このパンがすごい!

「『365日』より先いく近未来パンを」、渋谷に杉窪シェフプロデュース新店/グリーンサム

「『365日』より先いく近未来パンを」、渋谷に杉窪シェフプロデュース新店/グリーンサム

外観

5月10日、人気ベーカリー「365日」杉窪章匡シェフのプロデュース店「グリーンサム」が、渋谷にオープンした(運営は、「グリーンビーントゥバーチョコレート」を手がける株式会社ロイヤル・アーツ)。杉窪さんは言う。

「『365日』のパンよりちょっと先をいく近未来のパンを作りました。パンの形も製法もいままでにない新しいもの」

「『365日』より先いく近未来パンを」、渋谷に杉窪シェフプロデュース新店/グリーンサム

店の前の小麦畑

なんと店舗前に小麦畑が! 店名のグリーンサム(=緑の指)は、触るものみな緑に変える「農業が上手な人」の意味。

「パンをうまく作れる人は、植物を育てられる人と共通しています。小麦は農産物。なのに、まるで工業製品のように、粉袋に入って店に届き、レシピ通りにタイマーをセットする。タマネギやニンジンが1個1個ちがうように、本当は小麦粉も1袋1袋ぜんぶちがう。それを見極めて作れば、おいしいパンができる」

「『365日』より先いく近未来パンを」、渋谷に杉窪シェフプロデュース新店/グリーンサム

グリーンサム[シード]

杉窪シェフといえば、いままでは北海道産小麦がメイン。グリーンサムでは、よりローカルに目を向け、埼玉県川越市周辺でとれる小麦「ハナマンテン」を100%使用、8の字形の未来系ベーグル「グリーンサム」を作った。

「『365日』より先いく近未来パンを」、渋谷に杉窪シェフプロデュース新店/グリーンサム

グリーンサム[オニオン]、グリーンサム[シード]、グリーンサム[セサミ]

ベーグル特有のごわごわ感一切なし。ぷにぷに弾み、とろーんと超絶スムーズに溶ける。乳製品不使用なのにバターのような甘さ。その後、むんむん湧きたつでんぷん質のフレーバーはきっと病みつきになる魔性っぷり。

ハナマンテンは甘さや歯切れのよさという長所がありながら、水を吸う速度が遅く、パンを作るのがむずかしいという評価があった。グリーンサムは湯種(小麦粉をお湯でこねる製法)を武器に、それを一気にくつがえす。

「湯種の量は普通20%程度ですが、それをもっと入れたらどうなるんだろう? どんどん増やして30%入れました。そしたら、水がたくさん入って、もちもちしているけれどすごく歯切れのよい生地ができました」(現場を担当する荒井章吾シェフ)

「『365日』より先いく近未来パンを」、渋谷に杉窪シェフプロデュース新店/グリーンサム

グリーンサムサンドイッチ。グリーンサム[オニオン]+メープル+トマト+チーズ

3種類の「グリーンサム」に、スプレッド(クリームチーズベースに7種のフレーバー)、野菜と具材を選んではさむ、オーダーメイドのサンドイッチが楽しすぎる。私は甘じょっぱさを狙って、グリーンサム[オニオン]にメープルスプレッド、トマトにチーズをチョイス。歯切れのよさも手伝い、魔性のでんぷんフレーバーが、攻めた組み合わせを懐深くまとめてくれた。

「『365日』より先いく近未来パンを」、渋谷に杉窪シェフプロデュース新店/グリーンサム

グリーンブレッド

「グリーンサム」と同じ生地を使った食パンが「グリーンブレッド」。魔性のフレーバーは共通しつつ、トーストすればさくさくの快楽が加わる。副材料は最低限に抑えて栄養バランスを気遣う。「生食パン」の後のムーブメントを見据えたものだ。

ブリオッシュも近未来バージョン。「現在進行形という意味で『ブリオッシング』と呼んでいます。(通常のブリオッシュのように)卵を使うとぱさつくので不使用。その分バターを増やしました」

なんとブリオッシュ生地にバターを折り込んで、クロワッサンのごとく層に。中でも、「ガーデンファーム」に度肝を抜かれた。穴をくりぬいて詰めたオリーブペーストがとろけて、ブリオッシングからあふれでたバターと、動物性・植物性ダブルでオイリーさが押し寄せる。トッピングのイチゴ、ディル、エディブルフラワーがハーブの花束のように香り、かつてなかったマリアージュを繰り広げる。

「『365日』より先いく近未来パンを」、渋谷に杉窪シェフプロデュース新店/グリーンサム

ブラックバゲット[ガナッシュ]

「グリーン ビーン トゥ バー チョコレート」とコラボした「ブラックバゲット」。カカオパウダーを練りこんだ真っ黒なバゲットはかりかり、カカオニブはこりこり。とろーりガナッシュがとろけると、ビーントゥバーならではの土っぽさや鉄っぽさ、ベリーのような酸味があふれた。日本の麦の風味と南米のチョコの風味が共存するなんと不思議な感覚。自然と自然だから調和できる。そのとき私の脳裏に降ってきたイメージは「平和」。パンを通じてメッセージを発信する。これが近未来のパンの真骨頂だ。

グリーンサム
渋谷区桜丘町28−9
03-6452-5611
8:00~18:00
https://greenthumb.tokyo

PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

自家製の薪窯に自家製の種。自然のままに暮らす自給自足のパン屋/ビアンキュイ

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福岡県久留米市から世界を目指したクロワッサン/シェサガラ

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