パリの外国ごはん

《パリの外国ごはん そのあとで。》ポルトガルのバカリャウでライスグラタンとジャガイモ卵炒め「Don Antonia」

《パリの外国ごはん そのあとで。》ポルトガルのバカリャウでライスグラタンとジャガイモ卵炒め「Don Antonia」

室田さんの「バカリャウ・アブラーシュ」。レシピは後半に(写真・室田万央里)

パリ在住のフードライター・川村明子さんと、料理人の室田万央里さんが気になるレストランを食べ歩く連載「パリの外国ごはん」。訪れたお店の「あの一品」を再現する「パリの外国ごはん そのあとで。」第3回は、前回の「Don Antonia」のバカリャウ(塩漬け干し鱈〈だら〉)を、2人でそれぞれアレンジしたお話です。確かに日本で作るなら、川村さんのようにタラ科の魚を買ってきて、ひと晩塩漬けするのがいいかもしれません……!
    ◇
私はホワイトソースが大好きだ。自分で、最も安定しておいしく作れるものだとも思っている。ホワイトソースに劣らず、生クリームも大好物。子供の頃から、グラタンもドリアも大好きだった。

前回ご紹介した「Don Antonia」でランチをしたときに、どうにも腑(ふ)に落ちないものがあった。ブランダード(干し鱈とジャガイモのグラタン)だ。全体的にペトッしているけれど、ジャガイモと生クリームだけでは、あぁはならないよなぁ……と、その後もずっと頭にひっかかったままで、もう1回食べないことにはわからないと思った。

そうして買いに行ったら、なんとその日はブランダードがなかった。ショーケースに並ぶ干し鱈料理のひとつは前回食べた、細かく切ったジャガイモと鱈を合わせたピラフのような印象を持つ総菜。もうひとつ、グラタン皿に入って表面には焼き目もある、一見ブランダードに見えたものは、パンと鱈のグラタンという。二つとも買って帰ることにした。

《パリの外国ごはん そのあとで。》ポルトガルのバカリャウでライスグラタンとジャガイモ卵炒め「Don Antonia」

写真・川村明子

帰って早速食べてみると、パンと鱈のグラタンにはクリームっぽい要素がない。イタリア料理で、硬くなったパンを、水でふやかしてからサラダに加える料理があるけれど、パンの食感はちょうどそれに似ていた。少し唐突にも思えたパンと鱈の組み合わせは、にんじんもたくさん加えられていたとはいえ、なんの違和感もない。これはきっとごはんでも合うな。そう思って作ってみることにした。

干し鱈の代わりに、まずはタラ科のメルランという魚を買ってきて塩をまぶし、一晩寝かせることにした。ニンニクだと味が強くなるし食べるときを選ぶことになるから、葉をつけたままの新ニンニクを買い、葉を少し刻んで入れることにしよう。レモンもあった方が良いかな、と頭の中で味のシミュレーションをして、そうだスイバ(酸い葉)を加えよう!と思いついた。生クリームも牛乳も家に買い置きがあるし、どちらを使うにしても準備万端。

実は、これまでに私はブランダードを作ったことがなかった。私のイメージしていたブランダードはあちこちで食べた味の集大成である。

“作る前にちょっとレシピを見てみよう”。そう思い検索して、びっくりした。あのペトっとした質感の正体は、オリーブオイルだとわかったからだ。ゆでたジャガイモをつぶし、そこに塩抜きした干し鱈を崩して加え、それこそマヨネーズを作るかのように少しずつオイルを加えながらピュレ状にしていく。それをオーブンで焼き目がつくまで焼いたもの。レシピによっては、牛乳を加えるものもあったけれど、いずれにしてもクリームが主体の料理ではないのだ。
考えてみたら当たり前だ。ブランダードは南仏の料理だ。乳製品の地方の料理ではない。なんでそこに気づかなかったのだろう? いやぁ驚いた。

なんだか楽しくなって、試しにやってみるか、と冷やごはんに、刻んだ新ニンニクの葉とさっと湯通しした鱈を崩して加え、ゆでたジャガイモも少し入れてみることにした。オリーブオイルをまわしかけ、混ぜ合わせていくも、パラパラしている。結構な量を加えてもふんわりした感じがしない。それで牛乳を少し加えた。それと、マヨネーズを作って余っていた卵白も。最後にざくざくと大雑把に切ったスイバも足して、コショウをふり、210度のオーブンで焼くこと20分。

《パリの外国ごはん そのあとで。》ポルトガルのバカリャウでライスグラタンとジャガイモ卵炒め「Don Antonia」

写真・川村明子

優しい味のライスグラタンができあがった。オイルであえたことでごはんがふんわり、しっとりしている。卵白を加えたのも功を奏したのかもしれない。カリッと香ばしさもあり、たまに酸味をのぞかせるスイバも入れて正解だった。他の魚介でもおいしいかなぁと想像したけれど、これより重くなりそうな気がする。見た目はとっても地味だけれど、少しぼやけた味もポルトガルっぽくて、大いに満足した。

(文・川村明子)

室田さんのレシピ「バカリャウ・アブラーシュ」

《パリの外国ごはん そのあとで。》ポルトガルのバカリャウでライスグラタンとジャガイモ卵炒め「Don Antonia」

写真・室田万央里(以下同)

バカリャウ・アブラーシュ(塩鱈と揚げジャガイモの卵がらめ)

モチモチネットリ不思議な食感と黄色い色の秘密は揚げて水分が抜けたジャガイモと最後に絡める卵でした。卵の量を増やすとオムレツ風になります。ポルトガルでは市販の細切りフライドポテトを使う人も多いようで。確かに芋を揚げる工程を抜かせばあっという間にできあがる料理です。なのにうまい!
そらあそうです。芋に、油だもの……。
ボリュームのある一品、何かアクセントになるものが欲しくてグリーンのサルサを添えました。後半、これを混ぜながら食べるとまたガラリとちがう味になります。
Don Antoniaでは、キャベツも入っていましたが、これがまたいい感じ。春の柔らかいキャベツ、ぜひ入れてほしい。

バカリャウ・アブラーシュ

《パリの外国ごはん そのあとで。》ポルトガルのバカリャウでライスグラタンとジャガイモ卵炒め「Don Antonia」

■材料(2人分)
ポルトガルの塩鱈バカリャウ、または干し鱈 100g(戻す前)
玉ねぎ 小さめ 1個
キャベツ 1枚
ジャガイモ 200g
ベイリーフ 1枚
ニンニク 1/2かけ
オリーブオイル 大さじ2
白ワイン 大さじ3(なければ日本酒でも)
揚げ油
卵 2個

■作り方
バカリャウ、または干し鱈はたっぷりの水につける。水を何度か変えながら戻す。そのまま食べてほのかな塩気がおいしい程度に。私は前日の夜から水につけ朝、味を見ながら時間を調整します。今回使ったのはポルトガル食材屋の塩漬けのまま大まかに割いて売ってあったもの。それでも8時間ほど戻しました。
戻ったら水気を切り骨をとりつつ一口大にほぐす。
大きさにばらつきがあったほうが食べていて楽しい。

ジャガイモを揚げる。
ジャガイモはマッチ棒のような細切りにし、油でからりと揚げてよく油を切る。これが独特の歯ざわりと、どっしり感を出すので頑張って揚げてください。油は厚手の鍋に3センチもあれば大丈夫。ただし重ならないよう何度かに分けて揚げて。

玉ねぎを半分に切ったら繊維に沿って5ミリ程度の薄切りにし、オリーブオイル、白ワイン、ローリエ、塩一つまみを加え中火にかける。時々かき混ぜて透明になるまで火を通す。優しく甘みを引き出すイメージ。そこに切手大に切ったキャベツを入れしんなりするまで炒める。

ほぐしたバカリャウを加え火が通るまで炒める。揚げたジャガイモを加えしんなりとして他の材料となじむまで混ぜる。

卵2個を溶き、フライパンの火を少し弱め、一気に流し込み下から混ぜ込むように混ぜる。火が強すぎると炒り卵のようになってしまうので注意。卵が他の材料をコーティングするようなイメージで。卵に火が通ったらすぐに火から下ろす。

皿に盛り付けざく切りにした香菜とイタリアンパセリの葉、オリーブを散らしコショウをひく。

グリーンサルサ(レシピは下に)を添えて途中から好みで乗せたり混ぜ込んで食べると又違った味となり楽しい。私は青唐辛子を入れヒーヒー食べるのが好き。

《パリの外国ごはん そのあとで。》ポルトガルのバカリャウでライスグラタンとジャガイモ卵炒め「Don Antonia」

■グリーンサルサの作り方
甘唐辛子、獅子唐、ピーマンなどに辛いのが好きなら青唐辛子を混ぜつつ細かく刻んでスプーン山盛り 4杯ほど
エシャロット 1/2個みじん切り
レモン汁
香菜、イタリアンパセリの茎みじん切り 大さじ2
ニョクマム 小さじ1
全てをボウルに入れ混ぜる

使う油の量、恐れずにどうぞ。これでも多分、本場よりは少なめです。口の周りてらてらにしながらバシーっと冷えた白ワインと。最高です。

(文・室田万央里)

PROFILE

  • 川村明子

    東京生まれ。大学卒業後、1998年よりフランス在住。ル・コルドン・ブルー・パリにて製菓・料理課程を修了後、フランスおよびパリの食にまつわる活動を開始。現在は執筆のほか、パリで活躍する日本人シェフのドキュメンタリー番組『お皿にのっていない時間』を手掛けている。著書に『パリのビストロ手帖』『パリのパン屋さん』(新潮社)、『パリ発 サラダでごはん』(ポプラ社)、昨年末に『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス)を出版。
    noteで定期講読マガジン「パリの風と鐘の音と。」始めました!

  • 室田万央里

    無類の食べ物好きの両親の元、東京に生まれる。
    17歳でNYに移り住んだ後、インドネシア、再び東京を経て14年前に渡仏。
    モード界で働いた後に“食べてもらう事の喜び”への興味が押さえきれずケータリング業に転身。
    イベントでのケータリングの他、料理教室、出張料理等をパリで行う。
    野菜中心の家庭料理に妄想気味のアジアンテイストが加わった料理を提供。理想の料理は母の握り飯。未だその味に到達できず。
    Instagram @maorimurota

心ほぐれるブランダード。ポルトガル料理「Don Antonia」

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