上間常正 @モード

新たに多様化する東京、そしてアジア発の新作コレクション

今月18日から23日まで、2019秋冬東京コレクション(正式には「アマゾン・ファッション・ウィーク東京19年秋冬」)が開かれた。久しぶりにかなり通して見ることができて感じたのは、日本も含めたアジア的な特色を新しい形で表現するブランドが増えていること。しかもその表現の仕方が多様なことだった。タイプ別に次回と2回に分けて紹介することにした。

 今回の東コレはインドネシアのファッション・ウィークの主宰者と連携したこともあって、会場にはイスラムのスカーフ姿の女性も多かった。そのインドネシアからは、「アジアファッション・ミーツ東京」と題して2組のブランドが参加した。

新たに多様化する東京、そしてアジア発の新作コレクション

ダナ・マウラナ/リザ・マシタ(インドネシア) 撮影:野村洋司

 ダナ・マウラマとリザ・マシタの男女ペアは、ポップなプリント柄を紐(ひも)とベルトでアクセントをつけたスポーティーな服。色使いやゆったりとした形には日本のきものとも共通したアジア的な味わいがある。「東京から出てくるエネルギーを『希望』というイメージで表現したかった」とデザイナー。

 もう一つのブランド「エリダニ」は、インドネシアの張りのあるシルクや絣(かすり)模様などを使い、折り紙を巻いたような造形の服を見せた。地域の植物の色や銀鼠(ぎんねず)、鉄さびといった色使いもアジア的で馴染(なじ)み深く感じた。「インドネシアの昔話とも共通する『竹取物語』で、かぐや姫が竹の中から出てくる場面をモチーフにした」という。

 「ウィシャラウィッシュ(WISHRAWISH[THA])」はタイからの参加。紺のシルクのコートやシルク地に植物柄や大粒のドット柄のドレスやブラウスなど、タイの各地方の伝統的な手作りの素材を使いながらも形は現代的なきちんとした仕立てになっている。パーカオマーという水浴用腰巻きやターバンなどに使われるタイの手織り綿のドレスも魅力的だった。

新たに多様化する東京、そしてアジア発の新作コレクション

ウィシャラウィッシュ(タイ) 撮影:野村洋司

 デザイナーのウィシャラウィッシュ・アカラサンティスックはタイの国立大学を卒業後、パリ・オートクチュール組合が設立した高等専門学校(IMF)でファッションデザインを学びタイでブランドを立ち上げた。今回のテーマは「多様性のあるシンプルさ」。この多様性をはらんだシンプルな表現はタイだけではなく、アジア全般にもつながっているように思える。

 韓国からは「アクオド バイ チャヌ(ACUOD by CHANU)」。テーマはこのブランドの基本姿勢でもある「フェイクをやっつけろ」で、いくつかの優れた服やアート作品などを元ネタにしてそれらを組み合わせて新しい価値観を生み出せば、フェイクではなく本物になるということのようだ。今回はレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」を主な元ネタにして、それを解体したり違う分野の作品とコラージュしたりすることで、現代的な新たな価値観をもった服を作ることができたのだという。

新たに多様化する東京、そしてアジア発の新作コレクション

アクオド バイ チャヌ(韓国) 撮影:Runway-Photographie

 色々なカルチャーをつなぐ、という意味で多用されたジッパー使い(パンク精神の象徴でもあるだろう)、世界中の新聞を切り刻んで作ったという髪飾り、ショーのフィナーレでモデルたちがACUODの文字を動きで描いた表現も斬新で興味深かった。

 中国の上海で活動するペアの若手ブランド「シュシュ/トング」の、少女の可愛さと残酷さを同時に秘めたような繊細なフェミニンスタイルも印象的だった。

 そんな中で、日本人で「和」のテーマを追求してきた数少ないブランド「マトフ(matofu)」(堀畑裕之、関口真希子)は、前回に続いてショーではなく展示会形式で新作を発表した。客が服をすぐ近くで見たり手に取ったりしたり、デザイナーがその場で説明する方が服をより理解してもらえるからだという。

新たに多様化する東京、そしてアジア発の新作コレクション

マトフ(日本) 撮影:野村洋司

 展示会では、まず「手のひらの旅 雪の恵み」と題してデザイナーの2人が青森の津軽地方の冬を訪ねるビデオ映像を上映し、「近くでは当たり前すぎて気がつかない美しさが、工芸にひそむ」と語りかける。そして「こぎん刺し」と呼ばれる刺し子の刺しゅうや「津軽塗」の漆器、「津軽打刃物」のマーブル模様、また雪の結晶や氷と水がうみだす風景の独特な美しい模様などを紹介。

 こうして得た素材を使った服をマネキンに着せたり、何着かはモデルが実際に着て観客のすぐ傍らを歩いたりして、また実際にデザイナーやスタッフに質問もできた。確かに分かりやすい見せ方なのだが、欲をいえばこうした美しい伝統素材の技術を今の日本でどう現代的に表現しようとしたのかをもっと分かりやすく説明することが必要なのだと思う。

PROFILE

上間常正

ジャーナリスト、ファッション研究者。1972年、東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社。記者生活の後半は学芸部(現・文化くらし報道部)で主にファッションを担当。パリやミラノなどの海外コレクションや東京コレクションのほか、ファッション全般を取材。2007年に朝日新聞社退社、文化学園大学・大学院特任教授(2019年3月まで)としてファッション研究に携わる。現在はフリーの立場で活動を続けている。

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表現の仕方そのものへの模索と伝統の確かさ

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