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恋ってどんなものですか? 小松菜奈×門脇麦×あいみょん『さよならくちびる』鼎談インタビュー

映画『さよならくちびる』が、5月31日に公開を迎えました。
インディーズシーンで人気が上り調子であるにもかかわらず、解散を決めて、最後のツアーに旅立つ女性ギターデュオ、“ハルレオ”。2人が出会い、気持ちを交錯させながらもがき、日々を送るさまをつづる本作は、青春のロードムービーのようでも、音楽映画のようでも、恋愛映画のようでもある。

デュオの詞と曲を書くハルを演じた門脇麦、飛び抜けて美しく気まぐれなレオを演じた小松菜奈、ハルレオの歌う挿入曲を書き下ろしたあいみょん。3人の女性に、本作をめぐってさまざまに話をきいた。
(文・阿久根佐和子 写真・関めぐみ)

   ◇

―― いくつもの切り口のある『さよならくちびる』ですが、同名の主題歌を秦基博さんが、挿入歌『たちまち嵐』『誰にだって訳がある』をあいみょんさんが書き下ろしたことは、大きな話題のひとつだと思います。ハルとレオを演じた門脇さん、小松さんは、作中で実際にこの3曲を演奏し、歌われていましたね。お三方それぞれ、この3曲をどのように受け止めていますか?

あいみょん 秦さんの『さよならくちびる』が、歌詞もメロディーもとにかく素晴らしい。いい曲すぎて落ち込みました(笑)。サビが頭に残って、口ずさんでしまうんですよね。実際にSNSなどでもさっそく弾き語りをしているコたちを見かけたりしましたし、間違いなく愛される曲だと思います。

たまたま、聴いてすぐの頃に秦さんと弾き語りのライブでご一緒する機会があったので、そのことを直接お伝えしたのですが、秦さんも、私の書いた2曲についてとても褒めてくださって、うれしいやら恥ずかしいやら。秦さんも私も、そのくらい、この映画に対して気持ちを込めて作った曲なんだなと思います。

恋ってどんなものですか? 小松菜奈×門脇麦×あいみょん『さよならくちびる』鼎談インタビュー

あいみょんさん

門脇麦 あの3曲が、あってこそのこの脚本、という感じがすごくします。『さよならくちびる』は、ハルレオの特別な想いが込められているし、2人にとってもちょっとスペシャルな曲。あいみょんさんが書かれた2曲は、おそらく2人がずっとやってきた、ハルレオのキャラクター設定のベースとなるような音楽だと思うんです。

作っている方が違うので、曲の匂いが違うのは当然だけれど、だからこそよりイメージが広がりましたし、曲があることでハルとレオのキャラクターが見える部分もあって、本当に救われました。自分への葛藤、世の中への反抗、お互いへの思い……。ハルもレオも不器用で、ケンカばかりしているけど、そういう思いをセリフで吐露するようなシーンが実はあまりなくて。そんな2人の本当は一番言いたい言葉をすべて埋めてくれている気がします。3曲あることで、映画が一層豊かになったなあと。

小松菜奈 秦さんの描くハルレオと、あいみょんさんの描くハルレオの違いがとても興味深かったです。言葉のチョイスや表現の温度も違って、男性の描く女性、女性の描く女性というお二人の曲の違いが、映画にもとてもいいバランスで影響しているなと思います。音楽のおかげで、もうひとつの台本ができたような感覚。私もやっぱり、この歌があったから役を想像しやすかったです。

私は歌は苦手で、歌うと思うとすごくプレッシャーになっちゃうんですが(笑)、歌うというより、歌詞をしゃべる感じ……。レオとしてこの歌詞の言葉をどうやって置くか、というようなことを意識していました。

あいみょん 小松さんが歌が苦手だなんて、とても思えなかったです! お二人ともとても印象的な歌声でした。

私は映画やドラマに曲を提供するときには、がっつりと作品のストーリーに寄り添って作るタイプです。今回提供させていただいた2曲も、この曲ならきちんとハルレオの2人の曲になるだろうな、と思えたものですね。

―― あいみょんさんの書かれた2曲について、もう少し教えていただけますか。

あいみょん 『たちまち嵐』の歌詞に出てくる道端にいた“猫”は、私の中ではレオのことです。台本を読ませていただいて、ハルがレオを拾ったんだと感じたんですよね。レオは自由で、フラッとどこかに行ってしまっていつ戻ってくるかわからない、猫みたいなコだから。

『誰にだって訳がある』は、自分で言うのもなんですが、とても好きな曲です(笑)。この映画って、ハルとレオはもちろん、出てくる人みんなワケありだなあと思えたんです。

実際に誰もが何かしらのワケ……理由やきっかけがあって、今のその人になっている。そう感じることができたので、すごく書きやすい曲でしたね。2曲とも、私にとってとても大切な曲になりました。お二人が、曲が台本を膨らませてくれたと言ってくださったけれど、私にとっては、台本のおかげでいい曲ができたなあと感じています。

恋ってどんなものですか? 小松菜奈×門脇麦×あいみょん『さよならくちびる』鼎談インタビュー

© 2019「さよならくちびる」製作委員会

―― 門脇さんと小松さんは、劇中で実際にギターを弾き語っていますが、ギターは元から弾けたんですか?

門脇麦 いえ、全然……。撮影に入る前、1カ月半くらいかな? すごく練習しましたね。

あいみょん たったそれだけであんなに弾いて歌えるなんて、私はあそこまでいくのに5年はかかりますよ(笑)!

―― ハルとレオ、それぞれの役柄について、門脇さんと小松さんはどのように捉えて演じたのですか?

門脇麦 映画のなかでは、ハルが曲を作っているという設定。彼女は、思いを言葉にすることが極端に苦手で、歌うことでしか本心が伝えられない人なんだと思います。だからもし音楽をやっていなかったとしても、何か別の自己表現をしていただろうなと。そういうことでアウトプットしないと生きていけない人だと思います。

小松菜奈 レオは、まさに今あいみょんさんがおっしゃっていた猫。それも野性的な、野良猫みたいな人物だと思います。自由奔放で、子供みたいで、本能のままに生きていて。ある意味ではとても正直な人でもありますね。

恋ってどんなものですか? 小松菜奈×門脇麦×あいみょん『さよならくちびる』鼎談インタビュー

小松菜奈さん

―― 作品の中で、恋はひとつの大きな要素でした。ハルはレオを好き、レオは付き人のシマ(成田凌)を好き、シマはハルを好き。誰もはっきりとは恋心を口にしないし、誰もが片思いでもどかしい気持ちを抱えている。恋することの切なさも楽しさも見えた気がします。お三方それぞれにとって、恋ってどんなものですか?

門脇麦・小松菜奈 わー! 初めてそんな質問されました(笑)。

あいみょん 本当ですか? 私はラブソングを歌っているせいもあって、けっこう多いです。愛ってなんですか? とか、歌詞にあるのは実体験ですか? とか(笑)。
恋かあ。なんだろうな……。表現者はどこか孤独であった方がいいと私は思っていて。恋愛に対しても、孤独さのようなものは欲してしまいますね。たとえば、失恋ソングを聴きたくなるのって、失恋したときだったりしませんか? 不思議ですよね、悲しいのに悲しい曲を聴くんだから。恋愛ってそんな感じ。

小松菜奈 じゃあ満たされている時には何を聴くんですか?

あいみょん めっちゃアゲアゲのハッピーな曲です!(笑)

門脇麦 私はあいみょんさんとちょっと違っていて、ドキドキするような恋はできればしたくないかも(笑)。仕事に全エネルギーを注ぎたいのでプライベートは安定させたいんです。ドキドキの恋愛のところはなるべく早く通過して落ち着くべきところに落ち着きたいという感じかな。

小松菜奈 役者という仕事は特殊なので、恋愛って難しい面が多いですよね。まあ、でも楽しいもの、かな? 今回の映画のなかで、レオがハルにキスをするシーンがあって。あれはなんだったんだろう、って今ももやもやします。

あいみょん ハルがレオに恋心を寄せているのに、あのキスシーンはレオからハルへの突然のアプローチ。すごくすてきなシーンでした。

門脇麦 あのシーンはリテイクしているんです。監督がもう一回撮りたいとおっしゃられて、私も納得いってなかったので、私も撮り直したいと思っていましたと伝えました。自分からそんな風に言ったのはたぶん初めてですね。そのくらい難しかった。最後までよくわからなかったし、実際に、ハルとレオもよくわかっていなかったんじゃないかなと思います。

恋ってどんなものですか? 小松菜奈×門脇麦×あいみょん『さよならくちびる』鼎談インタビュー

門脇麦さん

―― あいみょんさんはシンガー・ソングライター。門脇さんと小松さんは役者で、今回の役柄はシンガー・ソングライターであり、シンガーでした。3人それぞれのなりわいの、共通点があるとしたら何でしょうか?

あいみょん 私たちアーティストも、演じる局面がとても多い。その点は似ていると思います。

門脇麦 今回ハルを演じることで、私もそのことを改めて感じました。ハルの役作りは、いつもよりプロセスがひとつ多かったんです。ハルはあの曲を作って歌う人。そのためにはどういう人物でなくてはならないか、曲から受ける印象からもキャラクターを立ち上げないといけない。あの歌にふさわしいスタイルや、しっくりくる立ち振る舞いがあるなと強く感じました。シンガー・ソングライターというのは演じるものなんだなあと。

小松菜奈 私たちは台本を読んでキャラクターをつくり、それを演じる。アーティストは舞台に立ってその人を演じる。表現者としては一緒ですよね。

あいみょん そうですね、シンガー・ソングライターというのは役者でもあると思います。自分で台本を書き、演出を決めて、声色も決めて……。

門脇麦 総合プロデュース力が高いですよね。でも、アーティストの方のほうが、より自分の肉体一本で勝負しているという感じがあります。私たちは台本があり、監督がいて、衣装も決まっていて……と、皆さんの力をお借りして……って感じなので本当にすごいなと思います。

あいみょん 私なんてまだ全然そんな力はないですけれど、役者さんからシンガー・ソングライターへのリスペクトをいただくことが多いのは、とてもありがたいです。私たち3人は同世代で、これまでに見てきた映画や聞いてきた音楽はとても似ているはず。でも、歩んでいる人生は3人それぞれに全く違うわけで。そのこと自体、とても面白いですよね。

小松菜奈 まさに“誰にだって訳がある”感じ(笑)。

恋ってどんなものですか? 小松菜奈×門脇麦×あいみょん『さよならくちびる』鼎談インタビュー

© 2019「さよならくちびる」製作委員会

―― それでは最後に、映画をご覧になる方にメッセージをお願いいたします。

あいみょん うーん、恋ってなんだと思いますか、かな(笑)。というのは半分冗談で。音楽を少しでもやっている方にはぜひ見てほしい映画です。デュオならではの衝突、ライブハウスのほこりっぽさ、音楽をやっている意味がわからない、っていう自問自答……。私自身が音楽をやっているなかで、どこか覚えのあるシーンやセリフがたくさん出てきました。音楽を好きな人ならば、きっといくつもの共感を見つけられる映画だと思います。

門脇麦 邦画でしか描けない、温度と湿度のある映画になったと思います。その世界が、秦基博さん、あいみょんさんという、人気と実力のあるアーティストの力をお借りして、さらに幅が広くなり、より見る方を選ばない映画になったなあと。ぜひ劇場で見ていただきたいです。

小松菜奈 俳優陣も、アーティストも、この映画だったからこそのメンバーだと思います。恋愛ものなのか青春ものなのか音楽ものなのかわからない、そのどれでもある映画で、今までにはない作品に仕上がっていると思います。どの世代の方にも愛していただけたらとてもうれしいです。

恋ってどんなものですか? 小松菜奈×門脇麦×あいみょん『さよならくちびる』鼎談インタビュー

© 2019「さよならくちびる」製作委員会

『さよならくちびる』
その美しさでひとを夢中にさせるレオと、その才能でひとの心を奪うハル。孤独だった2人は、二人三脚で音楽と懸命に向き合い、デュオ〈ハルレオ〉としてインディーズ・シーンで注目を集める。そんな2人の前に、付き人として音楽の膨大な知識と抜群のセンスを誇るシマが現れる。ハルレオは乗りは軽いが気配りは細やかなシマに心を開くが、予定外の恋心が芽生え、3人の関係はこじれていく。それでも愛する音楽が彼らを結びつけていたかにみえたのだが……売り言葉に買い言葉で決めたハルレオの解散、彼らを乗せた車はいま最後の別れに向けて、浜松、大阪、新潟、北海道を旅していく。ところが旅の途中でハルレオとシマの思いはますます高まり……最後の歌を歌い終えたとき、彼らがみつけた予想外の未来とは?

■出演:小松菜奈 門脇麦 成田凌
■監督・脚本・原案:塩田明彦
うたby ハルレオ 主題歌 Produced by秦 基博 / 挿入歌 作詞作曲 あいみょん
配給:ギャガ © 2019「さよならくちびる」製作委員会

5月31日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

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小松菜奈 1996年生まれ、東京都出身。
2008年よりモデルとして雑誌を中心に活動するとともに、TV、CMなどに数多く出演。中島哲也監督に見出され、同監督の『渇き。』(14)でスクリーンデビューを飾り、日本アカデミー賞・新人俳優賞のほか、数多くの賞を受賞し注目を集める。その他代表作に『近キョリ恋愛』(14)、『バクマン。』(15)、『黒崎くんの言いなりになんてならない』『ディストラクション・ベイビーズ』(16)、主演を務めた『溺れるナイフ』(16)、『恋は雨上がりのように』(18)、『来る』(18)などがある。今後の公開待機作に、『閉鎖病棟(仮)』(19年11月公開予定)など。

門脇麦 1992年生まれ、東京都出身。
2011年、TVドラマで女優デビュー。14年、三浦大輔監督作『愛の渦』でヒロインを好演し注目を集める。その後、TV、CM、舞台で幅広く活躍。入江悠監督作『太陽』(16)では神木隆之介とともに主演を務め、『二重生活』(16)で初の単独主演を果たす。その他出演作に、『こどもつかい』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』『花筐/HANAGATAMI』(ともに17)、『ここは退屈迎えに来て』(18)、『チワワちゃん』(19)など。主演を務めた白石和彌監督作『止められるか、俺たちを』(18)では、第61回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞した。今後は、2020年の大河ドラマ「麒麟がくる」(ヒロイン)の出演が控えている。

あいみょん 1995生まれ。兵庫県西宮市出身のシンガー・ソングライター。2016年11月30日、ワーナーミュージック・ジャパン内レーベル unBORDE よりシングル「生きていたんだよな」でメジャーデビュー。2018年末には『紅白歌合戦』への出演も果たした。2019年2月13日(水)には2ndアルバム『瞬間的シックスセンス』発売。5月からは対バンツアー『AIMYON vs TOUR 2019 “ラブ・コール”』、10月からは自身最大規模のワンマンツアー『AIMYON TOUR 2019 |SIXTH SENSE STORY|』を開催する。

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