花のない花屋

<305>強く憎み傷つけてしまったのに……母から感じた無償の愛

<305>強く憎み傷つけてしまったのに……母から感じた無償の愛

〈依頼人プロフィール〉
杉浦由佳さん 23歳 女性
東京都在住
アルバイト

昨年末に大掃除をしていたとき、20歳のお祝いに母からもらった手紙を見つけました。何げなく読み返していると、涙が止まらなくなってしまいました。母とは一時期険悪な関係にあったのですが、どれほど私を大切に育ててくれたのか、今更ながらに痛感したのです。

私は小中高とクラスメートからいじめられ、毎日疲弊して家に帰ってきていました。それでも我慢して学校へ通い続けていましたが、そのつらさが爆発したのが高校生になったときでした。

精神的にも肉体的にも体調を崩し、それまで仲が良かった母にあたるようになってしまいました。一番近くにいた反動なのでしょう。母を強く憎み、傷つけるような言葉を投げかけ続けました。

それでも母は、そんな私のすべてを受け入れてくれました。1人で満員電車に乗れなくなってしまった私と一緒に電車に乗り、学校まで送り迎えをしてくれたり、病院に連れて行ってくれたり……。つらいときは一緒に泣き、汗を流し様々な面で支えてくれました。そのときは、それが母なのだから当たり前だと思っていたし、むしろもっとして欲しいとさえ思っていました。

でも、今はそれが当たり前じゃないとわかります。母の手紙には、小さい頃からのエピソードや、どれほど私を大切に思ってくれているのかがつづられていました。私を支えてくれたのは、まさに母の無償の愛だったのだと思います。

あれから数年。私も少しは大人になり、今はお互いに思いやりながら、素直な気持ちを伝え合うことができる仲になりました。母は今でも当時のことをよく考えるようで、「あのときもっとこうすればよかったのかな」「こうしたかったんだけど、できなかったんだ……」などとぽつりぽつりと話してくれます。

生きていくということは決してラクではありません。思い通りにならないことはたくさんあるし、いつもたくさんの葛藤を抱えています。

でも、そんなとき私の力になったのは、家族で見たお花見の桜の美しさや、「キンモクセイが咲いたね」という何気ない会話、初詣の枯れ木道を歩いた思い出、リビングの花瓶にたえず生けられていた花など……どれもこれも日々のささいなことだったように思います。そして、そのすべての根底にあるのは、結局のところ愛だったのではないでしょうか。

今改めて、私を支えてくれた母へこれまでの感謝と愛を込めて花束を贈りたいです。母は花が大好きで、誕生日にはいつも花を贈ってくれました。私が花好きになったのは母の影響です。ピンクが好きなので、ピンクをメインにした華やかな、明るい気持ちになれるアレンジだとうれしいです。

<305>強く憎み傷つけてしまったのに……母から感じた無償の愛

花束を作った東さんのコメント

学生時代の辛い経験を経て成長し、ようやく気づいたお母様への感謝と愛を込めたピンクの華やかな花束です。

花材はバラ、スイートピー、アジサイで作った花束です。娘さんからお母さんへの愛を表現しました。愛情ってなかなか表現しにくいもの。若くして、このことに気づいていることは素晴らしいこと。素直にそうやって行動できることに驚きました。お花は、3種類でまとめた花束が良いと思いました。

今回も自分に投影する部分があり、感謝することの大切さを再確認することができました。

<305>強く憎み傷つけてしまったのに……母から感じた無償の愛

<305>強く憎み傷つけてしまったのに……母から感じた無償の愛

<305>強く憎み傷つけてしまったのに……母から感じた無償の愛

<305>強く憎み傷つけてしまったのに……母から感じた無償の愛

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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