リノベーション・スタイル

夫婦の生活空間を分ける“秘密の小道”

[GRAZY]
Sさん(夫43歳、妻41歳)
東京都品川区/76.59㎡/築39年/総工費990万円

   ◇

Sさんご夫妻は、以前から「変わった家が欲しい!」と思いながらも、どこに頼めばいいのかわからず、あちこちの不動産屋さんをまわっていました。

まず、お二人が探していた物件の第一条件は“駅近”であること。その条件の中で見つけた物件の一つに、ご主人の食指が動きました。

お酒を飲むのが大好きなご主人は、もともと住んでいた五反田に行きつけの店がたくさんあったそう。

この物件は窓が横に並び、まさに飲食店のような雰囲気だったのです。内見当初から「友達と一緒に晩酌したい!」とおっしゃっていました。

一方、奥様はマイペースに自分の生活を送りたい方。ご主人が朝まで友達と飲んでいても、日常生活に支障をきたさないプライベートスペースを確保したい、とのリクエストがありました。

そこでこちらから提案したのは、お二人のライフスタイルをポジティブに楽しめるよう、友人を招いてくつろげるLDKと、その裏に玄関からサニタリールーム、寝室までを「秘密の小道」でつなぐプランでした。

夫婦の生活空間を分ける“秘密の小道”

別の角度から見たLDK。右手奥の壁にはスリットを設け、その向こう側が秘密の小道

つまり、パブリックスペースとしてのLDKをしっかり確保しつつ、裏にプライベートルームの動線を作るというもの。

ご主人が深夜まで友人たちとLDKで飲んでいる間、奥様はお風呂に入り、秘密の小道を通って、気持ちよく寝室に行けるよう設計しました。

さらに小道を通るのが楽しくなるよう、通路には奥様の好きな絵をたくさん飾れるようにもしています。

この「秘密の小道」の壁の上部には、奥様の背よりは高く、ご主人の背よりは低いという位置にスリットを入れました。

つまり、ご主人がここを通るときはリビングから頭が見えますが、奥様が通るときは姿が見えません。見え隠れしている赤は廊下にかかっているカーテンの色です。

夫婦の生活空間を分ける“秘密の小道”

小道をのぞくスリット

「秘密の小道」の裏側は小上がりスペースがあります。印象的な照明は恵比寿のアンティークショップで購入されたもの。

飲んで眠くなった人はよく畳の上で仮眠をとっているそう(笑)。気持ちよさそうですね。

玄関スペースも印象的な造りです。玄関から入るとかなり暗いのですが、濃いグレーに塗られた壁の中で、黄色い扉がぱっと目を引きます。

照明は大阪のアンティークショップで奥様が購入したもの。最近壁に色を塗る人が増えてきましたが、こちらの家には白い壁はなく、全部グレーや赤に塗られています。

リノベーションが一般的になるにしたがって、個人の志向を全面に押し出したリノベーションは減ってきた気がしますが、Sさんご夫婦は自分たちの世界観をそのまま家に投影し、お互いがのびのびと楽しんでいらっしゃいます。

これぞリノベーションの醍醐味(だいごみ)!という事例ですね。

(構成・宇佐美里圭)

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PROFILE

石井健

「ブルースタジオ」執行役員
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
http://www.bluestudio.jp/

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