野村友里×UA 暮らしの音

UAさん「大事なのは、足るを知ること」

「eatrip」を主宰する料理人の野村友里さんと、現在カナダで暮らしている歌手UAさんの往復書簡「暮らしの音」。今回は、令和という新しい時代を迎えたいま、何を思うのか、お二人がつづります。

UAさん「大事なのは、足るを知ること」

開幕前日の友里

>>野村友里さんの手紙から続く

友里っこ

今回も一考に値する問いかけをありがとう。それにまた随分と、うーこをねぎらってくれて、照れくさいけど嬉しかった。 でもさ、それって多分、友達として当たり前なことしただけなのよ。楽しいんだもん、友里と居ると。

ところで友里は今日も銀座に出向いてるのかしら?  ちょうど、4月の銀座ソニーパークでの『#007 eatrip city creatures』オープニングに参加できたのは、まったく幸運だったと思い返しているところ。

UAさん「大事なのは、足るを知ること」

銀座ソニーパーク

同じく友里がプロデュースした2017年の『食の鼓動』では、話の通じる大人の文化祭的な 「粋」のなかに、私らしくたゆたわせてもらえた。そんな、水を得た魚みたいな感触とは裏腹に、今回のイベントの幕開けに「歌」を表すことは、無防備な自分の容量を試されるような体験だったなって。

特に、ハナレグミ永積タカシ君とのデュオセットは初のことで、馴染みのコーヒーショップで夜な夜な練習して、互いの曲をカヴァーし合ったりしているうちに、すっかりファンになってしまったのは隠せないにしても、自分の「歌」のタンスの引き出しを、一掃してるような感覚がして。

UAさん「大事なのは、足るを知ること」

永積タカシくんとDuo(PHOTO BY 最上裕美子)

さらには互いの声を重ねるうちに、まるで自分の歌が洗われるようにも感じたのね。百戦錬磨して自ずと的に弓が当たるように、様々な状況の中で、臨機応変、というのでもなく、 反射的にベストな響きを選んでる、そんなライブ感に、見習うことが強くありました、ハイ。
そうしてこれは平成最後の東京の思い出。
新時代令和は来たり。

ちなみにまるで余談だけど、しばらく玲和だと勘違いしていた私、、。遥か太平洋を超えて、16時間遅れて時代も変わった、ここカナダの離島に住まう日本人、インターネットで見つけた新時代の2文字に違和感はまるで感じなかったものの、しばらく勝手に間違えたまま、いいねとか言っちゃって、苦笑。

もちろんこんな話は、こちらで会話に出したところで返しどころか理解も期待できないのだけど、これは、紛れもなく日本人特有の勘違い?だよね。(つーか日本人でも居ないしっ!のツッコミが聞こえます)

大体、元号制度が日本にしか残ってないというのが、稀有すぎて、それだけで十分「ずっと残していきましょう!」と思えちゃう。右だ左だと歴史的背景を考察するが故の論議は当然あるだろうけど、正直なところ、もうどうでもいい。 だって、昭和に生まれ、平成に、ある意味翻弄され、熟年期に令和を迎えるなんて、何だか贅沢で、何よりドラマチック。それぞれの時代の、独特の色感ある記憶に、五感までが複雑に反応する。

UAさん「大事なのは、足るを知ること」

雌鶏さんたち、ちと場所違い。。

改めて自分は、元号を通じて歴史や文化を共有する「日本人」なのね、と実感したり。
そんなうーこは、昭和に血肉と精神が育まれ、物心つかぬ17歳で平成へと時は移る。

そして、阪神大震災、地下鉄サリン事件の起きた平成7年に歌手としてデビューした。9年には長男を産んだ。時同じく、宮崎映画『もののけ姫』が公開され、神戸で児童連続殺害事件が起きた。これらに強くインスパイアされ、同年リリースしたのが『悲しみジョニー』だった。すこぶる 昭和歌謡的なタイトルを持つその歌は、言葉を変えれば、母なる大地とのへその緒の記憶さえ社会の歪みに抹消されてしまった青年の不仕合せさへのレクイエムとでも言おうか。

比較的それまでは、「されどポジティヴ!」な楽曲をリリースしてきた自分が、お産を経験し真っさらな命が現れるのを目撃したその目で世の中を見たら、否応なくそんなブルースを歌いたくなったんだな。

そうして今日、「平成は疲れていた」と始まる、折坂悠太くんの歌に、うなずいている。平成という時代は、月並みで少しズルい言い方なのはわかっているけど、やっぱりカオスだった。ただ、そのカオスな状況に対して率直に言及できることが、お茶の間レベルになったようにも思える。その理由にはメディアの形態が大きく変わって、暴露されていくことに慣れていったことは大きい。

そして希望的観測も挟みつつ、多分、そのカオティックに映る世界には表も裏もないということを知ったのじゃないか。

例えば、こちらが昼ならあちらは夜だという現実を論理的にはわかっていても、自分が身を以て体験することはできないように、歴然とした事実とその実際の不確かさを計りながら、でもつまり地球はひとつまあるく地続きで、結局のところ真実は全て繋がり、表も裏もなくひとつである、と。

されど問題は、情報として他者を見ると、よくわかる氣がするのに、自分はと言うと、情報が交錯するほど、知れば知るほど、よくわからなくなる点かしら、なんて。 脳もまた、大雑把に言えば丸いのに、何と認識に至れない宇宙であるか。

そこでその「世の中でいう、仕事ができるってなに? 頭がいいってどういうこと?」 についてなんだけど、言わずもがな、ほとんどの世間では資本主義における能力を指すでしょうが、友里が言うのは心で感じるそれだよね?

UAさん「大事なのは、足るを知ること」

あーあ。

そう言えば、先月、うっかり出遅れてフェリー乗り場で3時間近く待つことになってしまったことがあってね、偶然すぐ後ろに知り合いの日本人夫婦がいらして、「まあちょっと読んで見てよ」とお薦めしてくれただけのはずが、結局車内に置き忘れてくださった本が、とっても面白くてね。 宗教評論家のひろさちやさんの『狂いのすすめ』という本なのだけど、その前半を抜粋して勝手にまとめると、

一握りの者(←これまさに身を以て体験することはない)以外の全員は、まずは自分が弱者だと自覚した上で、人生が囚われてしまうような無駄な目的意識は持たず、知らず知らず世間や常識の奴隷にならないように、この狂ってしまった世の中において、「狂者の自覚」を持ちなさい、とあるの。

要するに、「狂ってしまった社会」が考えるような、まともな人間になると、世間の奴隷になってしまうよ、というわけ。 そもそも社会が理想とするような目的に達したからと言って、人として生まれてきた根源的な孤独は解消されはしない。だからこそ「孤独に生きる」のではなく、能動的に自覚して、「孤独を生きる」ことをしようと。これソローも然りね。
華やかな成功例ばかり、または非情な事件ばかりを、無数に羅列して眺められる、有史以来最大の情報社会で、結局のところ大事なのは「足るを知る」と言うことよね。

総理曰く、令和が目指すのは、国民それぞれが、それぞれらしく花を咲かせられるような時代でありたいと。梅の花が例えられてはいるけど、なにも花こそは梅に限らず、大輪の蓮から、人の手塩にかけられた薔薇、たんぽぽのような目立つ野花もあれば、森の中人知れず咲いては散る小花まで。まして蕾のまま開かなくとも、根は刈られ花器の中で咲こうとも、花は花として生まれて枯れる。

それなら人はどうだろう、華やかな成功の道を闊歩する、唯我独尊、奇人変人として抜け道を忍んで行こうと、死ぬ時は皆同じ、誰もが一人きりで旅立つ。

噴火する情報を仰ぎ見ながら、今この路地で、水と空気と少しの土があれば、あとはそれなりに、 風と鳥のさえずりに揺られ、ご機嫌に咲いては、還りましょう。例えばこんな風な、むしろ言葉にせずとも、そんな気配を感じられるような人物に、知性を感じていますが、どうだろう。

そして仕事の方はやっぱり「work」ばかりでなく「play」できるようであれば、健やかで本望。あわせて人生も。

ラララララ。

うーこ

PROFILE

  • UA

    1972年大阪生まれ。母方の故郷は奄美大島。1995年デビュー。1996年発表のシングル「情熱」が大ヒット。2000年、ブランキー・ジェット・シティを解散した浅井健一とAJICOを結成。同年、初主演映画「水の女」(テサロニキ国際映画祭グランプリ受賞作品)公開。2003年から放送されたNHK教育テレビ番組「ドレミノテレビ」に、歌のおねえさん「ううあ」としてレギュラー出演。2004年、数々の童謡・愛唱歌を集めた、ううあ名義アルバム「うたううあ」をリリース。2006年、菊地成孔とスタンダードジャズアルバム「cure jazz」をリリース。2010年、デビュー15周年企画カバーアルバム「KABA」をリリース。2016年、7年ぶりとなるオリジナルアルバム「JaPo(ヤポ)」をリリースした。また、2005年より都会を離れ、田舎で農的暮らしを実践中。現在はカナダに居住。4人の母でもある。α-STATION(FM京都)の番組「FLAG RADIO」にレギュラー出演中。

  • 野村友里

    料理人(りょうりびと)、「eatrip」を主宰。おもてなし教室を開く、母・野村紘子さんの影響を受けて料理の道に。主な活動に、レセプションパーティーなどのケータリングフードの演出、料理教室、雑誌の連載、ラジオ番組など。2009年、初の監督作品『eatrip』を公開。11年、「シェ・パニース」のシェフたちとともに、参加型の食とアートのイベント「OPEN harvest」を開催。その経験を経て日本のシェフたちとともに「nomadic kitchen」プロジェクトをスタート。12年、東京・原宿に「restaurant eatrip」をオープン。著書に『eatlip gift』『春夏秋冬 おいしい手帖』(マガジンハウス)、『Tokyo Eatrip』(講談社)、共著に『TASTY OF LIFE』(青幻舎)がある。
    http://www.babajiji.com/

新しい時代の幕開けに思う、料理という生業のこと 野村友里さん

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