わたしの みつけかた

<8>親になる許しを義父に請う…? ~チャイルドポーズ

<8>親になる許しを義父に請う…? ~チャイルドポーズ

ヨガの先生兼スタジオオーナーであり、作家でもあるリザ・ロウィッツさん。彼女の自伝的小説 “In search of the Sun” からご紹介する連載。前回は、リザが母性や癒やしを求めて訪れたインドでのエピソードがつづられました。そもそも、日本で養子縁組の朗報をただ待ち続ける状況に耐えられなくなり、訪れたのがインド。第7回は、その旅が驚きの結果で終わるところから始まります。

知らせ

何かがうまくいかない時は、だいたい自分が試されているんだと思う。その試練の中で、自分でも気がついていなかった力が呼び起こされて、想像以上のことができたりする。母親になりたくてたどったこの道は、そんな試練の一環なのだろうし、この道のり自体が、奇跡と言えるのかもしれない。

インドでの滞在も終わりに近づいていた。いよいよアーユルヴェーダ治療院を去るという日の朝、東京にいる省吾から国際電話が入った。登録していた孤児院から、私たちに養子縁組の打診があったのだそう。

私たちよりもっと若いカップルは何百組といて、優先順位だってそちらの方が高いに決まっているのに……これは奇跡?

思わず膝(ひざ)をついて、大地にキスをしていた。
うれしいニュースはあっという間に広がって、治療院で出会った新しい友達が、サプライズでベビーシャワーをしてくれた。みんなから贈られる花や歌に埋もれて、母なる大地と海に感謝を送る。私に向けられる祝福と希望の言葉をそのまま受けとめる。そして、感謝で満たされる。

ここで出会えた人たち、アンマ、担当してくれた医師、マッサージ師の女の子、子どもを宿していて、何としても生き延びようとしていたフグ。そしてそれら全てを大切に思える私の心に。

日本での試練

全てがうまくいくと思った瞬間、新たな壁は立ちはだかるようで……。

結婚の許しを互いの親に求めるというのは聞いたことがあるけど、子どもを持っても良いかお伺いをたてる……なんて聞いたこともない。でも、日本に帰った私を待っていたのは、まさにそれだった。

私も省吾も、結婚の許可を誰かに求める必要は無かったし、互いの両親には結婚届を提出した後で知らせたくらいだった。「入籍」するには、義親の承認が必要だった時代もあるみたいだけど、今では新婚の二人は新たな戸籍を作るという仕組みになっているよう。

旧姓もどこかに残したいという私の願いをかなえるため、戸籍課の人に省吾が掛け合って、特別に記載欄を作ってもらった二人の結婚から12年。なぜか今になって子どもを持つ許可をお願いしなくてはいけない私がいることに驚いていた。理由は分かってる。養子だから。

養子縁組に申し込むとき、申請を認めてもらうための大切な要素のひとつに、私たち夫婦以外の家族の理解も得られていることがある。「家族内」のつながりを大切にする日本で、「ソト」の人間を家庭内に受け入れるということは、一大事なのだろうというのが私なりの解釈。
それにしても、私たちが申請するとき一度は賛同してくれた義父が、ここに来て難色を示し始めるとは。

それにあおられるように、私の心配もどんどん増殖していった。血のつながりを大切にするこの国で、養子自体が表立って語られることはまだ少なかった。私自身が国を隔てた「ソト」の人間であり、さらに養子を迎え入れるということは、新たに「ソト」の要素を家族に迎え入れるということ。私自身の考えがどうであろうと、私の子どもはこの社会の価値観に囲まれて育つわけで……。

例えば、子どもの送り迎えができない外国人の女性を何人も知っていた。友達に親を見られたくない、と子どもに言われるのだそう。私の場合、養子を迎えられたとしても、私のような外見でないのは確実だから、一目で血がつながっていないのは分かるだろうし、そしたらイジメられてしまうかもしれない。イジメられて、引きこもりになって、最悪自殺につながることだってあるかもしれない……。まだ迎えてもいない子どもが将来経験するかもしれないことを心配してるだなんて、完全に考えすぎなのも分かっていたけど、心配しだすとキリがなかった。

頭の中を駆け巡る心配ごとを省吾に相談してみる。
「僕たちは、もともと虹色家族でしょ?」と省吾。
長髪で、在宅の仕事をする彼と、ファンキーなヨガスタジオを経営する外国人の私。どちらかというと保守的な周りの環境の中で、確かに私たちはすでに目立っていた。いろんな色が集まってできた家族。どうせなら、その違いを隠して他の色に染まろうとするより、今の色を大切にした方が良いに決まってる。

養子縁組の可能性が低いことは分かっていたけど、希望を持っていようとお互い励ましあっていた。だからこそ、本当にそれが実現しそうになった時は、信じられないくらいうれしかった……のに、急にその局面になって、今度は義父から「ダメ」が来るとは。「養子」というものがただの言葉でしかなかった時には認められたけど、現実に変わろうとしている今、それが受け入れられないようだった。

省吾が教えてくれたのは、おじいちゃん、義父にとっては父親にあたる正吉の話。正吉には母親の記憶がないそうだ。夫の浮気を発見した母が、生後間もない正吉を残して家を出たのだそう。黙って半歩下がってついて行くタイプの女性では、どうやらなかったようだ。

結果、正吉は養子に出された。暴力団員と芸者の夫婦に迎えられ、力車の引き手になった正吉。省吾はこのおじいちゃんが大好きで、その独特で桁外れの人柄にまつわる昔話をよくしてくれたし、私もその話を聞くのが大好きだった。

今考えれば、それは私自身が周りと違うことで感じている疎外感を、どこか軽くしてくれたからだと思う。でも、正吉の長男で上昇志向の強い義父の意見は違ったみたい。下には5人の弟妹がいた義父は、家族で初めて大学に行き、外国文学の教授にまでなった(彼の影響で息子が外国人と結婚したのは、間違いない。うん)。

日本に家族ができて思うことは、すごく先祖とのつながりが強いということ。それによって、過去と現在のつながりが見えてくる。良くも悪くも。

省吾のお父さんは、養子という出来事が形を変えて目の前に迫っていることを怖がっていたんだな、と思う。過去を乗り越え、新しい生活を家族のために築いてきた義父は、前に進みたかったわけで、まるで再び過去に捕らわれるような感覚になったのかもしれない。

私の勝手な思い込みかもしれないけど、でも「Noが苦手」と言われる日本人にしては、義父の「No」は明らかすぎるくらいだった。自分の夢見た家族の形を諦めるつもりはない、と家庭訪問中のソーシャルワーカーの前ではっきり言ってのけた。仏壇に飾られた家族の肖像写真が見下ろす居間で。

でも、それは私も同じこと。
仏壇の中でこちらを見つめる正吉を見つめ返す。彼の強さを私に分けてもらうために。
省吾も私を見る。そして……。
「祝福してくれなくても良いから、邪魔だけはしないでくれよ」

息をのんだ。
息子から投げられた言葉。義父は、とうとう折れた。
それからしばらくして、実際に私たちの子を迎え入れた時、義父はたちまちおじいちゃんの顔になった。愛情が新しく血のつながりを作ることはあるのかもしれない、と思う。不思議なご縁で、また「ソト」の人間が、この家族に加わった。
ご先祖様たちが、喜んでいてくれると良いな、と思う。

ヨガティップス:チャイルドポーズ~バラーサナ

心が静まり落ち着く、お休みのポーズです。骨盤を開き、背骨を伸ばし、肩と背中上部の緊張をほぐしましょう。
地球としっかりつながっているのを感じましょう。足元から湧く母なるエネルギーを受け止め、呼気を通して返していきます。全て手放し、地面に溶けていくような感覚を味わいます。数分続けても良いですし、5呼吸するだけでも十分効果があります。

Message from Leza:
Deciding to adopt is a huge decision for any couple, but in Japan, the decision is not just yours but the extended family’s as well. Even the ancestors have a say.
養子縁組に踏み込むのは、大きな決断なのは間違いないですが、日本ではその両親を取り巻く家族全体にとっても同じよう。時にはご先祖様までが、口を挟んでくることも…??

PROFILE

  • リザ・ロウィッツ

    2003年設立、東京・五反田にあるヨガスタジオ「Sun & Moon Yoga(サンアンドムーンヨガ)」主宰。
    カリフォルニア大学バークレー校を卒業後、サンフランシスコ州立大学にて文芸創作の修士過程を修了。来日し東京大学や立教大学においてアメリカ文学の講師として教鞭を執る。
    現在は執筆活動の傍ら、子供に大人、ガチガチに体の硬いビジネスパーソンからアカデミー賞受賞俳優まで幅広い層の生徒へ向けてヨガ、マインドフルネス、瞑想を25年以上に渡って伝えている。
    20冊以上の著作の中には受賞作品も多数。現在も定期的にヨガのクラスやワークショップを国内外で開催し、独自のヨガの世界を発信している。

  • 吉澤朋

    東京都の国際広報支援専門員を経て、現在はライター・文化を伝える翻訳者。子宮筋腫を患ったことをきっかけに自分の身体・健康と向き合うようになり、リストラティブヨガと出会う。
    自身も国際結婚の体験者であり、「女性になること」を楽しみ中。

<7>母性を求めて。インドへの旅:クリシュナのポーズ

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