上間常正 @モード

韓国ジュエリーの新作が示す隣の国同士への親近感

韓国ジュエリーの新作が示す隣の国同士への親近感

このところ、韓国と日本の政治的な関係がぎくしゃくしていて、なんだか心もとない。戦時中の慰安婦問題や韓国最高裁による日本企業への賠償命令判決については、韓国側の過剰とも思える反応は仕方がない。しかし最近起きた、韓国の軍艦が海上自衛隊機にミサイル発射用のレーダーを照射した事件は、お互いに相手の非を主張するばかりで子供の喧嘩(けんか)と大して違わない。それだけに新しい火種になってしまうのではないかとの深刻な危惧を覚える。

なぜかと言えば、韓国へのヘイトスピーチには批判的な人たちの間でも「もうあの国にはちょっとウンザリ」との気分が広がっているように思えるからだ。韓流ドラマやK-POPの日本での人気も一時ほどではない。こうした気分はいったん少しでも捕らわれると、いつの間にかどんどん高まって事実を冷静に判断する気持ちを弱めてしまう。韓国の大統領や軍部の態度にウンザリしたくなるとしても、国全体がそうだというわけではないのだ。

こんな時に一番必要だと思うのは、お互いの国の人々が接し合う機会をもっと増やすこと、そして自国の政治家や軍の幹部が言うことが本当なのかどうかよく考えてみることなのではないだろうか。新聞やテレビにしても自国寄りの見方をしがちなので、相手側の主張にも耳を傾けてみる必要がある。

そんなこともあって、去年12月に東京・渋谷のホテルで作品を披露した韓国のジュエリーブランド「AA.Gban(エーエージーバン)」とデザイナー、アン・ジェヒョンの話は、新鮮で心に残るものだった。彼は1987年、ソウル市生まれの人気俳優だが、これまでの韓流スターのイメージとはかなり違うように思えたからだ。

韓国ジュエリーの新作が示す隣の国同士への親近感

アン・ジェヒョン

モデル出身だけに身長は186cmと大柄だが、マッチョな印象はなくて語り口も静かで優しげ。トップスターにありがちな気どりも全くなく、ジュエリーのデザインについて言葉を選びながら謙虚に答えてくれた。デザインコンセプトは「枯れない花」。説明を要約すれば、それは永遠と自然への思い、そして人への思いやり、ということだろうか。

韓国ジュエリーの新作が示す隣の国同士への親近感

時計をモチーフにしたシルバー中心の指輪やネックレスは、シンプルな形なのに微妙なニュアンスが感じ取れる。「今の中に過去と未来がある、そんな時間の感覚を表現したかった」という。日本のセレクトショップ「ハーサイド」と初めてコラボした新作シリーズは、ピンクゴールドで型取ったバラの花模様の地金に暗いバラ色のカラーストーンをセットした指輪やネックレス。模様は一見装飾的なのに、生き物としての花への思いと観察眼がうかがえる。

韓国ジュエリーの新作が示す隣の国同士への親近感

そうした眼差(まなざ)しは、自然を人間が利用する対象として見る西洋的な考え方とは違って、日本人とも共通した伝統的なもののように思える。「プレゼントはもらうより贈る方がうれしい」との感覚も、日本人には馴染(なじ)みやすいだろう。ブランドを立ち上げたのは2013年。思った以上の反響で俳優の仕事と両立できずにいったん活動を中止し、スタッフを集めて去年から再始動した。海外での初の作品展示は日本が初めてで、「僕にとって大きな意味があるから」とのこと。

ジュエリーデザインを始めたきっかけの一つは、ある日、田舎で1人の少年が白いバラの花を持っていたのを見て「なんて自然で美しいんだろう」と思ったことだったという。そんな感性も彼の魅力につながっているように思えた。

海外出張中に、疲れてゆっくり食事をしたいと思った時、和食を別とすればまず思い浮かぶのは韓国料理店だった。たとえ言葉が通じなくても、店の人たちの物腰や気遣いに心が和んだものだった。他の国の人から見れば、きっと韓国人同士のように見えたに違いないと思う。

個人的な体験は別としても、外国人から見れば韓国と日本人はたいてい、まず区別できないだろう。そんな隣人同士がいがみ合っても得することはないし、仲良くした方がいいに決まっているのだ。

PROFILE

上間常正

1972年、東京大学文学部社会学科卒業後、朝日新聞社入社。88年からは学芸部(現・文化くらし報道部)でファッションを主に担当し、海外のコレクションなどを取材。07年から文化学園大学・大学院特任教授としてメディア論、表象文化論などを講義。ジャーナリストとしての活動も続けている。

いまもっと必要な、クレア・マッカーデルの半世紀以上前の装いの提案

トップへ戻る

伝統を重んじた前衛的なデザイナー、カール・ラガーフェルドの死

RECOMMENDおすすめの記事

Recommended by Outbrain