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身近になってきたムスリムをもっと知ろう『となりのイスラム』

身近になってきたムスリムをもっと知ろう『となりのイスラム』

撮影・猪俣博史

東南アジアのシンガポール、マレーシア、タイ等に駐在して現地で生活をしてみると、宗教がいかに身近で生活に溶け込んでいるか、いや応なく感じさせられる日々でした。

特にシンガポール、マレーシアでは4大宗教ともいわれるキリスト教、仏教、ヒンドゥー教そしてイスラム教が混在していて、それぞれの宗教を理解しないと日常にも差しさわりのある生活。赴任早々に戒められたのは、まず以下の三つでした。

1.イスラム教では未婚の女性と1対1になることや体に触れる行為は、スタッフであっても宗教上、許されないので、肩や手でも決して気安く触らないこと。
(「相手の手を握ったら結婚しなくてはいけなくなるぞ」と、やや冗談気味に脅かされたものです。現に夕食後に危ないからと女性スタッフを1人で送っていったら、父親に見られて「男女カップルで夜道を歩くとは!」と怒鳴りまくられた者もいたそうです)

2.食事に行くときは、食べられないものを確認してから行き先を決め、相手の宗教を尊重して無理強いをしないこと。
(スタッフがそろうと何を食べようと話し合いますが、色々な宗徒がいるので、ヒンズー教の牛肉、各宗教のベジタリアン、イスラム教の豚肉と関連食品などを避けると、鶏肉料理か精進料理になるのが常でした)

3.宗教の話はしてもいいが、悪い冗談は言わないように。
(間違って豚肉を食べたイスラム教徒が「おいしい」とびっくりしたそうだ……という話をしたら、「他の人に聞かれたら大ごとになるからやめなさい」と真剣に怒られました)

特に日本ではなじみのないイスラム教は、ムスリム、回教、清真とも呼ばれますが、私も昔は別の宗教だと思っていました。「厳しい、難しい、怖い」など理解しがたい宗教のように言われることがありますが、世界の3人に1人がイスラム教といわれる現在では、知らないでは済まされなくなってきています。
アジアでもインドネシアは世界最多の6億人のイスラム人口を誇り、マレーシア、ブルネイ、中国西域など、どの国にも多くのイスラム教圏が広がっていて、しかも生活そのものの宗教ですので、旅行する上でも基本を知らないと、戸惑うことばかりです。

身近になってきたムスリムをもっと知ろう『となりのイスラム』

『となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代』内藤正典著 ミシマ社刊 1728円(税込)

イスラムを理解しようと思ったら、優しく具体的に解説してくれる入門書『となりのイスラム』を読んでみてください。教義の話も解説程度はありますが、現在の情勢を踏まえて「*イスラム世界と西欧世界の違いは?」「 *イスラム教徒とはどんな人?」「 *ハラールって何?」「*断食月(ラマダン)にすること、してはいけないことって?」等々、日本人が気になる疑問に分かりやすく答えてくれます。

セックスはどのようにしていいのか、お酒は飲めないのかなんてちょっと「下世話(げせわ)」な話もまじめに解説してくれますし、一方で深刻な世界の問題となっている「イスラム国」はイスラム世界から生まれた「病(やまい)」だと断罪していて、お互いの違いを知っていかにすれば戦争が起きないで済むか、我々のできることを提示してもいます。
イスラムだから、キリスト教だから、仏教だからと宗教の違いでいがみ合うのではなく、各宗教の本質を理解してお互いを尊重すればもっと良い世界が生まれるでしょう。 

でもそんな高尚な話はしたくないといわれる「あなた」! 観光旅行でもその国の習慣は宗教の裏づけがあることを知れば、もっと楽しめますよ。難しく考えず相手を理解する方法として、この本を手に取ってみてください。

(文・重野 功)

PROFILE

蔦屋書店 コンシェルジュ

12人のブックコンシェルジュの皆さんに、
そのとき、一番おすすめの本を週替わりで熱くご紹介いただいています。
●代官山 蔦屋書店
間室道子(文学)
●二子玉川 蔦屋家電
岩佐さかえ(健康 美容)/大川 愛(食)/北田博允(文学)
嵯峨山 瑛(建築 インテリア)/中田達大(ワークスタイル)/松本泰尭(人文)
●湘南 蔦屋書店
川村啓子(児童書 自然科学)/重野 功(旅行)/羽根志美(アウトドア)
八木寧子(人文)/若杉真里奈(雑誌 ファッション)

重野 功(旅行コンシェルジュ)

2014年12月オープン時より、湘南蔦屋書店に旅行コンシェルジュとして勤務。旅の企画・販売、海外駐在、添乗員、海外ホテルの窓口、在日政府観光局、JICAシニアボランティアなど観光を支える「作る側」を経ると共に、アジア・南太平洋を中心に40カ国以上「旅する側」を実践する旅大好き人間。

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