按田さんのごはん

按田優子さん「土鍋でカオマンガイ」

東京・代々木上原と、二子玉川で大人気の餃子(ぎょうざ)店、「按田(あんだ)餃子」の店主、按田優子さんの新連載「按田さんのごはん」。昨年、著書『たすかる料理』のインタビューで語っていただいた、どこまでも自由な按田さんワールドを、さらにどっぷり、写真と文章で味わえる貴重な機会! 第2回は、按田さんが愛する「土鍋」のごちそうのお話です。カオマンガイ、作ってみようっと……!
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土鍋がとても好きです。ご飯がふっくら炊けるとか、お気に入りの陶芸作家さんがいるというわけではないです。むしろ、調理器具や食器にこだわりがあまりなくて、かといって何でもいいわけでもなく、じゃあ何なんだというわけで、今回は自分の生活にものすごく頻繁に登場する鍋を紹介したいと思います。

お土産の釜めしの容器がすこぶる便利で大好きです。カオマンガイに最適。塩をなすった鶏肉は米の真ん中に挟み込んで、水を入れて生姜とコリアンダーの根と一緒に初めから弱火。ピリピリ鍋底から音がしてきたら出来上がり。途中で何度も蓋を開けても大丈夫。

按田優子さん「土鍋でカオマンガイ」

ある日、良いことを思いつきました。
これは、BBQに持っていける。炭火の脇にズボッと埋めるだけだ。そしたら火加減はしなくて大丈夫、たまにくるっと向きを変えてみたりみなかったり。飲み物用に持参したハーブやレモン、鉄板やまな板から拝借した野菜や肉を適当に入れれば炊き込みご飯が出来る。
こういう時には、銘々が無責任に味の到達点なんて決めないでどんどん入れたいものを入れて出来上がっちゃった味を楽しむのが楽しい。

とにかく、コップ1杯の米を研いで10分くらい水気を切ったらコップ1杯の水を入れればあとは何でもいい。ガスだろうが炭だろうが同じ。20分くらいで炊けるけど、途中、炭から遠ざけて40分入れていても大丈夫。保温ジャーにもなって便利! これは、もしかしたら容器がもっとあったら炭をぐるっと囲んで炊き込みご飯がたくさん出来るじゃないか!! もともとお土産の容器なんだし、余ったらそのまま持ち帰ればいい。

按田優子さん「土鍋でカオマンガイ」

灰に土鍋を埋め込むのはとても理に適っていると思っていて、ペルーにパチャマンカと呼ばれる郷土料理があります。地面を掘って、豚肉やら芋やらを入れて熱した石を入れて土をかぶせる蒸し焼きで、大地をそのまま調理器具に見立てるのです。

今日はパチャマンカやるか~、みたいな雰囲気の家の前は穴が掘られていて、通行人が、パチャマンカやるのか、ならばちょっと食べさせてくれ、と一日限りの食堂があっという間に出来上がっていました。そんな大がかりなことはそうしょっちゅうはしないので、鍋でもやります。

按田優子さん「土鍋でカオマンガイ」

そんなときには素焼きの土鍋が重宝。調味液に漬け込んだ肉と野菜を好きなだけ入れて弱火で30分くらい蒸し焼きにするだけ。そのまま台所に2日はほったらかし。台所をウロウロしてはつまみ食い。どんな味かというとウコンにアチョーテにチンチョを混ぜた味です(とにかく、今までの味覚体験にないけれどものすごく魂に響く味、という意味です)。

この、素焼きの土鍋というのがミソで、素焼きを使い始めたら手放せなくなりました。水分がしみ込んだり、強度が足りなくて直火は出来ないのかと思いきや、そんな心配はご無用。なにせ、調理したものを2日くらいほったらかしても平気なのです。

按田優子さん「土鍋でカオマンガイ」

それはなぜか。ペルーアンデスを訪れた時、標高4000メートルの町をへとへとになりながら歩いているとお婆さんが作るチチャ(トウモロコシのドブロク)を売っている(というか置いている)ところがあり、水分補給することにしました。
アンデスは、昼と夜の寒暖差が激しくて、昼間は相当な暑さになるのですが、素焼きの壺に入ったチチャはヒンヤリ冷たくて、発酵も行き過ぎていない。気化熱を利用した自然冷却で温度が一定に保てるのですね。

按田優子さん「土鍋でカオマンガイ」

そういうことか!と納得したので、ならば私も豆の入ったモツ煮込みを素焼きの鍋で作ろうじゃないか。そしてほったらかしにしようではないか!と、すっかり素焼きの土鍋が自分の定番に。肉を使った煮込みはこれで、と決めていたけれど、意外にも匂いは移らないので、しまいにはあんこも炊くようになってしまいました。

そして、1日に1回火を入れながら冬なら4日くらいずっとガス台の上に置きっぱなしのまま、食べ続けるのでした。タッパーにしまう手間もなければ鍋を洗うのも1回。家でも外でも使える土鍋は、重ねて収納できるプラスチックの柄のついた鍋より圧倒的に洗練された調理道具。タッパー要らずで逆に省スペース!

【5月の按田餃子】
昨年11月末、二子玉川にオープンした2号店、
慣れるまでは火曜日定休で営業させていただいていましたが、
じわじわ働く仲間が増えまして5月中旬から定休日がなくなります!
火曜日の二子玉川店、すぐに入店できますよー!

PROFILE

按田優子

保存食研究家。菓子・パンの製造、乾物料理店でのメニュー開発などを経て2011年独立。食品加工専門家として、JICAのプロジェクトに参加し、ペルーのアマゾンを訪れること6回。2012年、写真家の鈴木陽介とともに「按田餃子」をオープン。
著書に『たすかる料理』(リトルモア)、『男前ぼうろとシンデレラビスコッティ』(農文協)、『冷蔵庫いらずのレシピ』(ワニブックス)。雑誌での執筆やレシピ提供など多数。

按田優子さん~水餃子屋と「ボンタデカン」のこと

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按田餃子の味を決める衝撃の魚しょうゆと、洗練のお弁当

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