猫と暮らすニューヨーク

ケンカばかりだった2匹。靴下作戦で仲睦まじく

[猫&飼い主のプロフィール]

猫・Teeny(ティーニー)4歳 メス 黒白のタキシード猫、Massimo(マッシモ)2歳半 オス 茶トラ猫
飼い主・物理科学を専門とする編集者/ライターのNatalie Wolchover(ナタリー・ウォルチョバ)さんと、美術史家のCaitlin Sweeney(ケイトリン・スウィーニー)さんカップル。ブルックリンのブラウンストーンアパートメントに暮らす。

   ◇

黒白の柄をまとったオスとメスの兄妹猫、マルセルとティーニーを譲り受けたのは、今から4年ほど前のこと。「兄妹なら相性もきっといいし、私たちの外出中も寂しくないだろうと思って」と話すのは、ナタリーさんとケイトリンさんのカップル。

順風満帆な暮らしを送っていた2人&2匹だったけれど、しばらくして2人が日本へハネムーンに出かけたときに、思いもよらない悲劇が起きた。

「一番楽しみにしていた直島に、ちょうど到着したときでした。マルセルが亡くなったという知らせを受けたんです」。

猫の世話を頼んでいた友人が、2人のアパートメントのリビングで、すでに息絶えたマルセルを発見した。心臓病による突然死だったという。あんなに元気だった猫がなぜ……。

「とにかくショックで悲しくて、ホテルの部屋でただただ泣いていました」とナタリーさん。それでも、楽しみにしていた直島にせっかく来たのだからと気力を振り絞り、予約していたレストランへ出かけて行った。

食事を始めたまではよかったけれど、結局また2人で泣き始めてしまったという。

ケンカばかりだった2匹。靴下作戦で仲睦まじく

悪そうな表情を見せるティーニー。何か言いたげです。なんですか?

大の大人が2人、泣き続ける姿に、レストランのスタッフは困惑したに違いない……。

ケイトリンさんが「風邪をひいているから」ととっさに嘘(うそ)の理由を答えたら、「ティッシュ、毛布、それからデザートまで持って来てくれて。とても親切にしてもらいました。

今振り返れば、あのとき日本にいて良かった。直島という美しい場所、静けさ、人々の優しさによって、マルセルを悼み、また同時に楽しかった思い出を振り返ることができたと思うのです」。

ハネムーンから戻った2人は、すぐに別の猫を譲り受けることにした。

それまでずっと兄妹で暮らし、独りぼっちになったことのないティーニーが、寂しい思いをしているに違いないと思ったからだ。

間もなく家にやってきたのが、オレンジ色のトラ柄猫、オスのマッシモだった。

ケンカばかりだった2匹。靴下作戦で仲睦まじく

マッシモの特技は、「何かのモーター音?」と勘違いするぐらい、ものすごい大きな音でゴロゴロいうことです。

さて、2人&2匹の新生活、始まってみれば、マッシモがまさかのボスキャラぶりを発揮。ティーニーに飛びかかり、鳴き叫ぶと、2匹は取っ組み合って転がり、乱闘になってしまうのだった。

なんとか2匹を仲良くさせようと日々、力を尽くした2人はへとへとに疲れてしまったという。そんななか、唯一成功を収めたのが、靴下作戦だ。

まず、2匹を別の部屋へ入れる。ペアの靴下を用意して、片方をマッシモの体になすりつけて匂いをつけ、ティーニーの部屋へ置く。

もう片方の靴下は、その逆にする。お互いの匂いに慣れさせることで、「相手は危険な存在じゃない」ということを認識させるのが狙いだ。

これを2週間ぐらい続けたら、1日に2回、10分ほど面会タイムを設ける。一週間経ったら、顔を合わせる時間を少し長くして、さらに一週間後にはもっと長く……。

そうしてマッシモとティーニーがケンカをしなくなるまで、約1年。ちょっと時間がかかったけれど、今では一緒に遊び、ソファの上に2匹で丸まり眠るまでになった。

ケンカばかりだった2匹。靴下作戦で仲睦まじく

窓が開くと、2匹とも一目散に窓の外へ。大きなベランダもあり、暖かな季節は2匹揃(そろ)って日光浴を楽しみます。秋には落ち葉を眺めたり、積もった落ち葉の上に飛び乗って遊んだり……。

飼い主と猫の関係だって同じだ。信頼関係を築くまで、時間がかかることがある。特にマッシモは、前脚に大けがを負ったところを保護され、愛情をいっぱい受けるべき時期に、病院で孤独に過ごした。

そのため初対面の人間に対し、用心深いところがあったという。「猫から自動的に愛情をもらえると思ったら大間違い。飼い主が猫をよく理解して、努力をする必要がありますよね」とナタリーさん。

「猫は、人間とは異なる生き方と世界を持っていて、基本的に自分のしたいことをする。だからこそ、猫がすすんで私たちの近くへ来て、横に座るときほどうれしいことはありません」。

猫との暮らしのあちこちで、2人はその小さな喜びを噛(か)みしめている。
(写真・前田直子)

写真のつづきは最下部のフォトギャラリーへ↓↓ ※写真をクリックすると拡大表示されます。

ナタリーさんのウェブサイト https://www.quantamagazine.org/authors/natalie
ケイトリンさんのウェブサイト https://wpi.art/

連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

PROFILE

前田直子

写真家 24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
www.naokomaeda.net

PROFILE

仁平綾

編集者・ライター
ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
http://www.bestofbrooklynbook.com

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忙しいからこそ、猫は2匹、朝活1時間。

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