このパンがすごい!

「江古田にこの人あり」、異能のパン職人の新店舗で完売続く/ジャンゴ

「江古田にこの人あり」、異能のパン職人の新店舗で完売続く/ジャンゴ

アップルサイダードーナツ

異能のパン職人がついに、花のお江戸の真ん中で勝負する。江古田にこの人ありと言われた川本宗一郎シェフ。この5月、日本橋浜町に移転、新店舗をオープンさせた。

「江古田にこの人あり」、異能のパン職人の新店舗で完売続く/ジャンゴ

外観

「こんなかっこいい店、日本のどこ探してもないでしょ?」

開口一番、川本シェフが言う。壁に描かれたマトリックス文様が頭をくらくらさせる。なんだ、これは? 川本さんいわく「チェコのキュビズム」と。なぜ、令和の日本でそれを? ぶっ飛びすぎていて、わからない。でもそれが、ジャンゴなのである。移転以来、連日完売。異能すぎるパンが、ここ浜町でブレークしている。

「江古田にこの人あり」、異能のパン職人の新店舗で完売続く/ジャンゴ

店内風景

ダークレッドのパン「ビーツ」は、ジャンゴの看板。その名の通り、野菜のビーツをパンに練りこんでいる。レンコンや山芋に似た根菜の香りがじんじんと鼻腔(びこう)を揺らす。旨味(うまみ)、渋味(しぶみ)の中に、干し芋のような甘さが立ち交じる。なかんずく皮がうまい。十分な発酵が、焼いたジャガイモの皮のような香ばしさを呼び寄せ、ビーツの香りと響きあう。

「江古田にこの人あり」、異能のパン職人の新店舗で完売続く/ジャンゴ

ビーツ

「ビーツをオーブンでローストしてから、皮もいっしょにペーストにして、生地に練りこむ。野菜は皮に香りがありますから」

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鴨ささみサンド(季節商品。鶏ももとナスに変更予定)

人呼んで「サードウェーブサンドイッチの旗手」。冷蔵ケースには、他のパン屋で決して見ない、攻めまくったサンドが豊富に格納されている。「ビーツ」に鴨(かも)を合わせた「鴨ささみサンド(季節商品。鶏ももとナスに変更予定)」。とろっとしたナス、ビーツ、そしてバルサミコと、アントシアニン的な香りを重ねる。ふにゃりやわらかな合鴨(あいがも)のささみは通常のささみよりもっと味わいふくよか。一癖ある肉に寄り添うのが「ビーツ」だ。

幼い頃から父の転勤にともない世界中をめぐったことで美食に目覚めた川本さん。毎年のようにフランス視察を重ねるなどグルメアンテナを養う。異能すぎるアイデアが次から次へと出てくるのはそのためだ。

午前中早い時間に完売する、人気のクロワッサン。皮の破れ方がぱりぱりしゅわしゅわ。内部はエアリーで、ウェッティで、一層一層がなめらかに舌に触れてじゅわっと溶ける。すると食感の軽やかさに比して超濃厚にバターがあふれだす。

作る過程に秘密があった。シートバター(クロワッサン生地を折る用途で薄く加工されたバター)の上に、さらにシートバターの断片を重ね、バターを増し増しに。これによりフランスで食べるクロワッサンのような豊かなバター感を作りだすのだ。

クロワッサンの活用形が「クロワッサン・グリエール」。グリュイエールチーズを生地に巻き込んだもの。ミルキーさに深みが加わり、グリュイエールの香りに、エアリーさの翼が与えられる。
「バターがたっぷり入ったクロワッサンだから、チーズは絶対合う。こうやって食べると、チーズが苦手な人でも食べやすいです」

「江古田にこの人あり」、異能のパン職人の新店舗で完売続く/ジャンゴ

セーグル柚子

移転していよいよハード系が冴(さ)え渡る。「セーグル柚子」は天才的組み合わせ。ライ麦の濃厚な香り、ひまわりの穀物感という重厚さに、ゆずの甘さ、酸味という華々しさを合わせ、穀物の甘みに火をつけている。ほうじ茶のような香ばしさとの組み合わせは、柚餅子(ゆべし)を食べながらお茶をすするがごとき、和っぽいマリアージュ。種のぽりぽり感も楽しい。

異能すぎるハードパンはまだつづく。「コーンブレッド」もそんじょそこらのコーンパンとはちとちがう。口に入った瞬間はコーンを穀物的に感じて、噛(か)んでいくと甘いフレーバーとして感じる。コーングリッツ、コーンフラワーの両方を混ぜた生地。さらに、コーンの粒からぷちゅっと甘き汁が弾け飛び、〆て3方向からの同時多発的コーン風味は、まさにキュビズム。コーンに似た明るい甘さを含む北海道産小麦とのマリアージュはもちろん計算のうちだ。

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バゲットを成形する川本宗一郎シェフ

40も半ばを超えての大ブレーク。若き日は、厳しい修業に耐えかねて、挫折も体験した。だからこそ、異能すぎるパンに到達しえた。

「挫折したから、こんな僕でもなんとかできる方法を考えたんですよ。自分にとっての王道は、自分にしかわからないんだから」

■ブーランジェリー・ジャンゴ
東京都中央区日本橋浜町3-19-4
8:30~18:00
水木休み

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

福岡県久留米市から世界を目指したクロワッサン/シェサガラ

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アメリカ西海岸のパン作りを、群馬県前橋市で実践するベイカー/クロフトベーカリー

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