花のない花屋

残りの人生を楽しんでもらいたい……自分のことは後回しで父の介護に奮闘してきた母へ

残りの人生を楽しんでもらいたい……自分のことは後回しで父の介護に奮闘してきた母へ

〈依頼人プロフィール〉
山川貴代さん 48歳 女性
千葉県在住
専業主婦

81歳の母は、1歳年上の父を10年以上介護してきました。まさに「老老介護」そのものでした。

父は18年ほど前、道を歩いているときに突然倒れ、頭を打って脳挫傷を負い、歩くことが徐々に困難に。特に8年前に車いすになってからは、夜中に2、3度起きてトイレの介助をしなくてはいけなくなり、母に重い負担がのしかかりました。

そして昨年4月、「もう家で見るのは限界……」と母が言い出したちょうど翌週、父が階段から落ちて、そのまま入院。病院で検査をしましたが、骨折をしているわけでもなく、どこか悪いところがあるわけでもなく、加齢と持病からくる歩行困難という診断でした。

運ばれたのが救急病院だったため、リハビリをして一カ月後には退院しなければならず、転院先や介護老人保健施設などを検討していたのですが、突然母が「お父さんを自宅に連れて帰る」と言い出し、「もう無理でしょう!」と、私と何度もぶつかりました。聞けば、入院中に父が「家に帰りたい」「病院のご飯がおいしくない、お母さんのご飯が食べたい」と言って、かわいそうになったようでした。

とはいえ、ベッドから一人で立ち上がれなくなった父の介護はあまりに大変。どこか施設を探さないと母がもたない……と頭を抱えていた矢先、ショートステイをしていた施設で父が脳梗塞(こうそく)を起こし、別の入院に再入院することになりました。

それから父はあっという間に誤嚥性(ごえんせい)肺炎を起こして飲食ができなくなり、心臓に近い静脈にカテーテルを入れての栄養摂取になりました。

その後終末期の病院に転院し、昨年4月、入院から8カ月後に、父は母にみとられて亡くなりました。

父が入院してから亡くなるまでの間、母は疲労で体調を崩しながらも、毎日病院へお見舞いに行き、父を最後まで見届けました。今は寂しさがある一方、「できることはすべてやり切った」という、ある種のすがすがしさのような気持ちもあるようです。

そこで、そんな母へ、人生の再出発の応援とこれまでの感謝を込めて、花束を作ってもらえないでしょうか。母はずっと自分の人生は後回しで、父の介護を優先して生きてきたので、これからは自分のことを第一に、やりたいことをやって残りの人生を楽しんで欲しいです。

岩手の田舎で生まれ育ったので、モダンな感じよりも野原を思い起こさせるような、素朴な雰囲気が似合うかと思います。明るく優しい色合いが好きなので、パステルカラーをベースに、母が今まで見たこともないような珍しいお花も加えてもらえると、よろこぶかなと思います。

残りの人生を楽しんでもらいたい……自分のことは後回しで父の介護に奮闘してきた母へ

花束を作った東さんのコメント

人生を再出発したお母様へ。優しい色合いを意識、お母様のことをイメージしながら作りました。また、「お疲れ様、ですが、これからだよ!」というメッセージもこめたかったので、力強さや躍動感も表現。

花材はチランジアをはじめ、スカビオサ、カーネーション、ラナンキュラス、シラー、エピデンドラム、キンセンカ、ラケナリア、サクラ、ピットスポルム(葉物)となっております。

ご年配の方には主張しない花を選びがちですが、でも、ここはポジティブなものにしました。

残りの人生を楽しんでもらいたい……自分のことは後回しで父の介護に奮闘してきた母へ

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残りの人生を楽しんでもらいたい……自分のことは後回しで父の介護に奮闘してきた母へ

残りの人生を楽しんでもらいたい……自分のことは後回しで父の介護に奮闘してきた母へ

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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「将来は自分がお兄ちゃんと弟の後見人になる……」、今は看護師として働くめいへ

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「仕事は辞めていいんじゃないの」。結婚か退職かに悩む私にアドバイスをくれた恩師へ

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