スリランカ 光の島へ

《スリランカ 光の島へ》スリランカへの新しい一歩、得たもの失ったもの

《スリランカ 光の島へ》スリランカへの新しい一歩、得たもの失ったもの

テロを受けたコロンボの下町の教会。時計は事件が起きた時間で止まっている。ギャラリーはこちら

私たち家族の「スリランカに移住し写真スタジオを作る」というこの挑戦。2年半が過ぎた。得たもの、失ったもの、もちろん両方がある。

まずは失ったものから。
「疎遠になってしまった人脈」。誰だって忙しいから距離的に離れれば、どこにあるかもわからないスリランカに行った人間のことを気にしてるヒマはない。それはお互い様でどうしてもなくなる人脈もある。でも常に途切れず会えばいつも通りな人たちもいる。とてもありがたく大事な存在。

失ったもの二つ目は「貯金」。出資してもらうことや銀行からローンするということは全く考えていなかったので、自分たちの貯金からすべてまかなった。目減りする貯金に真っ青になることも多々ある。でも挑戦するとはそういうことだし、だまされてなくなったわけじゃない。のでよしとする。よしと思えるように引き続き頑張る。

次は得たもの。
ひとつめは「新しい出会い」。ここに書ききれないほど本当にたくさんの出会いが生まれた。もうこれは一生ものだと思える出会いや、今まで自分にはなかった感覚を引き起こす化学変化的な出会いなど。そして不思議なことに何かに挑戦していると、挑戦している人に多く出会う気がする。そうするとお互いに味方になって応援してくれる人が増える。失敗も笑いあえる。

《スリランカ 光の島へ》スリランカへの新しい一歩、得たもの失ったもの

厳重なセキュリティーチェックを受けて祈りに訪れる人々。ギャラリーはこちら

そして一番嬉しかった得たもの、それは「新しい自分」。日本にいるときはフォトグラファーとして撮影するのみ。しかし移住後はとにかく新しいことをどんどんやろうと決めた。「図々しいかもしれない、恥ずかしい結果になるかもしれない」と不安はあったけれど、ここで二の足を踏んでは移住した意味がない。

結果、取材する、書く、発信する、自分のフィールドではないことにも挑戦することができた。これが私です、と言える度胸がついた。もちろんいろんな人の助けがあってこそ。でも声をあげなかったらこのチャンスはなかった。「やりたい」と手をあげるということがこんなにも大事なのかと実感した。世の中はそんなに意地悪じゃない。自分を信じてくれない意地悪な人は実は自分自身なのかも。

もしあなたが新しい一歩を踏み出そうとしていて不安なら、私はあなたのことを全力で応援する。そしてこの連載に出てきた人たちもあなたのことをもちろん応援する。思い通りにならない人生だけど、不安もあるけど大丈夫。もし一歩踏み出せたら、乗り越えるべき壁はどんどん目の前に出てくるから。立ち止まってる暇はない。それに何かに挑戦したい時に遅すぎることなんて絶対にない。若さゆえの「怖いもの知らず」だって武器だけど「年の功」だって武器になる。失敗したらそりゃ落ち込む。だけど失敗を怖がって何もしないことはもっと落ち込む。「失敗しないこと」「こうあるべき」は幸せを約束するものじゃないと私は思っている。

《スリランカ 光の島へ》スリランカへの新しい一歩、得たもの失ったもの

事件3週間後に出かけた撮影で見た夕日、スリランカの美しさを再確認した。ギャラリーはこちら

偉そうだけどもしひとつアドバイスできるとしたら、それはよく考えること。海外に出て思うことは、日本の社会は出来上がっていてとても平和。それはすごく素晴らしいことだけど、どんどん忙しくすることもできるし、楽しいもの便利なものが溢れ、考え事をしようと思ってもなんとなく先延ばしにできてしまう。もしあなたが何か挑戦したいことがあるならあなたは何に喜びを感じるのか、実現するために必要な時間、お金を具体的にじっくりと考えてみてほしい。携帯を置いて、テレビを消して、他人の目は忘れて。一歩踏み出すハードルはとにかく考えて、考えて、考えて準備することで低くなっていく。

今回でこの連載は少し休憩に入る。スリランカで起きてしまった爆破テロ事件で私たちの挑戦は少し難しい状況になってしまった。積み上げてきたものを蹴り飛ばされてしまった感じ。スリランカで暮らし続けることを諦めようと思った日もあった。そんなとき友人が「自分たちの力ではどうしようもないことが時には起こる。気持ちを切り替えてみて」と言ってくれた。毎日夫と話し合い、私たちの正直な気持ちはこの挑戦を諦めたくない、ということだった。自分たちを、そしてスリランカを信じてまた少しずつ積み上げていこうと思う。その作業に集中するための小休憩。

しかしこんな状況下でも面白い出会いや出来事は途切れずあったりして。それはまた次の機会に。

それでは。輝く島からお伝えしました。

(文・写真 石野明子)
    ◇

*7/6(土)に都内でスリランカの魅力を知ってもらうイベントを企画中です。
トークイベントに参加予定、詳細はインスタグラム @studiofortの投稿でお知らせいたします。

↓↓写真のつづきは最下部のギャラリーへ ※写真をクリックすると拡大表示されます。

『五感でたのしむ! 輝きの島スリランカへ』

石野さんの新著『五感でたのしむ! 輝きの島スリランカへ』(イカロス出版)が発売されました。
悠久の世界遺産やバワ建築をこの目で見て、香り高い紅茶とスリランカ・カレーを味わって、豊かな自然と伝統のアーユルヴェーダに癒される--この国に惚れこみ、ついに夫と1歳の娘を連れて移住してしまったフォトグラファーの著者が、まだまだ知られていないこの国の魅力を、美しい写真とともにたっぷりご紹介します。くわしくはこちらへ。

PROFILE

石野明子

2003年、大学卒業後、新聞社の契約フォトグラファーを経て06年からフリーに。13年~文化服装学院にて非常勤講師。17年2月、スリランカ、コロンボに移住して、写真館STUDIO FORTをオープン。大好きなスリランカの発展に貢献したいと、その魅力を伝える活動を続けている。

http://akikoishino.com/
https://www.instagram.com/studiofortlk/
http://studio-fort.com/

《スリランカ 光の島へ》<21>「コロンボで爆破テロ」……あの日から前に進むために

トップへ戻る

RECOMMENDおすすめの記事