猫と暮らすニューヨーク

猫好きへ転身した夫妻。マグカップも猫柄

[猫&飼い主のプロフィール]

猫・Miss B(ミス・ビー)4歳 メス 三毛柄の雑種、Choco(チョコ)1歳 メス 黒猫
飼い主・ビジネススクールで教授をしているDaniel Keum(ダニエル・キュム)さんと、コロンビア大学で美術史の博士号取得を目指すJeewon Kim(ジーウォン・キム)さん夫妻。マンハッタンのアッパーウェストサイドにあるアパートメントに暮らす。(写真:前田直子)

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ジーウォンさんが「ミャオ」という鳴き声を聞いたのは、大学のキャンパス内を友人と歩いていた時だった。雨が激しく降るなか、体のサイズがこぶしぐらいの小さな三毛柄の子猫が、芝生の上の大きな葉っぱの下で雨をしのいでいたという。

「猫が鳴くときは、人間に何か伝えたいことがあるはず」。そう思って歩み寄ったジーウォンさんだったけれど、子猫はすぐに逃げて姿を消してしまった。「雨も降っていたし、気温は冬に向かってもっと寒くなる。体もすごく小さかったから、助けてあげなくちゃと思ったんです」

すぐに犬猫保護団体へ連絡をし、猫の捕獲器が設置された。4日後、子猫は無事保護されて、一時預かりボランティアの家庭へ預けられたという。大学構内のButler(バトラー)図書館の前で発見された猫だから、ミス・バトラー。略してミス・ビーと名付けられたその猫を、ジーウォンさんの友人が譲り受けようとしたけれど、すでに飼っていた猫との相性が悪く断念。共に幼少の頃から犬と育ち、猫を飼った経験がなかったダニエルさんとジーウォンさん夫妻が、とりあえず一旦、ミス・ビーを預かることにした。

猫好きへ転身した夫妻。マグカップも猫柄

縁あって、夫妻の家にやってきたミス・ビー。今となって思えば、キャンパス内でジーウォンさんに「ミャオ」と泣いたのも作戦だったのでは……。ギャラリーはこちら

あくまでも“一時的”なはずだったけれど……、いざ一緒に暮らし始めてみたら2人そろって猫にフォーリンラブ。ミス・ビーはあっという間に家族の一員になった。

「犬はいつも飼い主のほうに近寄ってくる。でも猫はそうではなく、もっと独立心があります。だからこそ猫が私のほうへ来てくれるとき、すごくスペシャルな感じがする。猫に選ばれているというか、ごほうびみたいというか……」というジーウォンさんの言葉に、うなずくダニエルさん。

「猫のふるまいは、自発的な行動ですよね。だからスペシャルに思えるんだと思う」。いつも決まって自分のところに来てくれるわけじゃない。そういうツンデレなところも、より特別感を大きくさせる。猫のほうが一枚上手なのである。

二人の猫愛は止まらない。広い部屋に引っ越したこともあって、もう1匹猫を譲り受けることに決めた。不吉だという迷信のせいか、黒猫はなかなかもらい手がいないと聞き、保護施設から黒い子猫を迎えることに。

猫好きへ転身した夫妻。マグカップも猫柄

黒猫といえば、魔女のパートナー。「不吉だというのはただの迷信。私たちの出身国である韓国には、そんな迷信はありません」(ダニエルさん)ギャラリーはこちら

チョコと名づけられたその黒猫は、好奇心旺盛でエネルギッシュ。頭がよくて生意気で、人間を怖がらないミス・ビーとは対照的に、臆病で、まぬけなところもある。迎えた2匹の初対面。遊ぼうとする無邪気なチョコに、ミス・ビーが飛びかかり、2匹の関係は前途多難な様相に。別々の部屋に隔離したり、部屋の中にゲートを設置したりして衝突を回避し、少しずつ慣れさせること約2カ月。同時に、猫の荒ぶる行動を穏やかにする効果があるという猫のフェロモン拡散器「フェリウェイ」を使用したところ、次第に2匹は一緒に遊ぶようになり、良好な関係に。今ではときどき同じ猫ベッドの中で寝ることもあるという。

「猫との暮らしから、たくさんの気づきや学びを得た」という2人。広い家よりも、猫はむしろ狭い場所を好むこと。トイレもスムーズで、散歩もいらない。犬よりもずっと飼うのが楽なこと。「犬は人間のことを家族とか両親みたいに思っていると思うけれど、猫は人間のことをそんなふうには思っていませんよね。一緒に生活する仲間や友だちみたいに思っている」とダニエルさん。

猫好きへ転身した夫妻。マグカップも猫柄

ダニエルさんの仕事机の隣には、豪華なキャットタワー。窓際には、爪とぎ兼用の猫ベッドを置き、幸せすぎる仕事環境

「猫は何かを察知する能力が高いのかも」と話すのはジーウォンさん。ある時、療養中のジーウォンさんがベッドで休んでいたら、2匹がぴったり寄り添って、まるで癒やそうとしてくれるようだった。「そうそう、猫のトイレはバスルームにあるはずなのに、猫砂が家のいたるところで発見されるというのも、猫を飼ってから気づいたこと」と笑うジーウォンさん。「びっくりするような場所にあるんです。窓辺だったり、ダイニングテーブルの上だったり!(笑)」

そうした猫の些細(ささい)な行動やユニークなエピソードをうれしそうに話す夫妻は、今や無類の猫好き。友人と猫の写真や動画を頻繁に交換し合い、食卓で2人が使うマグカップだって猫の柄になったほど。まさに猫の思う壺(つぼ)。こうして猫派は、着々とその勢力を拡大しつつあるのである。

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ダニエルさんのインスタグラム https://www.instagram.com/daniel.keum/
ジーウォンさんのインスタグラム https://www.instagram.com/jeewonee/

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連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

《INFORMATION》
『ニューヨーク おいしいものだけ! 朝・昼・夜 食べ歩きガイド』刊行を記念して、NYの食にまつわるモノを集めた、“おいしい”ポップアップイベントを開催!

猫好きへ転身した夫妻。マグカップも猫柄

ニューヨーカー御用達の朝ごはん、夜は大行列な店の穴場ランチ、記憶に残るスイーツ、アメリカンサイズの絶品ステーキ、メキシコ・中東・アジアなど目移りする世界の味、気分のいいバー、助かるTo Goと深夜営業の店、食いしん坊のおみやげまで……。

ニューヨーク・ブルックリンに暮らす編集・ライターの仁平綾が、NYの街を縦横無尽に食べ歩き、“おいしいものだけ”を選りすぐって1冊の本にまとめた『ニューヨーク おいしいものだけ! 朝・昼・夜 食べ歩きガイド』(1800円+税)が、5月11日に筑摩書房より発売されました。

刊行を記念して、5月1日~6月17日まで、NYの食にまつわるモノを集めた、“おいしい”ポップアップイベントを日本各地で開催します。

詳細はインスタグラムにて @nipeko55

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PROFILE

前田直子

写真家 24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
www.naokomaeda.net

PROFILE

仁平綾

編集者・ライター
ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌やウェブ等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、『ニューヨークおいしいものだけ! 朝・昼・夜 食べ歩きガイド』(筑摩書房)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。

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どんな猫も手なずける、元キャットシッター夫婦

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