花のない花屋

絶対好きになってはいけない恋だった……。サプライズの花束を彼に

絶対好きになってはいけない恋だった……。サプライズの花束を彼に

〈依頼人プロフィール〉
山田恵美さん 34歳 女性
滋賀県在住
自営業

    ◇

私は右目が見えません。見えていないというのがわかったのは、小学校に上がるくらいのとき。あちこちの病院で検査をした結果、生まれつき見えていなかったことがわかり、「もっと早く病院に来ていれば……」とお医者さんに言われたのが、私の右目に関する最初の記憶です。

目が見えないと、まぶたを閉じるタイミングがわからないので、モノが入ったり乾燥したりしてもなかなか気づくことができません。右目はしょっちゅう炎症を起こし、本当によく眼科へ通っていました。 目がにごってしまっていたので、自分の目が他人からどう見られているのかいつも不安で、自分が見られること、人の目を見て話すことが苦手でした。

左目も悪かったので、モノとの距離感がつかみづらく、バスケなどの球技やバドミントンなどはできませんでした。小学校低学年は、ちょうど「人と自分は違うんだ」とわかり始める頃。「自分はみんなと同じじゃない」というのがとてもつらく、だんだん友達とも距離を置くようになりました。

社会人になるまで一人でいることも多く、当然おつきあいをする男性もいませんでした。年頃になっても、「自分が結婚することはないだろう」と思い込んでいました。そう、今の夫に出会うまでは……。

彼とは、仕事がきっかけで知り会いました。目尻が下がっていてやさしい顔の彼は、中性的な雰囲気。会社の取引先の人だったのですが、堅い人が多い中、彼はやさしくて落ち着きがあり、やわらかい物腰でした。

私の一目ぼれです。絶対好きになってはいけない、自分が苦しむだけだと何度も自分を責め、泣いて、思いを忘れようとしたけれど、結局は無理でした。

目に不自由がある自分に自信がなくて、思いを伝えることがずっと苦痛でしたが、ある日勇気をふりしぼり、自分は右目が見えないということ、それでも彼を好きになってしまったことを伝えました。自分の思いを誰かに伝えたのは、生まれて初めてのことです。そんな私に、彼は「全然、大丈夫!」と明るく答え、ありのままの私を受け入れ、そして愛してくれました。

今、私たちには3歳と5歳の子どもがいます。仕事が忙しくても、やさしい彼は子育てに積極的で、常に私と家族を支え続けてくれています。

ふと、「この人と出会わなかったらどうなっていたんだろう」と思うときがあります。同じように生きていても、彼と出会う前と出会った後では、世界がまったく違うのです。彼のお陰で、私はようやく安心して自分らしく生きられるようになった気がします。

そんな大切な夫に、これまでの感謝と愛を込めて、ひだまりのようなあたたかい花束を贈りたいです。彼のイメージは薄い黄緑色やオレンジ色。パステルカラーで、チューリップやバラなどわかりやすいお花を使ってまとめていただけないでしょうか。プロポーズのときにびっくりするほど大きなバラの花束をもらったので、今度は私からのサプライズの花束です。お花を通して「あなたは愛(いと)おしく大切な存在だよ」と伝えられたら……。

絶対好きになってはいけない恋だった……。サプライズの花束を彼に

花束を作った東さんのコメント

素敵(すてき)な旦那さんですね。いいエピソードで、読んだ時にたくさんアンダーラインを引いていました。イエローやオレンジを使ったパステルカラーの花束で、花材はダリア、ガーベラ、カーネーション、カラー、エピデンドラム、マリーゴールド、ピットスポラムです。

「あなたは愛おしく大切な存在だよ」と、花を通して伝えることは嬉しいこと。こういった時に花はいい存在だと思っています。

絶対好きになってはいけない恋だった……。サプライズの花束を彼に

絶対好きになってはいけない恋だった……。サプライズの花束を彼に

絶対好きになってはいけない恋だった……。サプライズの花束を彼に

絶対好きになってはいけない恋だった……。サプライズの花束を彼に

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

絶対好きになってはいけない恋だった……。サプライズの花束を彼に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

「席を譲ろう……」ありふれた説教よりも心に残るエピソードを話した先生へ

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