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夢と現実、ロマンチックに 19年春夏パリ・オートクチュールコレクション

花束をあなたに。1月下旬に開かれた2019年春夏パリ・オートクチュールコレクションで、波打つフリルや綿密な花刺繍(ししゅう)で飾った、この上なくロマンチックなスタイルが主流になった。ただ、その表現にはクールさやモダンさも混じる。パリでは格差社会の是正を訴えるデモが続く中、優しさをそっと差し出しながらも、夢と現実の微妙なバランスを探っているようにも見えた。

凝ったフリルや花刺繡 新たな造形も

夢と現実、ロマンチックに 19年春夏パリ・オートクチュールコレクション

ヴァレンティノ

「あらゆるものは移ろい、変化と進化を経て、繰り返し花開く」。ヴァレンティノはそんな言葉を配布資料に引きながら、刺繍やプリント、フリルで服に様々な花の魅力を詰め込んだ。

つぼみのようにふっくらと体を包むサテンのブラウスや、花柄の上にたくさんの花刺繍をのせたシフォンのドレス。マスカラ代わりの花びら。咲き誇る花々を思わせる色や豊かな布の造形など、熟練の手仕事を一途に集結したかのような作品が胸に迫った。

夢と現実、ロマンチックに 19年春夏パリ・オートクチュールコレクション

シャネル

シャネルも砂糖菓子のように甘くロマンチックだった。ミニバラのつぼみを縁飾りにしたツイードジャケットや小さな花飾りを立体的に並べた、花形フォルムのドレスなど凝った手仕事を満載した。色やテクニックは幻想的だが、ドライな質感が現代的。名曲「あまい囁(ささや)き」が流れ、切ない気分を盛り上げた。

夢と現実、ロマンチックに 19年春夏パリ・オートクチュールコレクション

(左)ヴィクター&ロルフ、(右)ジョルジオ・アルマーニ・プリヴェ

ジョルジオ・アルマーニ・プリヴェもムーディーな管弦楽を背景に、花モチーフを多用したつややかな1930年代調フェミニンスタイル。第2次世界大戦前の優雅さが匂いたつ微細なスパンコールでびっしりと花柄を描いたパンツスーツやドレスも。とがり気味の肩線や穏やかな色とソフトな生地など独自の要素を織り込みながら、全86体もの渾身(こんしん)の力作をそろえた。

ヴィクター&ロルフは、チュールをふんだんに重ねた超ロマンチックなドレスに、「NO」や、「I WANT A BETTER WORLD」などの文字を描いて、メッセージ性の強いショーを見せた。

夢と現実、ロマンチックに 19年春夏パリ・オートクチュールコレクション

(左)スキャパレリ、(右)バルマン

新たな造形への挑戦も、今シーズンの大きな特徴。16年ぶりにオートクチュールに復帰したバルマンは、袖やスカートを球のように丸く大きくふくらませた。スキャパレリも動物柄やシュールな絵画などブランドの伝統的なモチーフを用いながら、華やかなふくらみのあるシルエット。

夢と現実、ロマンチックに 19年春夏パリ・オートクチュールコレクション

(左)クリスチャン・ディオール、(右)メゾン・マルジェラ

メゾン・マルジェラは、メンズも交えて、過剰さや技巧性に的を絞った。壁や天井に描いたポップな絵を鏡のランウェーに映し、それと同じ柄の服を解体して再構築するという凝りよう。現実と虚構が入り交じる混沌(こんとん)とした見せ方に現代社会への冷えたまなざしが感じ取れる。

クリスチャン・ディオールはサーカス団による体を自在に使ったパフォーマンスと共に、ピエロのようなフリルカラーのブラウスなど可愛らしいスタイルを並べた。

夢と現実、ロマンチックに 19年春夏パリ・オートクチュールコレクション

(左)イリス・ヴァン・エルぺン、(右)ジャンポール・ゴルチエ

和をモチーフにしたブランドも。ジャンポール・ゴルチエは、金襴緞子(きんらんどんす)風の帯をオートクチュールならではの造形で体に巻いたドレスなど。イリス・ヴァン・エルぺンも日本の神話をヒントに波模様を作ったキモノ調ドレスなどを見せた。

今回のパリでは、「ジレジョーヌ(黄色いベスト)運動」のデモが続く中、街のあちこちに割れたままの窓ガラスなど破壊行為の爪痕が残り、大勢の警察官が警戒に当たっていた。物々しい雰囲気の中で、詩的で新しい優雅な服の形を模索する動きに、希望を紡ぐというファッションの役割を果たそうとするデザイナーたちの気概を感じた。

(編集委員・高橋牧子)

<写真は大原広和氏とRunway-Photographie撮影>

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