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<モードの新星>マリーン・セル 価値のないものに価値を

マリーン・セル

<モードの新星>マリーン・セル 価値のないものに価値を

1991年、フランス生まれ

ファッションに倫理性や持続可能性が求められる中、いまパリで最も注目されている新進デザイナーの一人だ。廃品と新品、スポーツとクチュール、過激さと繊細さ、イスラムと欧州など、様々な異なるテイストや文化を混合。メッセージ性が高く、しかもフェミニンな服を作る。

今年の秋冬作品は「黙示録」をテーマに、地球が核戦争で滅亡寸前の時のファッションという設定だった。会場は、生き残った人間が放射能を避けて暮らす洞窟をイメージ。作品はリサイクルのシーツ地のシャツや、ビジュー代わりの古いパソコン部品、フリマで見つけた鍵付きの服……。「地球の危機を皆わかっているのに何も出来ない。どうするつもり?という問題提起」とセルは話す。

写真で本人が着ているニットも、廃品のセーター3枚を染め直し、新たなパターンでカットして縫い合わせ、量感のある旬の服に生まれ変わらせた。「価値のなかった物に価値を与えることが大事なんです」

<モードの新星>マリーン・セル 価値のないものに価値を

(左)19年秋冬作品、(右)マリーン・セル19年春夏作品

服作りはベルギーのラ・カンブル国立美術学校で学んだ。バレンシアガに在職中の2017年、若手の世界的な登竜門「LVMHプライズ」で大賞を受賞。昨年2月、パリ・コレにデビューした。「リサイクル地を使ったのは、お金がなかったせいもあった。でも、新しい物を作っては捨ててという考え方には小さい頃からなじめなかった。だから自分の創造性の核になると思って」

肌の色や出身、文化の境界にこだわらない多様性も作風に漂う。「どんな人も全く差はないと思うから。そういう枠にはあえてまじめに取り組まずに、普通な感じにしているだけ」

アイコンの三日月には、様々な意味を込めた。「月は地球上の皆が眺められるけど誰の物でもない。女性の象徴で、神話や美少女戦士セーラームーンにも出てくるでしょ」と笑う。
リサイクルの服、クチュール的な技を駆使した服など四つのラインを持つ。「作り方が難しくてコストもかかるけれど、この路線のまま、続けていきたい」

かなりの小柄に、澄んだ強い瞳。テニスでも鍛えたしなやかなガッツで「future wear(未来の服)」を目指す。

(編集委員・高橋牧子)

<写真はすべて大原広和氏撮影>

社会へ関わることに信念
ユナイテッドアローズ・栗野宏文上級顧問

ラ・カンブル国立美術学校を卒業したばかりの頃、パリの注目セレクトショップ「ブロークン・アーム」のウィンドー全面に作品が飾られていたのを見て初めて存在を知りました。興味を持っていたところ、僕も審査をしているLVMHの大賞を取り、ついに来た!と。

作品はパリとブリュッセルのテロ事件を受け、イスラムの女性たちも自由にファッションを楽しんだとしたら、という設定だった。明確な主義主張があり、人種や政治への意識、地球環境など、社会の課題に対してファッションがコミットメントできると信じている。そこが彼女の魅力であり、素晴らしいと思う。

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