野村友里×UA 暮らしの音

野村友里×UA 「本質」とは何か? 深く共鳴し合う2人の対話(後編)

野村友里×UA 「本質」とは何か? 深く共鳴し合う2人の対話(後編)

UAさん(左)と野村友里さん(撮影・山田秀隆)

料理人・野村友里さんと歌手のUAさんの往復書簡『暮らしの音〜海の向こう側とこちら側〜』。手紙を通して、東京とカナダでのそれぞれの暮らしを通しての気づきや想いを交換している2人が、銀座「Ginza Sony Park」で開催中の「eatrip city creatures」の会場で再び語り合います。(文・川口美保)

前編からつづく)

理屈抜きで楽しめるもの、食と音楽の力

野村 前回の「食の鼓動」で一番よかったなと思ったのは、大人だけでなく、子どもたちもちゃんと感じてくれたことかな。最終日、ステージのテントの中にどんどん子どもが入ってきたの。友人の子がずっと私の横にいて、料理しているのを見ていた。熊谷和徳さんがタップのパフォーマンスをしている時だったから、「今、いいところだからあっちを見てきたら?」と言ったら、「ここが一番面白い」って言うの。

なのに、家に帰ったら、ずっとタップを踏んでいたんだって。お母さんが「あなた全然ステージは見てなかったじゃない?」と言うと、「マミー、目は前にあるだけだとは思わないで」と言われた、と。子どもはちゃんと全部を捉えていたわけ。大人も子どもも、本当に楽しいと感じるのは、頭でじゃないんだなと思った。そういう意味では、食とか音楽というのは、理屈抜きで楽しめるいいツールだなとあらためて思った。

――五感が刺激されていくから、観ている方もどんどんプリミティブになっていく感じがしました。

野村 これからは「はじめ人間ギャートルズ」じゃないけど、そういう時代がいいのかも。美しいものの定義っていろいろあるけれど、私が思う美しさはそこにあって、私が美しいなと思うアウトプットの表現者が集まると、波動が合うのよね。

UA これまでUAとしていろんなところで歌わせてもらってきたけれど、あんなに童心に返った、というと言い過ぎだけど、ただただ、自分でいいんだ!って感じで、しっぽりそこでたゆたわせてもらったのは久しぶりだったかもしれない。本当に終わるのが寂しかったもの。

――3日間でステージは変わっていきました?

野村 3日間とも全然違った。でもうーこはひとつ扉を開けたよね。そうするとメンバーも触発されてどんどん開くから、それが面白かった。

UA ライブ中にうちの子が「ママ!」と呼んでくれたりしてね。ともかく、言葉がなくても分かり合えるメンバーだったから、本当に楽しかった。

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「水」がテーマとなった「eatrip city creatures」

――今回の「eatrip city creatures」も、「食の鼓動」からのつながりがあるかと思いますが、どういう話で進んでいったのですか?

野村 最初は、ここでマーケットをやってほしいという話だったんだけど、何かできることあるのかなと思って話に行ったら、銀座の下に地下水が流れていると聞いて、「え、資源が?」と思って、そこからイメージを膨らませていったの。銀座の真ん中に水が流れていることを素敵なふうに持っていけたらいいなと思った。

映画『eatrip』をつくった時も、みんな、水のそばに住みたいと言っていたことも思い出したりして、たとえば、銀座の打ち水は地下水です、としてもいいだろうし、50年後、その地下水を使って、地下に畑ができてもいいかもしれないし。イベント自体がそういう「語れる場」になったらいいなと思った。それであれば、この場所でイベントをやる意味があるなって。

野村友里×UA 「本質」とは何か? 深く共鳴し合う2人の対話(後編)

「eatrip city creatures」の模様。銀座の地下水を使い、その水の波動を介して、来園者の声や音を聞かせながら植物や花を育てる水畑が出現(©Ginza Sony Park)

――実際に、会場内には、銀座の地下水を使って、植物や花が育つ水畑が出現していますね。これはどういうところから発想を得たのですか?

野村 自然が少ない都会で栄養素となるものは何かなと考えた時、都会には人間が多いから、人が栄養素となって、人と水で何ができないかな?と思った。半分ファンタジーだけど、人の想いをエネルギーに交換できて、それを食べて育つ植物があったら面白いな、と。

――会場内には植物の根っこも象徴的に展示されていますね。

野村 地下の中は見えないけれど、本来、土の中は植物の根っこが支えている。だから、みんなが蓋をするようなところに焦点を絞って、根っこをいっぱい見せようと思ったの。

野村友里×UA 「本質」とは何か? 深く共鳴し合う2人の対話(後編)

eatripが選んだ日本各地のおいしいものを週替わりで販売(©Ginza Sony Park)

――オープニングライブでは、「食の鼓動」から続くように、食と音楽というところで、UAさんとハナレグミの永積タカシさんとともにライブを行いましたが、2人が持つ声の魅力が重なり、響き、本当に、様々な感情を揺さぶられました。

野村友里×UA 「本質」とは何か? 深く共鳴し合う2人の対話(後編)

オープニングライブに、UAさんとハナレグミ 永積タカシさんが出演(撮影:最上裕美子)

野村 人の声ってすごいなと思うの。その人の生き様も全部出るし、嘘つけないし、「声」を感じてほしいなと思ったんだよね。声は、食で言えば、素材でしょ。調理される前の素材。だんだん楽器が入って音楽になると、流行の料理や味付けにできるけど、その素材としての声を聴いてほしいと思って。その時に、やっぱり、「声」がいいなと思った。

UA  永積くんとは初めてのデュオだったのだけど、本当に、「声」、だよね。

野村 きっと、「声っていいな」って、シンプルに思ってもらえたと思うんだよね。

今、この時をまっとうする

――そもそも、野村さんは銀座という場所には思い入れはあったのですか?

野村 特にはなかったのだけど、イベントをやるにあたって、昔ここはどういうところだったかというのはいろいろ考えたかな。150年くらい前は、銀座から皇居までは土地があったけれど、築地は海だったわけでしょ。そうやって考えると、100年経てば、新しい陸地はできるし、戻すこともできるし、これからどういうふうに持っていきたいのかを、過去から見ていくことは大事だと思った。

銀座が江戸から明治になった時にどういう想いでつくられた町なのか?とかね。たとえば、日本中に「なんとか銀座」って商店街がいくつもあるじゃない? それは、銀座が憧れの町だったからだと思うのだけど、そう考えると、今、この町づくりがうまくいけば、全国に広がる可能性もあるということだから。

土地の記憶や歴史を探ると、今なぜこうなっていて、今後どうしたいのか、ということにまで繋がる。それが自分たちの世代では実現できなくても、2、3世代すれば形になる可能性があると考えると面白いなと思ったの。

――それが、今、銀座で、ということにつながったのですね。

野村 「今、その時、その場所でしかできないことをやる」というのが、私にとってはとても大事で。少し話がズレるかもしれないけれど、先日、近しい友人が突然亡くなったの。「好きなことしかしたくないよね」っていうのが、その人との最後の会話。人はいつ死ぬかわからない。それを考えると、やりたいと思うことがあるなら、そこにつながるようなことをした方がいいなと思ったし、実現するのにたとえ100年かかっても、その一歩になるなら、今からやっておいた方がいいなと強く思った。

UA そういう死を目の前にした時に、ただただ、自分の中でそれをどう捉えるかだよね。その人は亡くなったけれど、肉体を持たないでサポートしてくれることもあるからね。私が生まれて2週間で亡くなった父のことを、当然私は覚えてない。だけどある時、父は肉体を持たず私をサポートしてくれていたんだと感じたことがあったの。

30代半ばの頃、ものすごく大事だったツアーがあって。最終日が渋谷公会堂だったんだけど、前から5列目のど真ん中が空いてるのよ、誰も座ってなくて。そこにお父さんがいる、としか思えなくて、本当に、ずっと助けてくれていたんだなと思ったな。

――そういえば、UAさんは往復書簡の中でこう書いていましたね。「自然に死ねるように生きたい」と。

UA うん、そうだね。自分に与えられた命をまっとうしたいと思ってる。

――そのために、今、どう生きるか。

UA 気が落ちちゃうようなニュースがたくさん伝えられているけれど、例えばちょっと田舎に行けば、いつものように畑に出て、いつものようにご飯を食べて、いつものように眠ったら、朝死んでいた、という、命のサイズをまっとうしている人がいっぱいいると思うのね。私はそっちを目指したい。そのために、何を選べるか、とつねに思ってる。子どもにも、毎日のように、ことあるごとに言っているの。本当にはまだわかっていないと思うけれど、そのことは、続けて言っていきたいなと思う。

eatrip city creaturesは5月24日まで。詳細はこちら

川口美保(かわぐち・みほ)編集者/ライター。1995年より雑誌「SWITCH」の編集者として、数多くの特集を手がける。2014年3月沖縄へ移住。現在は、沖縄を拠点としながら、企画、編集、インタビュー、執筆を続ける。また、2015年には飲食店「CONTE(コント)」をオープン。現在、新雑誌創刊に向けて準備中。http://contemagazine.com

PROFILE

  • UA

    1972年大阪生まれ。母方の故郷は奄美大島。1995年デビュー。1996年発表のシングル「情熱」が大ヒット。2000年、ブランキー・ジェット・シティを解散した浅井健一とAJICOを結成。同年、初主演映画「水の女」(テサロニキ国際映画祭グランプリ受賞作品)公開。2003年から放送されたNHK教育テレビ番組「ドレミノテレビ」に、歌のおねえさん「ううあ」としてレギュラー出演。2004年、数々の童謡・愛唱歌を集めた、ううあ名義アルバム「うたううあ」をリリース。2006年、菊地成孔とスタンダードジャズアルバム「cure jazz」をリリース。2010年、デビュー15周年企画カバーアルバム「KABA」をリリース。2016年、7年ぶりとなるオリジナルアルバム「JaPo(ヤポ)」をリリースした。また、2005年より都会を離れ、田舎で農的暮らしを実践中。現在はカナダに居住。4人の母でもある。α-STATION(FM京都)の番組「FLAG RADIO」にレギュラー出演中。

  • 野村友里

    料理人(りょうりびと)、「eatrip」を主宰。おもてなし教室を開く、母・野村紘子さんの影響を受けて料理の道に。主な活動に、レセプションパーティーなどのケータリングフードの演出、料理教室、雑誌の連載、ラジオ番組など。2009年、初の監督作品『eatrip』を公開。11年、「シェ・パニース」のシェフたちとともに、参加型の食とアートのイベント「OPEN harvest」を開催。その経験を経て日本のシェフたちとともに「nomadic kitchen」プロジェクトをスタート。12年、東京・原宿に「restaurant eatrip」をオープン。著書に『eatlip gift』『春夏秋冬 おいしい手帖』(マガジンハウス)、『Tokyo Eatrip』(講談社)、共著に『TASTY OF LIFE』(青幻舎)がある。

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野村友里さん「不安のドキドキ、トキメキのドキドキ」

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