上間常正 @モード

母の日のプレゼント、一番欲しいのは「自由な時間」

 5月12日は「母の日」。母親への感謝の思いをプレゼントなどで示す特別な日だが、では母はどんな贈り物をもらいたいと思っているのか? 三陽商会が実施したアンケートによると、欲しいのは「自由に使える時間」がダントツの1位だったという。現代の母親はとても忙しくて時間が足りないのか、それとも自由が抑圧されているのか、では自由な時間で何がしたいのか、など色々考えさせられて興味深い。

 この調査は今年4月3~8日に、関東エリアの7都県に住む、中学生以下の子と同居している20~40歳代の女性600人を対象にインターネットで実施したもの。「母の日に一番欲しいものは何ですか?」との問いに、「自由に使える時間」(48%)「食事など家族と過ごす時間」(34%)を合わせて、「時間」との答えが81%で、花や手紙などの贈り物を大きく上回った。

 ちなみに、「夫から欲しいものは?」では「時間」がやはり最も多く58%、次いで「感謝の手紙・言葉」(43%)、「現金」(32%)だった。

母の日のプレゼント、一番欲しいのは「自由な時間」

母の日に一番欲しいものは何ですか?

 また、「独身時代に比べて、母親になってから一番足りていないというものは?」への問いでも、「自由に使える時間」が51%、次いで「自由に使えるお金」(32%)、「社会との接点」(11%)の順だった。そして「家事・育児から解放されたいと思った瞬間はありますか?」との問いには、「はい」が71%だった。だが、29%の女性が一瞬もそう思ったことがないのはむしろ意外に思える。

 では、自由な時間をどうしたいのか。「母の日に『自由に使える時間』をプレゼントされたらどう過ごす?」の問いでは、「買い物に行く」(46%)「友達と過ごす・飲みに行く」(44%)「美容院やエステなど自分磨き」(34%)「カフェなどで1人の時間を楽しむ」(33%)「趣味を楽しむ」(29%)「旅行に行く」(23%)「何もしないで過ごす」(23%)の順で、「分からない」(7%)もあった。

母の日のプレゼント、一番欲しいのは「自由な時間」

家事・育児から解放されたいと思った瞬間はありますか?

 自由な時間の使い方への答えは様々だが、その多くは工夫すれば実現できそうな小さな望みのように思える。しかし逆に言えば、母親たちはそんな慎(つつ)ましい思いもかなえられないほど時間に追いまくられている、ということなのかもしれない。このような忙しさというのは母親に限らないのではないだろうか。この調査では対象が専業主婦なのか共働きか明らかではない。

 だが、たとえば労働政策研究・研修機構の調査(2018年)によると、日本でも共働きが約1200万世帯で専業主婦の600万世帯の2倍になっている。1990年代の半ばに逆転してからその差がずっと広がる傾向を示している。母親が働くようになったからというよりも、専業主婦だけではなく父親たちもそして子供たちも含めて、ほとんど全ての人々が働く時間が昔より実はずっと長くなっていて、時間に追いまくられているという現代の生活のあり方を示しているとも言えるだろう。

母の日のプレゼント、一番欲しいのは「自由な時間」

母の日に「自由に使える時間」がプレゼントされたら何に使いたいですか?

 そしてさらに思い浮かぶのは、忙しさの中でこれほど自由な時間を欲しがるのに、それを使ってしたいことがささいなことでしかないこと。と言うよりも、自分は本当に何をしたいのか考えてみる余裕を失ってしまっているということなのだと思う。より忙しく働くことで物質的な豊かさや便利さを得たことはたしかなのだけれど、われわれ現代人はそれよりもっと大きな代償を払ってしまったのではないだろうか。

 三陽商会では「母の日をわたしの日に」とのキャッチフレーズで、5月12日までに東京・神奈川・埼玉・千葉の同商会の婦人服10ブランドの品を展開する百貨店・直営店での買い物客(20000円以上)を対象に、ベビーシッターや家事代行サービス「キッズライン」の3000円分のクーポンをプレゼントしている(先着2500人まで)。

母の日のプレゼント、一番欲しいのは「自由な時間」

写真左:購買対象ブランド「アマカ」、右:購買対象ブランド「トゥー ビー シック」

 この1年以内に母を亡くした人たち(筆者も含めてその多くはもう高齢者世代にさしかかった人たちだろう)にとっては、「母の日」は親の愛やなにか純粋な愛情やそれを基にした生活を省みるいい機会になるだろう。その方が、「令和」で根拠もない明るい気分になるよりもずっと意味があるのだ。

PROFILE

上間常正

ジャーナリスト、ファッション研究者。1972年、東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社。記者生活の後半は学芸部(現・文化くらし報道部)で主にファッションを担当。パリやミラノなどの海外コレクションや東京コレクションのほか、ファッション全般を取材。2007年に朝日新聞社退社、文化学園大学・大学院特任教授(2019年3月まで)としてファッション研究に携わる。現在はフリーの立場で活動を続けている。

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