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高山都さんの手放した考え方と、新しく始めた習慣。

4月の特集のテーマは『出会いと別れ』。新しい環境に飛び込むときには、慣れ親しんだものを手放すこともあるでしょう。でも、それは決して寂しいことではないはず。1回目にご登場いただくのはモデルとして活躍し、そのナチュラルなライフスタイルで注目を集めている高山都さん。ご自身が最近手放した考え方と新しく始めた習慣について伺いました。

「ON」と「OFF」を切り替えることの気持ちよさ

ファッションやメイクにとどまらず、料理や旅、ランニングなど、幅広い分野で表現活動を行う高山都さん。いつも何かしら新しいことにアクティブにチャレンジしている印象がありますが、常にマイペース。同世代の女性から絶大な支持を得ているのも、その自然体な生き方が輝きを放っているから。

「じつは私、すごく無理をしちゃうタイプなんです。始めたからにはちゃんとやらなくちゃって思ってしまうんです。忙しい毎日の中で、すべてのことを完璧に、理想通りにやるのは当たり前ですけど無理なんですよね。それでも頑張ってしまうから、できない自分が嫌になってしまったり。せっかく好きで始めたことなのに、もったいないですよね。それに気がついてからは、ONとOFFの切り替えを大切にするように心がけているんです」

最近でいうと、常にネイルを塗ることをやめたのだそう。

「以前は撮影の時に塗っていただいたネイルを落とさずに、そのままつけていたんですけど、気がついたら一本だけ剝げていたりして。ファッションやメイクをどれだけ奇麗にしていても、爪に少しでもほころびがあると台無しというか、そこだけ強調されて目立ってしまうんです。何より自分が一番ストレスで、お店でお会計するときにネイルが剝がれていたりして『恥ずかしい!』と思ったことも(笑)。それで、こんなストレスを抱えるくらいなら、いっそやめてしまおうと」

意外なことに、OFFの時間を作ったことでONの時間がより楽しいものに変わったのだとか。

「例えば、パーティーやお祝いの場に行くときには、ネイルをしっかりと塗って行きます。TPOに合わせて色やニュアンスを選ぶのも楽しいですし、気持ちも華やかになります。そして、家に帰ったらすぐに落とします。そうすると気持ちも解放されてすごく気持ちがいいですし、気分の切り替えになるんですよね」

習慣が変わったことで、身に付けるものにも変化が。

「ネイルがないとやっぱり手元が味気なくなるので、以前より大ぶりなリングやブレスレットをつけるようになりました。そうやってまた新しいものに出会えるのはすてきなことだなと思います。それに合わせて洋服もまた変わっていくかもしれませんし、やめることで新しい出会いの機会を得られるんだなって感じています」

高山都さんの手放した考え方と、新しく始めた習慣。

撮影の日は自宅でスタッフに昼食を振る舞ってくれるということで、ネイルはOFF。代わりに大ぶりのリングをつけて、手元に華やぎを。

20代から30代へ。「変わりたい」と強く思った

自分の考えや理想を淀(よど)みなく、笑顔で話す高山さん。「凜とした女性」という表現がぴったりの人だけれど、ご本人いわく、「昔の自分はそれには程遠い存在だった」そう。

「モデルという職業柄、20代の頃は少なからず『かわいいね』なんて言っていただいて、たとえ少し失敗したりしても『若いからしょうがないね』で許してもらってきて。それをいいことに、自分で自分のことを真剣に考えたり、自ら何かを発信して状況を変えようと思ったりしてこなかったんです。でも30代に入ると状況は一変。『かわいい』とか『若い』だけでは誰も許してくれないし、認めてもらえないんだとわかってきたんです」

大きな転機となったのは、一緒に暮らしていたパートナーとの別れ。

「33歳くらいの時でした。このまま結婚するのかなと思っていた人とお別れすることになってしまって。しばらく2人暮らしだったところから、いきなりひとり暮らしに戻って。今までなら、何か迷ったときには彼に相談したり、選んでもらったりしていたのですが、それももうできなくなって。その時に『これからはひとりでちゃんと自分のことを選択していける女性になろう、イエス、ノーをはっきり言える強い人になりたい』と思ったんです。30代の半ばでシングルになるって結構こたえるもので(笑)。でも悲しんでばかりいたって何も変わらないわけですから、これは一つのチャンスだと思おうと。自分を変えるきっかけにしたんです」

気持ちを切り替えたことで、仕事の面でも変化が現れたそう。

「それまでは受け身ですよね。いただいた仕事をするだけで、仕事が減っても『何かこないかな、あんなことやってみたいな』と思うだけ。でも、ひとりで立って行くという決意をしてからは、『仕事がないなら探す!』というスタンスに(笑)。お料理のスクールに通ったり、ランニングを始めたり、自分の興味が赴くままに行動していたら、そういうジャンルのお仕事が舞い込んできたり。自分が動けば周りにも緩やかに変化が生まれるんだと実感しましたね」

そして、一番大きく変わったのは、人との接し方。

「お恥ずかしいことに、以前は『周囲にかわいく見られたい、よく思われたい』なんて思いがあったのですが、それってすごく自己中心的というか、自分のことしか見えていなかったんですよね。でもそういう邪念っていうんですか?(笑)。それを捨てて『自分は自分でいいじゃん』と思えるようになったら、その邪念があったスペースに人に対する愛情みたいなものが入り込んできて。きっと気持ちに余裕が生まれたんでしょうね」

「以前は、結婚や妊娠をした知人がいたら『私なんて何もいいことないのに……』なんて卑屈な気持ちを持ったりしたこともありましたが、今は心から喜んで、目いっぱいの祝福をしたいと思えるんです。そうすれば周囲のみんなだって気持ちがいいですし、そういう気持ちって、いつか必ず自分に返ってくるものだと思うから」

高山都さんの手放した考え方と、新しく始めた習慣。

大阪出身というのもあるかもしれないけれど、とにかくおしゃべりが好き。誰の話にもじっくりと耳を傾けて、気づけばこちらが質問攻めにあってしまうほど。そんなオープンな人との接し方も高山さんの世界を広げ、豊かにしてきた。

日々の小さな一歩で、自分は変わっていく

最近始めた新しい習慣のひとつが「読書」。ついインターネットのインスタントな情報に頼りがちな日々の中で、改めて本の魅力に気づいたのだそう。

「きっかけは、人前でお話する機会が増えたことでした。スピーチであれ簡単な挨拶であれ、いざ人前でお話ししようと思うと、なかなか言葉が出てこないというか。もともとそんなにボキャブラリーがあるわけではないので、なおさら自分の表現力のなさにがっかりしてしまうことが多々あって。自分で本を書いた時も同じように思いました。伝えたいことはあるんですけど、それをその場所やそこにいる方々にすっと伝わるような言葉選びって、すごく難しいんだなと痛感したんです」

言葉選びの魅力を教えてくれたのは、原田マハさんの小説『本日は、お日柄もよく』でした。

「著名人の方のスピーチ原稿を書くスピーチライターさんが出てくるお話なんですけど、どんな状況で、どんな言葉を使ったらその場の空気や人の心を動かせるか、言葉選びのヒントが詰まった物語です。それは日々の会話でも同じですよね。この言葉で伝えると、相手はどんな気持ちになるのかを考えて言葉を選ぶというのは大切なことだし、何よりすてきだなと思います。例えば自分が誰かに大切なお話をする前や、緊張するスピーチの前には、この本をたびたび読み返しています」

9年ほど続けているランニングにも、小さな変化が。

「これまではかなりストイックな目標を掲げて日々走っていましたが、今年からは真夏の炎天下でも走れたとか、自分の中での最低ラインの距離を決めるだとかを毎月の目標にすることにしたんです。大きな目標があったほうがいいこともありますが、私はやっぱり頑張りすぎてしまうタイプなので。目標を達成できないと『やっぱり自分はダメなんだ……』と思いがちなので、最低ラインを目標にしておけば、よほどのことがない限り『今日も私、頑張った!』と思えるでしょう? 

自分を褒めることで生まれるのは、小さな勇気。

「例えばお仕事でも趣味でも恋愛でも、何か新しいことにチャレンジしてみたいなと思ったときに、『自分はダメだから……』なんて思う習慣がついていたら、たぶん一歩を踏み出せないと思うから。でも、毎日ささやかなことでもいいから『よくやったぞ、自分!』と褒める習慣がついていれば、いざという時に自信を持って飛び込んでいけると思うんです」

「今やらせていただいているお料理のお仕事もまさにそうで、上手な方はたくさんいらっしゃいますけど、そんな中でも自分がやりたいと思ったらまずは飛び込んでみる。そうしたら新しい世界が開けて、今まで出会ったことのない人にもたくさん出会い、最初は小さな一歩かもしれないけれど、それが大きな変化につながるんだなって。最初から大ジャンプするのは難しいし疲れてしまうけど、小さな一歩なら、いつだって誰だって踏み出せる、そう思います」

高山都さんの手放した考え方と、新しく始めた習慣。

花を飾るのもここ数年続けている習慣。「忙しくしていると、つい花の世話を忘れてしまいがちですが、元気のない姿を見ると、『ああ、いけない!』と自分を律するきっかけになることも。おかげで部屋も自然と整えるようになりました」

 

撮影・相馬ミナ 文・小林百合子

PROFILE

高山都
モデル
1982年、大阪府生まれ。モデルやドラマ、舞台の出演、ラジオ番組のパーソナリティなど幅広い分野で活躍。フルマラソンを3時間台で完走するなどアクティブな一面も。最近は料理の分野でも注目を集め、2作目となる著書『高山都の美 食 姿2』では、背伸びせずに作る家ごはんレシピを提案。その自然体なライフスタイルが同世代の女性の共感を呼んでいる。

>>小林エリカさんの『出会いと別れ』のお話はこちら

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作家・小林エリカさん、最愛の父との別れと遺された日記

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