朝日新聞ファッションニュース

時代への鋭いメッセージ 19年秋冬パリ・コレクション

5日まで9日間にわたって開かれた2019年秋冬パリ・コレクションは、メッセージ性の強いショーが多かった。分断や対立が深刻化する世界情勢への思いを服や演出に託しているかのようだった。新しい形を作ろうとする動きや、若者のパワーが爆発した1950~70年代調が目立った。

連帯の力を想起

時代への鋭いメッセージ 19年秋冬パリ・コレクション

コムデギャルソン

コムデギャルソンは、フリルのドレスなど可愛らしさが漂う服に、パンク調のハーネスや巨大なブラ、シリコーンラバーのふくらんだ脚当てといったハードなパーツが装着されていた。
フィナーレ近くで背景に流れたのは、爆撃音。それが去った後の暗黒の静寂の中で、円陣を組んだモデルたちが天井から降り注ぐ光を仰ぐという演出だった。デザイナーの川久保玲は舞台裏で「小さな影がたくさん集まると、大きな力になる」と語った。世界に広がる#MeToo運動や住民投票の動きをも想起させた。

時代への鋭いメッセージ 19年秋冬パリ・コレクション

マリーン・セル

いま最も注目を集める新進のマリーン・セルのテーマは、「黙示録」。洞窟状の会場で、核戦争で地球が滅亡しそうな状況でのファッションを表現した。リサイクル地を縫い合わせたドレスやカキ殻で作ったネックレス。顔にはガスマスク。セルは「今、変わらなければと皆が思っているのに、何も止められない。世界は辛うじて保たれているけれど、今後どうなるの?と伝えたかった」という。

時代への鋭いメッセージ 19年秋冬パリ・コレクション

バレンシアガ

バレンシアガは、稲妻風の閃光(せんこう)が走る会場。肩がつり上がったジャケットや肩部分を輪っかで造形したTシャツなどフォルムが斬新な作品を並べた。

時代への鋭いメッセージ 19年秋冬パリ・コレクション

ヴァレンティノ

今季は「愛」も大きなテーマになった。ヴァレンティノは「愛は全てをつなげる接着剤」との言葉を配布資料に引きながら、色や柄、技に情熱を詰め込んでフェミニンな作品をそろえた。プリントや刺繍(ししゅう)で描かれた、抱擁する男女にダークな要素が絡まるグラフィックは、高橋盾(じゅん)が率いるアンダーカバーが提供した。

時代への鋭いメッセージ 19年秋冬パリ・コレクション

トム・ブラウン

性や肉体を超えた美を追求しようとする流れも一歩進んだ。ハイダー・アッカーマンは、男女のモデル全員がオールバックの髪形。トム・ブラウンは、端正なビジネススーツ姿の性別不明のモデルが職場に出勤し、退社するという演出だった。

時代への鋭いメッセージ 19年秋冬パリ・コレクション

クリスチャン・ディオール

クリスチャン・ディオールは50年代の英国のテディガール・ルックを、現代的に表現した。胸には、女性の団結を表した詩が描かれた。

美の暗い側面も

愛や美、情熱の象徴である「バラ」のモチーフも。ドリス・ヴァン・ノッテンは昨秋、自宅の庭で撮影した朽ちかけた花も含むバラの柄を、ゆったりとしたシルエットにのせた。「純粋で美しいけれど暗い側面も表すのが、時代のリアルだと思ったから」とデザイナー。

時代への鋭いメッセージ 19年秋冬パリ・コレクション

(左)ドリス・ヴァン・ノッテン、(右)ノワール・ケイ・ニノミヤ

ノワール・ケイ・ニノミヤも小さなバラ状の花飾りで造形したビッグコートなどを見せた。「野性や宗教性などバラが持つ複雑な部分までをどのように表現できるかに力を注いだ」

時代への鋭いメッセージ 19年秋冬パリ・コレクション

ランバン

新たに登用されたデザイナーでは、ランバンのブルーノ・シアレッリ(31)が光った。クラフト感のあるカジュアルなスタイルは「日常的に着られるけれどインパクトのあるものをと考えた」という。

時代への鋭いメッセージ 19年秋冬パリ・コレクション

セリーヌ

セリーヌは、エディ・スリマン特有のシンプルな極細スタイルから一転。ブランドの過去の作品から着想して、テーラードジャケットにボウタイブラウス、プリーツのキュロットスカートにロングブーツという極めて典型的な70年代後半のスタイルを押し出した。

時代への鋭いメッセージ 19年秋冬パリ・コレクション

ルイ・ヴィトン

今回はパリ・コレらしい手の込んだ作品や大規模な演出が相次いだ。なかでもルーブル美術館の庭に現代アートで知られるポンピドゥー・センターを模した大会場を作り、スポーツや民族調、フォーマルや未来的な要素を技巧的に融合してみせたルイ・ヴィトンが圧巻だった。

シャネルは、故カール・ラガーフェルド氏の最後の作品を並べた。20世紀のパリモードの立役者である氏の逝去と、多くのブランドが時代の変わり目を表そうとした動きが重なったことが感慨深かった。(編集委員・高橋牧子

<写真は大原広和氏撮影>

パリがミラノが「帝王」しのぶ ラガーフェルドさん、最後のコレクション

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「時代と文化超えて」新進作家アート展 ドリス・ヴァン・ノッテンの依頼

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