このパンがすごい!

「駿河湾産桜海老のチヂミ風フォカッチャ」など豪華食材使用のホテルのパン屋/ル・パン神戸北野

「駿河湾産桜海老のチヂミ風フォカッチャ」など豪華食材使用のホテルのパン屋/ル・パン神戸北野

駿河湾産桜海老のチヂミ風フォカッチャ

異人館が立ち並び、趣深い坂道がつづく、神戸・北野。その一角に、スペシャル食材を飛び道具とする、ホテル直営のゴージャスなパン屋「ル・パン神戸北野」がある。季節の食材をあしらったラインナップを3カ月ごとに発表。ホテルの仕事らしい端正なパンの形とあいまって特別感のあるパンが並ぶ。

この春の季節限定メニューのひとつ、「駿河湾産桜海老のチヂミ風フォカッチャ」。希少な駿河湾産のサクラエビを使用。干しエビ特有の臭みを感じさせず、春の海のさわやかな風をほうふつとさせる。表面のゴマ油、ニラ、タマネギ、ジャガイモの組み合わせでチヂミ味を演出、平面であるチヂミを立体に展開させるイノベーション。チヂミらしいぱりぱりな皮が、ふにゅうとあっけなく沈み、かと思えば噛(か)みごたえもあり、とろけ感もありと、連続して変化する食感と口溶けを作りだしている。

「本当にちょっとしたところなんです。(高級素材を)『のせました』『入れました』で終わりじゃない」

と製パン部支配人の高野義弘さん。特別な食材を使うから、おいしいのではない。食材をパンとしていかにプロデュースし、細部にこだわれるかに、クオリティーはかかっている。

「駿河湾産桜海老のチヂミ風フォカッチャ」など豪華食材使用のホテルのパン屋/ル・パン神戸北野

製パン部支配人の高野義弘さん

「3大グランシェフの競演レシピによるコラボパン」。母体であるラスイートグループ各ホテルの料理長とル・パン神戸北野がコラボするシリーズで、これも3カ月に1度、季節の食材を使った限定商品がリリースされる。

「駿河湾産桜海老のチヂミ風フォカッチャ」など豪華食材使用のホテルのパン屋/ル・パン神戸北野

土佐煮エピフランス

そのひとつが「土佐煮エピフランス」。姉妹施設「神戸みなと温泉蓮」の総料理長・島武行さんによる、たけのこの土佐煮が包まれている。滲(にじ)みだすかつおぶしのダシ感と、神戸ワインを使ったマスタードの香りがクロスオーバーし、持ち上げる。ここに高野さんはエピを持ってくる。たけのこのぱりぱり食感と、平焼きのフランスパンのぱりぱりが合唱するのだ。

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淡路産自凝雫塩(おのころしずくしお)のグリーンピース塩パン

季節商品のみならず、通常商品にも、特別な食材が使用される。「淡路産自凝雫塩(おのころしずくしお)パン」は名前の通りブランド塩がトッピングされる。かりかりとした表面ははかなく自壊し、中身はぷにぷにとしていて圧倒的にとろける。出現する発酵バターの奔流。塩味が立ちすぎず、ミネラリーでまろやかな粒塩のアクセントによって、バターの甘さはますます強調される。

このパンの、快楽的なぱりさく感やもっちり感を作りだしているのが10%配合された米粉。

「10%というのがほどよい量。米粉というと健康志向のパンと思われがちですが、そうじゃないんです」

フランスの発酵バター「イズニー」を使用するのが、「至福のクロワッサン」。放たれるバターの香りは高貴で、かつ余韻が長くつづくのは、さすがの仏産バター。そして、食感もまた秀逸だ。表皮は実にかよわく、少し触れただけでさわさわと割れるし、中身は絹のようになめらかに舌に触れ、ふにゅうとやわらかく沈む。こうした食感も、フランスの超硬水である「コントレックス」を巧みにブレンドしてグルテンのつながりを調整するなど「ちょっとしたところ」へのこだわりがあってこそ。

「駿河湾産桜海老のチヂミ風フォカッチャ」など豪華食材使用のホテルのパン屋/ル・パン神戸北野

ラ・スイート特製カレーパン

もうひとつ、「ラ・スイート特製カレーパン」を紹介したい。5時間かけて煮込む、特選牛を使用したカレーフィリングはいかにもホテルメイドなコクの深さ。牛肉のダシ感の濃厚さ、野菜の甘さ、赤ワインのかぐわしさで食べさせる。辛さはそれほどなくマイルド、と思わせたのち、あとからあとから、ぴりぴりすーすーとスパイス感は爽やかにきいてくる。そして飲み込んだあと、胸が熱い。

ここにも生地へのこだわりを見る。一般的なカレーパンのように過剰なオイリーさはなくて、かつさっくりと歯切れがよく、カレーに寄り添ってくれる。レストランの料理と食事パンさながらの関係性だ。

三宮、元町界隈(かいわい)といえば、日本の本格的フランスパン、ドイツパンを育んだ土地。至近距離には、日本を代表するパン職人である西川功晃シェフの「サ・マーシュ」もある。連休の行楽には、神戸で異人館とパン屋巡りはどうだろう。

ル・パン神戸北野
兵庫県神戸市中央区山本通2-7-4
078-251-3800
8:00~19:00
無休(イベント時を除く)
https://www.l-s.jp/lepan/

↓↓フォトギャラリーは下部にあります↓↓ ※写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます。
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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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