インタビュー

多部未華子さん、現場での出会いが私のモチベーション

多部未華子さん、現場での出会いが私のモチベーション

撮影・馬場磨貴

仕事をろくにせず、毎日適当に過ごしている売れない漫画家・寿々男。そんな彼がある日、競輪で大当たりした帰りに、風に吹き飛ばされた万札を拾おうとして交通事故であっけなく死んでしまう。「人生を挽回(ばんかい)するため」に猫の姿で妻・奈津子と娘の元へ帰った寿々男は果たして、家族のために何かを残すことはできるのか――。

映画『トラさん~僕が猫になったワケ~』は『月刊YOU』に連載されていた人気漫画が原作のファンタジックコメディー。寿々男(北山宏光)の妻・奈津子を演じるのが、多部未華子さんだ。ダメ夫にも笑顔を絶やさず、家計費をギャンブルに持ち出しても「ギャンブルの才能だけはあるのよね」と意に介さない。

多部未華子さん、現場での出会いが私のモチベーション

「このお話をいただいた時にまず原作の漫画を読んで、すごく面白いし泣けるし感動して。物語に惹かれてお引き受けしたんです。奈津子は絵に描いたような理想の妻。私には理解はできないというか……(笑)」

だが、そのダメ夫を「許せる夫」に見せているのが北山さんの演技のみならず、彼女の演技力だ。こんな場面がある。寿々男が死んだ後もずっと笑顔を絶やさなかった奈津子が、娘の実優(平澤宏々路)に夫の“遺言”を聞かせ、自身の気持ちを初めてこう吐露する。

「でもね、実優、すーちゃんね、出会ってから20年、毎日言ってくれた。『アイシテル』って。だから私自分のこと好きになれた。つらいことあっても笑っていられた。だから、幸せだった。でも、もっといっぱい一緒にいたかった」

多部未華子さん、現場での出会いが私のモチベーション

見る側が寿々男のダメ夫ぶりを忘れて思わず、「人の幸せってなんだろう」って思ってしまう場面だ。多部さんが奈津子として語るその言葉を聞いて初めて、寿々男の人間的な魅力に気付かされるのだ。

「映画は家族がすごく仲がいいっていう設定ですが、現場はどうかなと思っていたんです。私は人見知りなので、あまり現場で協調性がない人間というか(笑)、仲良くなろうと思って仲良くなれるタイプではないので。でも、その心配もなく、北山さんと宏々路ちゃんが自然と受け入れてくれた感じでした。とにかく、毎日楽しく現場に行って終わったという思い出しかないです(笑)」

多部未華子さん、現場での出会いが私のモチベーション

多部さんは平成元年生まれ。15歳でデビューしドラマや映画、舞台と幅広く第一線で活躍してきた。中でも、彼女のコメディエンヌぶりに魅了されてきたファンは多いだろう。えくぼが魅力のニッコリ笑顔から、「ニヤッ」とした小悪魔的な笑いまで幅広い。そんな彼女に俳優としての転機を尋ねると「特にないんですよね」とさらり。

「あっ、転機と言えるかわかりませんが、朝の連続テレビ小説『つばさ』ですね。自分で舞台のセットを組まなければいけなかったところから『朝ドラへ出られるようになったぞ!』という劇団出身の役者さんたちと、毎日一緒に過ごしていたことは大きかったですね」

多部未華子さん、現場での出会いが私のモチベーション

撮影・馬場磨貴

そのころ、多部さんは20歳で周りの友達は就職活動を始めていた。

「私も就活どうしようかな、将来どうしようかなとフラフラとしていました。そんな中で『やっと俺たち朝ドラに出られるぜ』みたいな人たちと一緒に、しかも『ヒロイン、ヒロイン』と呼ばれながら過ごす10カ月。罪悪感というか、申し訳ないなと思う瞬間がいっぱいありました。この時、私は就職もしないだろうし、この仕事でひとまず頑張っていくのだろうなと思ったんです」

その後、「仕事が楽しくて仕方がない!」という時期に入っていく。21歳で出演した東山紀之主演のドラマ『GM~踊れドクター~』では、仕事の新たな楽しみ方を見いだした。

「この時、私は監督も役者さんも『初めまして』の人ばかりでした。共演した八嶋智人さんや小池栄子さん、生瀬勝久さんや椎名桔平さんなど、周りの役者さんたちが『何年ぶりだっけ?』『あの時の作品楽しかったよね』『面白くなかったよね』とか『あの人とはまだ付き合っているの』とか、その会話が羨(うらや)ましくて。会話を聞きながら、今は毎回『初めまして』だけど、このままずっと仕事を続けていったら私も『久しぶり』って挨拶(あいさつ)できるんだ。そういう楽しみ方を、いつかしたいって思いました」

多部未華子さん、現場での出会いが私のモチベーション

撮影・馬場磨貴

そんな21歳の時に抱いた思いが、最近ようやく実現するようになってきた。監督、演出家に再び声をかけてもらったり、かつて共演した俳優さんと、違う役柄や違う関係性でまた出会ったり。いまは「現場での出会いがモチベーション」だという多部さん。

「でも、私は淡泊だから現場で出会っても、それで交友関係を続けていきたいと思うことはないです(笑)。一緒にいる貴重な時間が楽しいし、大切だなと思う瞬間がいっぱいある。飽きやすい性格なので、3カ月とか1カ月くらいみんなで同じ目標に向かって頑張って『じゃあ、またどこかで』、というのが心地いいんです」

多部未華子 (たべ・みかこ) 
俳優 1989年1月25日生まれ、東京都出身。2002年に俳優デビュー。05年公開の『HINOKIO ヒノキオ』でメインキャストに抜擢され、映画デビュー。09年NHK朝の連続テレビ小説『つばさ』で主演。10年野田秀樹脚本の『農業少女』(演出:松尾スズキ)で初舞台。同作で読売演劇大賞・杉村春子賞(新人賞)を受賞。同年にエランドール新人賞を受賞。映画、ドラマ、舞台など幅広く活躍。2018年は映画『日日是好日』の他、舞台『ニンゲン御破算』『出口なし』に出演。『TOP HAT』では初のミュージカルにも挑戦。今年は映画『多十郎殉愛記』『アイネクライネナハトムジーク』が公開予定。

『トラさん~僕が猫になったワケ~』
2月15日(金)から絶賛公開中 監督:筧昌也 脚本:大野敏哉 原作:『トラさん』板羽皆著、全32巻(集英社マーガレットコミックス刊) 出演:北山宏光、多部未華子、平澤宏々路、飯豊まりえ、富山えり子、要潤、バカリズム他
主題歌:Kis-My-Ft2「君を大好きだ」(avex trax)
配給:ショウゲート
(C)板羽皆/集英社・2019「トラさん」製作委員会

公式サイト http://torasan-movie.jp/?nv

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