Woman’s Talk

「私の役割は『楽しく食卓を囲む時間への貢献』です」タサン志麻さん(料理人)

「私の役割は『楽しく食卓を囲む時間への貢献』です」タサン志麻さん(料理人)

各家庭の台所に出向いて料理を作るのが志麻さんの仕事。滞在時間は片付けも含めて3時間。冷蔵庫にある食材で1週間分の作り置きをする。その早業と味はまるでマジック! 今、もっとも注目を集める料理人・志麻さんに7つの質問。

Q1 厨房から台所へ、新たなステージへ飛び出して4年。今、感じることは?

フランス料理が好きで、料理の腕を磨きたくて15年以上、厨房でキャリアを積んできました。一流の師匠や同僚に囲まれて料理の腕を磨くのはとてもやりがいがありましたが、「私が求めるのは料理だけでなく、フランス人が大切にしている豊かな食卓文化。もっと私にできることがあるかもしれない」という思いをずっと抱えていました。

シェフの道を捨てて、新しいことを始めることには、正直、不安がありました。それまでずっと厳しい世界で闘ってきたのに途中で降りるのは“負け”なのかな、と思い悩んだり、周囲からの期待に揺れ動いたり。

でも、勇気を出して飛び出してみると、パーッと新しい世界が開けて、本当にやりたかったことをグッと引き寄せることができました。あの時、自分の気持ちに正直に決断してよかったと、心から思います。

Q2 志麻さんにとって“料理の楽しみ”とは?

料理人として一番の幸せは、「相手のことを思って、食事を提供できること」。家政婦としていろいろなご家庭のキッチンに立ち、家族構成、その日の体調や好み、素材の揃い具合によって、献立や味付けを考えて料理を作る仕事はとても楽しく、心が満たされます。シェフと家政婦、肩書きはまったく違うけれど、私の役割は「家族で楽しく食卓を囲む時間への貢献」。これはずっと変わりません。

そして、“相手のために作る喜び”を最初に気づかせてくれたのは、日本で知り合い結婚した夫でした。子どもができてからは、「野菜もたくさん食べてほしい」と願う親心を、本当に理解できるようになったと思います。

Q3 休みの過ごし方は?

家族とゆっくり過ごします。「たまの休みには、一人で映画やエステを堪能したい」というのもいいけど、私は断然、家族派です。せわしなく出かけるよりも、ただ家で過ごして、家族と一緒にご飯を食べる。それだけで幸せだし、豊かだと感じます。この価値観は、フランスの文化から影響を受けました。

Q4 料理以外で好きな家事は?

洗濯! 晴れた日にベランダに出て洗濯物を干す時間が気に入っています。お掃除も嫌いではないけれど、ものすごく得意とは言えません(笑)。

Q5 憧れの女性像は?

自分の意見をきちんと持って、物怖じせずに伝えられる人。そして、相手の意見に対しても聞く耳を持ち、尊重できる人。フランス人から学びたいと思うのは、そんな成熟したコミュニケーションを楽しめるところ。私にフランス語を教えてくださった2人の先生も、「私は私」と凛としつつ柔らかさも備える、素敵な女性たち。

フランス人の夫も会話を大事にするタイプ。たまにケンカして私がプイッとむくれると「ちゃんと話さないとダメだ」と怒られます(笑)。1歳9カ月になる息子に対しても、一個人として尊重する方針で子育てをしています。

Q6 10年後の志麻さん、どうなっている?

これまでそうだったように、後先考えず行動しているんだろうな、と思います。でも、根本はきっと変わらず、フランス料理を通して食卓を豊かにする文化を伝えたり、形にしたりする仕事を楽しんでいるのではないでしょうか。

Q7 最後の晩餐に作りたい一皿は?

「今一番何が食べたい?」と家族に聞いて、その時のリクエストに応える一皿を作りたいです。

たさん・しま

 
1979年山口県生まれ。大阪あべの・辻調理師専門学校、同グループ・フランス校を卒業後、ミシュランの三つ星レストラン「ジョルジュ・ブラン」で研修生として厨房に立つ。帰国後、有名店で15年キャリアを積み、2015年よりフリーランスの家政婦として活動を開始。「予約が取れない“伝説の家政婦”」として評判に。近著に『厨房から台所へ──志麻さんの思い出レシピ31』など。
http://shima.themedia.jp/

インタビュー後記

つなぐ人。そんな言葉がふと浮かんだ。厨房と台所、日本とフランス。二つの世界を行き来して、料理の価値をどこまでも広げていく。取材した日は、第2子出産前の臨月でほぼ仕事納めというタイミング。「できるだけ早く復帰して台所に立ちたい」と気負いなく微笑む。誰かに作る楽しみが大好物な、根っからの料理人だ。

(撮影:宮本直孝/取材・文:宮本恵理子)

■この記事は、2019年4月11日付朝日新聞朝刊「ボンマルシェ」特集のコーナーの転載です。

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