、って。

そしてしょっちゅう人に会いにいく、そんな習慣が互いの尊敬心を失わせる。
つまり、あまりにしょっちゅう顔をあわせていると、お互いに新たな価値を身につける時間がない。
頻繁に会わなくても、大切な心のこもった付き合いは十分に続けられるはずだって。

文字は会話のようにキャッチボールができないし、補足も相槌もできない。
返事が返ってくるまでは一方的。
なので、文字や言葉にする時は慎重になる。
けど思いもよらない自分の中から湧き立つ感情や気持ちに気づくこともある。
受け取る側も、手紙の場合は言葉そのものだけでなくて
行間の中に、目に見えないたくさんの情報を見つけたりもする。

まっ、
本当は手書きのほうが時間もかかるし、文字の形やいろんなもっとたくさんの情報が一緒に届けられるとは思うのだけどね。

野村友里さん「離れるからこそ、見えること」

『火を焚きなさい』(山尾三省・著)。火は近いとやけどするし燃えるし危険だけど、寒い時は、少し離れると体を温め心も安らぐ。火を使って料理することで、人は格段に進化できたのだなぁ

この間、初めて稲葉先生(※)とレキシのライブにいったのね(笑)。
(※東大医学部付属病院循環器内科助教で医学博士の稲葉俊郎さん)
最後にね、『にんげんっていいな』っていう日本昔話のエンディングの曲が流れて、そこから池ちゃんのアレンジになって。

野村友里さん「離れるからこそ、見えること」

『まんが日本昔ばなし』のエンディングテーマ、『にんげんっていいな』のレコードジャケット

人間って“人の間”って書くね。“間”があって、人と人が認識しあって、近づいたりもできるんだね。
“間”がなかったら人はくっつき過ぎて、隙間がなくて出会うことを認識しないね、って。

(真っ白いタイツマン二人が向き合ってくっついたり離れたり、人間っていいねいいねって繰り返し繰り返しパフォーマンスしていたんだけどね。)

人間っていいね~って、おおきな会場中、大笑い。
素直に楽しんでしまった。
そして確かに、間(距離)で気づくことはたくさんあるとも思ったのよね。

家族とか身近な人がいると、 “在る” が当然になってきてしまい、ありがたみも忘れ、しまいには些細なことにも苛立ったりしてしまう。
いざ旅にでたり離れたりすると、その人の内面のほうが急に立ち上がってきて、理解できたり急に愛おしくなったりして、会いたくなったり話したくなる。
その人の輪郭が見えてくるのね。

先日、年子の姪っ子のお姉さんのほうが初めてお泊まりで出かけてしまった時、
いつもけんかばかりしている妹が耐えかねて、こらえてもこらえても涙があふれでてきてしまった。
お母さんが、どうしたの?って聞いたら、お姉ちゃんに会いたいって。。。
そんなにお姉ちゃんの事が好きだったという気持ちに気付けてよかったねって、大事にしようねってお母さんはゆったのだけど。

でも、この距離があるからこそ気づけることってあると思うのよね。
人と人だけでなくて
人と仕事、社会との距離感。
人間と自然との距離感。
いろんな事に置き換えられるのかなと思うの。

今の私はね、
ちょっといろんなものから一旦距離を置いて、
自分とゆっくり相談しながら、
これからの時間の過ごし方の優先順位を考えたいなと思っているの。

野村友里さん「離れるからこそ、見えること」

プランニング・ディレクター西村佳哲さん著『一緒に冒険をする』。私もインタビューを受けて、紹介してもらっています

年末に、『一緒に冒険をする』の著者、西村佳哲さんと対談させて頂いてね。
”最近何に一番興味があるのですか?”と聞かれた時に、
とっさに私、“本当のことが知りたいんです”と答えたの。

目先の事、表面的な事でなくて、本当の事ってなんなのだろう。
そして、本当は自分はどう思っているのだろう。

つまり自分が真理につながっている事に時間をかけられているのか
少なくとも意識をもっているのかな、と。
自分を俯瞰で見ることも距離をもって見ることよね。
と、何やら小難しい言い方になってしまったけど
距離があることによって、より見えてきて近くに感じる事の、なんと多いことよ、と言いたかったの。

とはいえ
時には生きている人であれば、いつまでも在るとは思わずに
家族や大事な友達は目をみて、肩を揉んだり、摩(さす)ったり、ハグしたり、頭をなでたり、体温や皮膚を感じなきゃね。

野村友里さん「離れるからこそ、見えること」

『ジャンピング・マウス』(ヘェメヨースツ・ストーム他・著)は、2007年にうーこのサイン入りでくれた本

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『こといづ』共通の友人、高木正勝さんが最近出した本

あれ、今回のテーマは「テレパシー」なんて言っていたのに、だいぶ違っちゃった。
ごめんね。

次回うーこにあったらスリスリするね。

友里

PROFILE

  • UA

    1972年大阪生まれ。母方の故郷は奄美大島。1995年デビュー。1996年発表のシングル「情熱」が大ヒット。2000年、ブランキー・ジェット・シティを解散した浅井健一とAJICOを結成。同年、初主演映画「水の女」(テサロニキ国際映画祭グランプリ受賞作品)公開。2003年から放送されたNHK教育テレビ番組「ドレミノテレビ」に、歌のおねえさん「ううあ」としてレギュラー出演。2004年、数々の童謡・愛唱歌を集めた、ううあ名義アルバム「うたううあ」をリリース。2006年、菊地成孔とスタンダードジャズアルバム「cure jazz」をリリース。2010年、デビュー15周年企画カバーアルバム「KABA」をリリース。2016年、7年ぶりとなるオリジナルアルバム「JaPo(ヤポ)」をリリースした。また、2005年より都会を離れ、田舎で農的暮らしを実践中。現在はカナダに居住。4人の母でもある。α-STATION(FM京都)の番組「FLAG RADIO」にレギュラー出演中。

  • 野村友里

    料理人(りょうりびと)、「eatrip」を主宰。おもてなし教室を開く、母・野村紘子さんの影響を受けて料理の道に。主な活動に、レセプションパーティーなどのケータリングフードの演出、料理教室、雑誌の連載、ラジオ番組など。2009年、初の監督作品『eatrip』を公開。11年、「シェ・パニース」のシェフたちとともに、参加型の食とアートのイベント「OPEN harvest」を開催。その経験を経て日本のシェフたちとともに「nomadic kitchen」プロジェクトをスタート。12年、東京・原宿に「restaurant eatrip」をオープン。著書に『eatlip gift』『春夏秋冬 おいしい手帖』(マガジンハウス)、『Tokyo Eatrip』(講談社)、共著に『TASTY OF LIFE』(青幻舎)がある。

UAさん「褒めるときには的を射て、叱るときには三分ずらす」

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UAさん「夢とテレパシーは、密に関係あるのだと思う」

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