俳優 柿澤勇人さん「村上文学だけの世界、演劇でしかできないこと」
舞台『海辺のカフカ』東京凱旋公演PR

2019年パリ公演より

2019年パリ公演より 撮影:KOS-CREA

村上春樹と蜷川幸雄、世界的な才能が融合した舞台『海辺のカフカ』を見る機会がやってきた。日仏友好160年を記念した「ジャポニスム2018」の一環としてパリの観客を魅了し、5月、6月の東京がラストステージとなる。2012年の初演以来、主人公カフカの別人格・カラスを演じるのは、注目の若手俳優、柿澤勇人さん。文学を視覚化する蜷川演出の力を、身をもって体験してきた。

俳優・柿澤勇人さん

俳優・柿澤勇人さん Hayato Kakizawa

村上ワールドを視覚化 世界を驚かせた斬新さ

「君は彼女の中にある空白が満たされる音に耳を澄ます。浜辺の細かな砂が月の光に当たって砕けていくときのように、とても小さな音だ」(舞台『海辺のカフカ』カラスのセリフから)。

「村上春樹さんの文章には独特の雰囲気がありますよね。セリフにして発すると、とても演劇的なんです。それが、蜷川さんの作り上げた世界――照明と音響、俳優や舞台装置がアクリルケースに入って移動する場面転換――のなかで、より美しく響く。僕にとって、セリフの一つひとつが大事にしたい言葉です」

2002年に発表され、世界中で高い評価を受けた村上春樹さんの原作はファンも多く、舞台化に期待と懐疑の両方があったであろうことは想像に難くない。しかし、故・蜷川幸雄さんは斬新なアイデアと、役者の内面を引き出し高いレベルを求める演出法によって、見事に観客を幻想と現実を行き来する物語世界に引き込んだ。

7年にわたってカラス役を演じる柿澤勇人さんは、2015年のワールドツアーではロンドン、ニューヨークなど5都市での熱狂も経験している。「パリでは盛り上がるだけでなく、皆さんが物語に没頭しているような、集中を感じました。ライトに照らされて前列のお客様が見えたとき、涙を流しているいくつもの顔が。あの光景は忘れられません」

俳優 柿澤勇人さん「村上文学だけの世界、演劇でしかできないこと」<br>舞台『海辺のカフカ』東京凱旋公演

千秋楽には村上春樹さんも楽屋を訪ね「面白かった、感動した」と言ってくれたという。「原作者として認めてくれたのではないでしょうか。それは蜷川さんが演劇でしかできない表現をしたからだと思うんです。もしこれが映像だったら、たとえば猫がしゃべるシーンはたやすく作れるでしょう。アクリルケースに入ったトラックや森のセットを人力で押して運ぶ必要もなくなる。でも着ぐるみを使って演技する役者を配し、1トンにも及ぶ巨大なものから小さな水槽まで、ケースを入れ替わり立ち替わり舞台に登場させた。蜷川さんが持つ世界観は、村上さんの文学の世界観と同レベルの密度で対峙していたんだと思います」

蜷川演出が教えてくれた 役者としての見方、生き方

『海辺のカフカ』は、柿澤さんにとって蜷川幸雄さんとの出会いの作品だった。それまでミュージカルを中心に演じてきた柿澤さんは、激烈なことで知られる蜷川演出の洗礼を受けたという。

「ダメだダメだ、こうしろ!ああしろ! と言われて、次の日にそれをやると違う! と否定される繰り返し。お前の生き方にノイズがない、と言われてショックでした。声も通るけれど色がない、と。それまで正確できれいな歌と踊り、人生の素晴らしさを言葉で伝えることを第一にしてきたのですが、世の中には汚いもの、嫌なものもある。それを鏡のように映すのが役者だ、と」

蜷川さんに言われたことを理解するために、寺山修司や唐十郎、土方巽など1960〜70年代に活躍した芸術家たちの資料や映像を見て勉強した。とりわけ暗黒舞踏の土方巽の身体表現には「こんな世界があったのか」と驚いたという。

2019年パリ公演より

2019年パリ公演より 撮影:KOS-CREA

「カフカの裏の存在であるカラスがなぜ生まれたのか、考えるようになりました。役者にとって、情報は台本がすべてなのですが、自分が何をストックしてきたかによって台本の読み方も変わってくる。こういうふうにやってみよう、というアイデアも生まれるんですね」

なんとか必死で食らいつき、初演は成功。「それでも、この体験はほとんどトラウマのように苦しくて、再演で呼ばれたときも、蜷川さんに“なんだお前、何にも変わっていないな”と言われたら辞めようと思っていたんです。でも“いい役者になったな”と言ってもらえた。それで少しは余裕ができて、カフカ役の古畑新之くんを見守る僕の思いが、カフカに対するカラスとリンクしました」

今回の再演では自ら提案し、以前には居なかったある場面に登場する。「世界ツアーで評価されて、完成形だと思っていたのですが、カラスの気持ちとしてはこうしたいだろうと……。ぼくなりに7年かけて解釈したカラスを見て欲しいと思います」。舞台でカラスとして生きる柿澤さんのまなざしに、生前の蜷川さんが渾身の力で伝えた熱情が宿っていた。

PROFILE

俳優 柿澤勇人さん「村上文学だけの世界、演劇でしかできないこと」<br>舞台『海辺のカフカ』東京凱旋公演

柿澤勇人(かきざわ・はやと)

1987年神奈川県生まれ。2007年劇団四季「ジーザス・クライスト=スーパースター」でデビュー。立て続けに主役を務め、09年に退団。その後、栗山民也、蜷川幸雄、宮本亜門、福田雄一などそうそうたる演出家の舞台に出演。9月には三谷幸喜の書き下ろし「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」の主役を務める。

東京凱旋公演『海辺のカフカ』

Story
15歳の僕は、自分の分身のようなカラスの声に導かれるように家出をし、四国へ。図書館で出会った大島に助けられ、館内に身を寄せると、そこには幼い頃に自分を捨てた母親かもしれない館長の佐伯が居た。一方、猫と会話ができる不思議な老人ナカタも、謎の男に関わったことで運命のように旅に出る。やがてそれぞれの物語がシンクロし……。

原作:村上春樹
脚本:フランク・ギャラティ
演出:蜷川幸雄
出演:寺島しのぶ 岡本健一
古畑新之 柿澤勇人
木南晴夏 高橋 努
鳥山昌克 木場勝己 ほか

上演:5/21(火)〜6/9(日)
会場:TBS赤坂ACTシアター
チケット:S席10,800円 A席7,000円(全席指定・税込み ※未就学児入場不可)好評発売中!
ホリプロチケットセンター 03-3490-4949
(平日10:00~18:00 土曜10:00~13:00 日祝休)
主催:TBS/ホリプロ
協力:新潮社/ニナガワカンパニー/ANA
メディアパートナー:朝日新聞社
企画制作:ホリプロ

『海辺のカフカ』詳細はこちら:http://hpot.jp/stage/kafka2019

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