朝日新聞ファッションニュース

ポール・スミス、遊び心尽きぬ50年

英国のファッションデザイナー、ポール・スミスがノッティンガムにわずか9平方メートルのセレクトショップをオープンして来年で50年になる。大資本の傘下に入ることなく、世紀をまたいで第一線に立ち続けている。

ポール・スミス、遊び心尽きぬ50年

ポール・スミス=山本友来撮影

デザインは旅で着想

「本当に小さな店でキャリアをスタートさせた。資金調達のために仕事を掛け持ちしていたため、週に2日しか営業していなかった」。時折おどけた表情を見せながら、語り出した。

英国的なスーツにポップな色を合わせ、遊び心ある服づくりでテーラードとカジュアルの両面で広く支持された。パリ・コレクションに初めて参加した1976年からは最低でも年に2度、新作発表を続けてきた。

デザインのアイデアは「尽きることはない」と断言。「旅で目にした風景などから新たなデザインを思い浮かべるんだ」という。

大の親日家としても知られる。「日本に初めて来たのは82年。オリエンタルでエキゾチックな景色や、仕事に対する日本人の姿勢に心底ほれこんだ」と回想する。初出店は84年の青山で、現在は日本だけで150店を超えるまでになった。当初は単身で年4回、日本に来て、ジャーナリストや顧客と交流を深めたという。今も年に2回は日本を訪れている。

ポール・スミス、遊び心尽きぬ50年

2018年春夏のコレクションで、築地市場から着想を得てマグロを描いたバッグ=大原広和氏撮影

独立性と意思、大切に

スミスがブランド運営にあたって、一番大切にしているのは「独立性と意思決定の自由」という。「買収を持ちかけられたことは十数回ある。けれども、そうすれば自由はなくなる。だから1秒たりとも売却を考えたことはない」と言う。

現在のファッション界について、「悲しいけれど、今の若いデザイナーたちは、まるで操り人形のようだね」と話す。80年代後半から90年代にかけて大資本によるブランドの買収が進んだ。その結果、大きなグループの傘下にある有力ブランドでデザイナーに就くことが一つの到達点のようにも見える。

「(広告を出す)巨大ファッショングループが雑誌編集に介入し、トレンドに強い影響を与えている。彼らが雑誌を所有していると言っても過言ではない」。また、新興国で受けがよいことなどから、ブランドのロゴを前面に出す服が目立つが、「歴史あるブランドの創始者たちは、天国から自分のブランドの状況を見て涙しているだろう」と語った。

72歳になり、自分が退任した後は若手を支援しているポール・スミス基金にブランドの運営を委ねることも考えていると明かした。「僕の名前のブランドは続いてほしい。そして、受け継ぐ人には、小さな店から始まったブランドの精神や、謙虚な気持ちを大切にしてもらいたい」(後藤洋平)

「意表突きたい」 19年秋冬

ポール・スミス、遊び心尽きぬ50年

2019年秋冬コレクション=大原広和氏撮影

今年1月にパリで発表した2019年秋冬のメンズ・コレクションでは、赤や黄、青といったビビッドなカラーが目に焼き付いた。先シーズンの19年春夏、昨年の秋冬シーズンでは落ち着いたトーンだっただけに、改めて振り幅の大きさを印象づけた。「長年やっていると、『どんな服を作るか、見なくても分かっている』と思われている部分も出てくる。だから意表を突きたいんだ」とスミスは笑う。

このシーズンの、もう一つのテーマは英国文化のパンク。ひざ下にファスナーが入った細身のボトムスなどに要素が盛り込まれている。

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