このパンがすごい!

世界大会「iba cup」で総合優勝のパン職人が焼く、金メダル級のフランスパン/トモニパン

世界大会「iba cup」で総合優勝のパン職人が焼く、金メダル級のフランスパン/トモニパン

トモニフランス断面

 世界への玄関口・成田に、世界を制した男が、昨夏自分の店をオープンさせた。トモニパンの浅井一浩シェフ。ブーランジュリーオーヴェルニュに所属していた2015年に、ドイツで行われたパンの世界大会「iba cup」にて総合優勝を果たした「世界一のパン職人」だ。

世界大会「iba cup」で総合優勝のパン職人が焼く、金メダル級のフランスパン/トモニパン

トモニフランス

 全面ガラス窓から売り場に光が差し込む。オープンキッチンなので、世界一の職人の仕事を間近で見られる。浅井シェフが窯から出していたパンに見惚(ほ)れた。バゲットよりちょっと太めのフランスパン「トモニフランス」。この店ではちょっと珍しい現象が起きている。硬いパンは敬遠されがちなのに、トモニフランスが1番人気になっているのだ。

 それにしても。そそり立つクープのふちだけ焦がした抜群の焼き加減に辛抱が堪らず、浅井シェフへの挨拶(あいさつ)もそこそこに、トモニフランスを買い込みテラス席へ。クープに齧(かじ)りつく。ばりばりばりのぼりぼりぼり。硬い皮が砕ける音、音、音。と思ったら中身はもっちりからのねっとり、そばがきみたいに歯にくっついたかと思えばとろーり。ビスケットみたいな甘さの中に、エビのような旨味(うまみ)が食べ手を狂わせる。飲み込むときには、ごはんのようなふくよかさが鼻から抜けていった。

 国産小麦ならではのもちもち感、なかんずく群馬県産小麦の持つ個性的な風味。それを浅井さんの技が絶妙に生かす。

世界大会「iba cup」で総合優勝のパン職人が焼く、金メダル級のフランスパン/トモニパン

パンの世界大会「iba cup」総合優勝と部門優勝のトロフィーを持つ浅井シェフ

「吸水をすごく多くしています。約90%入れています(通常は粉に対し70%程度)。高温でなるべく短時間で焼き上げる。気持ち浅めに、水分が残るように」

「もちもち」というフランス的ならざるものを肯定、「ばりばり」と「しっとり」という絶対的矛盾を1本の中に作り出す。1日5回焼きたてが出ることも、皮と中身の快楽的なコントラストの秘密。買ったらすぐ店を出て噛(かじ)りつくのがベストだ。

世界大会「iba cup」で総合優勝のパン職人が焼く、金メダル級のフランスパン/トモニパン

ナッツフランス

 この金メダル級のフランスパンは成形や具材を変え、魔法のようにさまざまなパンへ作り替えられる。トモニフランス以上に突き詰めた、ばりばりの極致に連れていく「ナッツフランス」。高くめくれあがった裂け目は、グリッシーニレベルでばりばり砕ける。と同時に、混ぜ込まれたアーモンドとくるみまでもばりばり炸裂(さくれつ)、ばりばりぼりぼりを合唱する。

世界大会「iba cup」で総合優勝のパン職人が焼く、金メダル級のフランスパン/トモニパン

ぶどうとオレンジ

 反対に、しっとり感を生かしたのが「ぶどうとオレンジ」。生地がぷるんと弾み、同時に内部ではレーズン及びオレンジがぶちっと弾け、ブドウジュース、オレンジジュースがじゅるっとあふれだす。加水の多い生地がちゅるーと溶けるのと相まって実にジューシー、「パンの果実」と形容したくなる。なぜこんなにジューシーなのか。洋酒だけでなく、ジュースにも漬け込んでフレッシュさを演出するとともに、ミキシングし終えた生地に水分を加えて(「バシナージュ」という技)しっとりさせ、口溶けちゅるちゅる感を爆上げさせている。

「ぶどうとオレンジ」は「フレンチトースト」へと作り変えられる。ふにゃんふにゃんのテクスチャーから、甘くシロップがとろけだし、オレンジピールから甘酢っぱさがちゅるり弾けて、ぶどうからは洋酒の香りが放たれるという、ちゅるちゅるの三段跳びが演出される。

世界大会「iba cup」で総合優勝のパン職人が焼く、金メダル級のフランスパン/トモニパン

究極のザクザク チョコクローネ

「究極のザクザク チョコクローネ」は、クロワッサン生地でできた筒の中心にバトンチョコが入っている。これが「究極のザクザク」というのは私がうけがう。歯にちょっと触れた途端にクラッシュ、木っ端微塵(みじん)になるのだから。ここでも浅井シェフは、想像もつかなかったテクニックを繰り出している。

「一晩窯の中で(余熱を使って)乾燥させています」

 電気代を使わずともじりじりと乾き、勝手にざくざく化するというクレバーな作戦だ。

 スタートアップしたばかりで、パン職人の奥さんと二人三脚。気心の知れた二人だけ。

「人数が少ないので、仕上げはあまり凝ってませんけど、生地にはすげーこだわってます。ぜんぶ自分の目が行き届く。ミキシングから丸めから、ぜんぶの工程で、細かいところもこだわってます」

 成田山に成田空港。都心から離れているが、行く機会の多い街。セットで行くべき一軒だ。

↓↓フォトギャラリーは下部にあります↓↓ ※写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます。
店舗マップはこちら

■トモニパン
千葉県成田市赤坂2-1-15
0476-27-1050
9:00~18:00(水休)
https://www.facebook.com/tomonipan/

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

駅前でリヤカー売り、バゲットもハムも自家製の極上サンドイッチ/シャポードパイユ

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