このパンがすごい!

「1日600個売れた」ハニートースト。激戦区・神戸で台風の目となるパン屋/バカンス

「1日600個売れた」ハニートースト。激戦区・神戸で台風の目となるパン屋/バカンス

ハニートースト

水分をたくさんふくんで、ぷにゅぷにゅとやわらかく、ちゅるちゅる溶けるパン「ぷにゅぷにゅ系」。全国でブームを起こしつつあるこのタイプが、神戸でもバカ売れしている。

2年前、三宮にオープンした「ベーカリーバカンス」の「バカンス」。持った感触は水枕。超薄皮で、口に入れたときやる気満々にもう溶ける態勢にある。歯の間で弾みながら、ふにゅうと溶ける。予想を超えてくる甘さ。それは眩(まぶ)しいほどぎらぎらしている。じーんと軽く舌を震わせるミネラル感、喉(のど)の奥や鼻腔(びこう)に向かって国産小麦のフレーバーが吹き抜ける。

ハード系なのにソフト。むしゃむしゃ食べられるのは高加水のなせるわざで、まるでごはんのようだ。そして、砂糖も油脂も使ってないのに、尋常ならざるあの甘さはなんだろう。

「1日600個売れた」ハニートースト。激戦区・神戸で台風の目となるパン屋/バカンス

バカンス

「小麦自体が甘いのもあるんですが、砂糖の代わりに三河みりんを使ってます。そのまま飲めるぐらい、めちゃめちゃ甘い。あと酒粕(かす)も入れています」(村本優馬シェフ)

みりんに酒粕。それから米粉もこのパンには配合される。どれも米を原料とするものばかり。パン屋なのに米づくしはどういうわけか。実は、オーナーは山口県の米農家。日本酒バルなど、お米にちなんだ店を神戸で5店舗経営する。

「1日600個売れた」ハニートースト。激戦区・神戸で台風の目となるパン屋/バカンス

村本優馬シェフ

村本シェフはまだ25歳。2年前、オーナーと出会った村本さんが「パン屋をやりたい!」と直訴すると、即採用、パン屋の開業が決定。派遣されたのは、丹波で月の暦に沿ってパンを焼く「ヒヨリブロート」。絶品のパンばかりのこの店に住みこみで働き、塚本久美シェフに「教えたレシピは持ってっていい」と言われた。それが「バカンス」であり、「奇跡の小麦」キタノカオリを使った食パン。私も食べたことがあるが、本当においしいこのパンが、「バカンスな食パン」となって売られている。

「1日600個売れた」ハニートースト。激戦区・神戸で台風の目となるパン屋/バカンス

バカンスな食パン

「砂糖もバターも入ってないハードトースト。バゲットになるぐらいめちゃめちゃシンプルな配合です。小麦の力ですね」

ぽわーんと跳ねる。皮からじゅるんじゅるん旨味(うまみ)が滲(にじ)みだしてくる。心地よいふわふわ網目が舌にのっかったかと思うと、じゅるーんと溶ける、ジューシーさ。舌の上に甘さ、喉へと旨味が流れだし、香りは鼻へと抜けて。官能の連鎖が止まらないのである。

「バカンス」「バカンスな食パン」以外も、砂糖や油脂分といった副素材が入らないハード・セミハードパンばかり。それでも食べやすい。「バカンス」の生地は甘いパン、しょっぱいパンに派生される。

「1日600個売れた」ハニートースト。激戦区・神戸で台風の目となるパン屋/バカンス

バカンスの塩パン

「バカンスの塩パン」もそうだ。ぷるんと弾んで、ぱちんと歯切れて、ちゅるるーと溶ける。国産小麦と米粉ならではのお米っぽい風味が広がったかと思うと、中から溶けだしたバターの甘さが、じわーっと舌を潤す。バター感があまりにもあふれまくって、いたたまれぬほどの奔流となる。

「1日600個売れた」ハニートースト。激戦区・神戸で台風の目となるパン屋/バカンス

ハニートースト

テレビで紹介され、怒涛(どとう)のように客が押し寄せる原因となった「ハニートースト」。ぼりぼりぼりと、こればっかりは硬い、と思ったら、中はやっぱりしっとりしていて、ジューシーさ大爆発。表面に塗られたはちみつとバターの甘さのあとに、ル・ビルル(りんごと栗のリキュール)によって強められた甘さが次々と波のように押し寄せてくる。

「バカンスをスライスして作ります。最高は1日600個も売れました。最初は、まかないだったんです。『これ出したほうがいいよ』ってスタッフに言われて、やってみたら売れた。うちのスタッフ、いいこと言う(笑)」

「1日600個売れた」ハニートースト。激戦区・神戸で台風の目となるパン屋/バカンス

外観

若さゆえの勢いと柔軟なアイデアで、伝統あるパン激戦区・神戸で台風の目となっている。次のプロジェクトは、山口で、北海道の小麦であるキタノカオリを栽培しようというもの。栽培面積が減少し、入手困難になっている「奇跡の小麦」をお米パワーで救うことができるのか、注目だ。

ベーカリーバカンス
神戸市中央区旭通3-4-15
078-862-5468
8:00~19:00
火曜、第2・4水曜休
https://www.facebook.com/bakeryvacances/

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

自分の「好き」は「仕事」になるか。『暮らしのおへそ』一田憲子さん、『純喫茶コレクション』難波里奈さん

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