猫と暮らすニューヨーク

猫を飼うことは、人生のレッスン

[猫&飼い主のプロフィール]

猫・Ralph Charger(ラルフ・チャージャー)17歳 オス グレーの雑種、Tomasz Antonio(トマス・アントニオ)16歳 オス 白黒のロングヘア、Arthur Jenkins(アーサー・ジェンキンス)7歳 オス シールポイント・シャム
飼い主・ミュージシャンでバンドRare Futuresのメンバーとしても活動するMatt Fazzi(マット・ファジ)さんと、カンファレンスコーディネーターのMeghan Fazzi(メーガン・ファジ)さん夫婦。ダックスフント犬のネイサンと共に、クイーンズにあるアパートメントに暮らす。

ラルフ・チャージャー、トマス・アントニオ、アーサー・ジェンキンス。それぞれ立派なフルネームを持つ3匹のオス猫。「だって人間にもファーストネームとラストネームがあるでしょう?」と笑うのは、飼い主のマットさんとメーガンさん。「3匹とも私たちの子どもみたいな存在。猫にも一匹一匹に個性があることを考えたら、名前を持つのは当然だと思ったんです」。

最年長、17歳のラルフは、メーガンさんが地元カリフォルニアで、子猫のときに譲り受けた猫。16歳になるロングヘアの猫・トマスとの出会いは、ある夏の日のことだった。

猫を飼うことは、人生のレッスン

最年長のラルフは、人間の感情を察知する能力を持っています。「あるとき私が泣いていたら、ベッドの上に飛び乗って、涙の匂いを嗅いだ後、じっと眼を細めて私のことを見つめてくれたんです」(メーガンさん)ギャラリーはこちら

メーガンさんが地元の野球場で、弟の試合が終わるのを待っていた時、「近くで小さな女の子が、子猫が数匹入ったランドリーバスケットを抱えて、お父さんに猫を飼いたいと懇願していたんです」。驚いたのは、その父親の返答だった。

「“バスケットを捨てなさい。猫は自分たちでなんとかするか、そのへんにいる野良犬に食べられるか、どっちかだから”と言い放ったんです」。見かねたメーガンさん、自ら申し出て、バスケットに入った子猫4匹を譲り受けることにした。

2匹には里親を見つけ、2匹はメーガンさんと当時のルームメートで飼うことに。ニューヨークに移り住むことになったとき、連れてきたのがトマスだ。

猫を飼うことは、人生のレッスン

どんなに猫嫌いな人も「トマスだけは好き」と言うぐらい、みんなに好かれる特別な何かを持っているトマス。「もし言葉をしゃべれたら、きっと大統領になれると思う」とメーガンさん。ギャラリーはこちら

ブルーの瞳を持つシャム猫のアーサーは、メーガンさんの叔母から譲り受けた。叔母さんの元にはヴァニラという名の猫がいて、3匹のトラ柄猫と、1匹のシャム猫を出産していた。そのシャム猫に惚(ほ)れこんだマットさんが、「もしまたヴァニラが子猫を産むことがあったら、そして、もしシャム猫がその中にいたら譲り受けたい」と頼んだのだという。

父猫は出自不明の風来坊。「シャム猫はたまたま。二回も生まれるわけがない」とたかをくくっていたメーガンさんだけれど……結果はビンゴ! ヴァニラが二度目の出産でも、3匹のトラ柄猫と1匹のシャム猫を産み、2人はシャム猫を含む3匹と暮らすことになったのだった。

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アーサーがトマスの顔をぺろり。性格も年齢も違う3匹ですが、それぞれを尊重しつつ、仲良く暮らしています。ギャラリーはこちら

3匹はそれぞれにお騒がせな猫。ラルフは、飼い主が不在で寂しさが募ると、部屋中にオシッコをするオシッコ癖アリ。トマスはアパートメント内を冒険するのが趣味。玄関ドアが開いた隙にするりと抜けだし、隣近所の部屋へお邪魔するという脱走癖アリ。

アーサーは、ショッピングバッグの中に入ろうとしてお尻の骨を折ったり、キッチン棚から滑り落ちて、足の骨を折ったりと、骨折癖アリ。アクシデントは絶えないけれど、今となってはどれも笑い話。

「なにより猫が人生のパートナーでいてくれることに、本当に感謝しているんです。3匹のおかげで、自宅で独りのときも孤独を感じることがありません」とメーガンさん。

ちなみに、2人共に家を空けるときは、キャットシッターサービスのTrusted House Sittersを利用しているという。2人のアパートメントで3匹の猫と共に、滞在してくれる人をマッチングできるサービス。借り手は、猫の面倒を見る見返りに、無料でアパートメントに滞在できる仕組み。金銭のやりとりが発生せず、猫たちにもストレスが少ない。「素晴らしいサービス」と2人は絶賛する。

猫を飼うことは、人生のレッスン

猫たちが首輪の代わりに、首に巻いているのは柄の異なるリボン。メーガンさんがコーディネートして付けてあげているそう。(写真はいずれも 前田直子撮影)ギャラリーはこちら

猫を飼うことには、喜びのほかに学びもある。そう話すのは、幼少の頃、自宅のガレージでメス猫が次々に子猫を産み、たくさんの猫と戯れ育ったメーガンさん。

「ほとんどの猫がもらわれていったけれど、中には自宅で飼うことになった猫もいて、一番記憶に残っているのは、マウスという名のグレーの猫。夜ベッドで一緒に寝たりして、初めて“私の猫”と自覚した一匹でした。子猫を産んだ後に死んでしまったのだけれど、今でもその死を鮮明に覚えています」

マウスが産んだ子猫のうち、一匹をマウスジュニアと名付けた。マウスジュニアは毎日小学校までメーガンさんの後を追い、学校が終わると庭で帰りを待っていたという。ところがある日、下校したメーガンさんが発見したのは、近所の庭で犬に襲われ、ぐったりしたマウスジュニアだった。

その小さな体は、やがてメーガンさんの腕のなかで息を引き取ってしまう……。少女にはあまりにも辛い愛猫の死。「動物の死に直面することは、とても悲しいこと。心にも傷を負います。でもね、それがライフというもの。猫の死は、そんなことを自然と学ぶレッスンでもあった。今振り返ると、そう思えるのです」。

写真のつづきはフォトギャラリーで
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Rare Futuresのウェブサイト https://rarefuturesmusic.com
マットさんのインスタグラム https://www.instagram.com/mattfazzi/
メーガンさんのインスタグラム https://www.instagram.com/megfazzi/

連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

《INFORMATION》
『ニューヨーク おいしいものだけ! 朝・昼・夜 食べ歩きガイド』刊行を記念して、NYの食にまつわるモノを集めた、“おいしい”ポップアップイベントを開催!

猫を飼うことは、人生のレッスン

ニューヨーカー御用達の朝ごはん、夜は大行列な店の穴場ランチ、記憶に残るスイーツ、アメリカンサイズの絶品ステーキ、メキシコ・中東・アジアなど目移りする世界の味、気分のいいバー、助かるTo Goと深夜営業の店、食いしん坊のおみやげまで……。

ニューヨーク・ブルックリンに暮らす編集・ライターの仁平綾が、NYの街を縦横無尽に食べ歩き、“おいしいものだけ”を選りすぐって1冊の本にまとめた『ニューヨーク おいしいものだけ! 朝・昼・夜 食べ歩きガイド』(1800円+税)が、5月11日に筑摩書房より発売。

刊行を記念して、5月1日~6月17日まで、NYの食にまつわるモノを集めた、“おいしい”ポップアップイベントを日本各地で開催します。

詳細はインスタグラムにて @nipeko55

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PROFILE

前田直子

写真家 24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
www.naokomaeda.net

PROFILE

仁平綾

編集者・ライター
ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌やウェブ等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、『ニューヨークおいしいものだけ! 朝・昼・夜 食べ歩きガイド』(筑摩書房)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
http://www.bestofbrooklynbook.com

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