パリの外国ごはん

蒸しクレープから焼きそばまで興奮が止まらない! ベトナム料理「Fraternité」

蒸しクレープから焼きそばまで興奮が止まらない! ベトナム料理「Fraternité」

蒸しクレープから焼きそばまで興奮が止まらない! ベトナム料理「Fraternité」

蒸しクレープから焼きそばまで興奮が止まらない! ベトナム料理「Fraternité」

パリ在住のフードライター・川村明子さんと、料理人の室田万央里さんが気になるレストランを食べ歩く連載「パリの外国ごはん」。今回は、2人がプロの直感で選んだベトナム料理店で出会った「興奮が止まらない」お料理たちのお話です……。次回、ここから何を作ってくれるのか、「そのあとで」も、待ちきれません……!
    ◇
万央里ちゃんの産休明け復帰第1弾で「Jixiao’s Buns」に行った帰り。近くにおいしいパン屋さんができたから寄らない?と彼女を誘った。パンを買って店を出たら、隣にベトナム料理屋さんがあることに気がついた。それまで何度も前を通っていたのに、一度も目に入ったことはなかった。窓に貼られた、A4の紙に印刷されたメニューをよく見ようと近づくと、品数が少ない。wordで作成したであろう手作り感あふれるそのメニューから察するに、大好物な類の店だ。

それから3カ月。その間、パンを買いに行くたびにメニューをチェックし、食べに行く日を心待ちにしていた。間口も、1.2メートルくらいしかないのではないかと思うくらい小さいのだが、外からのぞいていたとき以上に、実際に中に入ると、奥に細長い店内はこぢんまりと感じた。席を数えると、最大で13人可能のようだ。

蒸しクレープから焼きそばまで興奮が止まらない! ベトナム料理「Fraternité」

さんざん見ていたはずのメニューをテーブルに座り改めて見る。前菜、麺ものがそれぞれ4品。肉料理が2品。「お昼だしお肉はやめておこうか」とそこまでは絞れたものの、数が少ないと、逆に全部食べてみたくなってしまう。消去法で、エビのサラダとスープは今回は却下し、メニューにあればいつでも頼む米粉の蒸しクレープとネム(ベトナム揚げ春巻き)、それにフォーと焼きそばを取ることにした。

ところが注文しようとしたら、店主と思われる女性に顔をしかめられた。「多いですか?」と聞くと、「多すぎる」という。じゃあとりあえずは揚げ春巻きを諦めて、もし途中でおなかに余裕があったら追加しようということで落ち着いた。

私たちは入り口の扉のすぐ右側の席で、出入りの邪魔になるからと、壁側に2人で座っていた。カウンターでもないのに並ぶことになって、なんだか楽しい気分だ。万央里ちゃんがさっそくノートを出してイラストを描き始めると、隣の席のムッシュが興味津々な様子で、手元を見ていた。ノートルダムの目と鼻の先の距離で、観光地なのに、この店の中はとても静かだった。ピッチャーにいれて出してくれた水にはフェンネルの葉が入っていて涼しげだ。

蒸しクレープから焼きそばまで興奮が止まらない! ベトナム料理「Fraternité」

運ばれてきた米粉の蒸しクレープは、意外なほどに見た目のボリュームがあった。大抵この料理は、クレープがペタっとしていて平べったい。だけれどこの店のは、ぷっくらしている。脇に添えられたニンジンともやしも取り分け、クレープの上に散らされたフライドオニオンもちゃんと取って、タレをつけずにまずひと口。中の具にしっかりと味がついていた。タレがなくても十分においしい。

具は豚ひき肉とキクラゲ、それにたまねぎ。コショウがばっちり効いている。豚ひき肉は水分がある程度飛ぶまでよく炒めてある印象で、それでか、たまねぎの甘みとみずみずしさを強く感じた。少し甘みのあるしょうゆのようなタレをつけるとまた別のおいしさが生まれたけれど、タレなしバージョンもなかなか捨てがたいおいしさだった。見た目に違わず、米粉の皮は厚みがあって、口の中でもぷりんぷりんしていた。作る人によってこんなにも違うのだなぁと感心してしまった。

私は焼きそばが大好きで、料理学校に通っていた頃、最後の晩餐(ばんさん)は何を食べたい?と聞いてきたクラスメートに、「焼きそば」と答えてみんなに驚かれたことがある。だからメニューに焼きそばがあったら、プライベートでの食事なら、迷わず頼む。具だくさんなメニューの写真からも、この焼きそばはとても楽しみだった。

蒸しクレープから焼きそばまで興奮が止まらない! ベトナム料理「Fraternité」

出てきたお皿を見て、あれ?と目を止めたのは、そのボリュームではなくて麺である。縮れていた。「このインスタントみたいな縮れ麺、私たまに買う~」と万央里ちゃんが言った。なんと! 確かにアジア食材店の麺の棚を思い浮かべると、こんな麺が売っていたかもしれない。私は買ったことがない。これまで逃していたのかぁという気持ちになりながら、焼きそばを口に運んだ。

麺自体にはほんの軽く塩・コショウをしているだけだろうか。具と一緒に食べてみると優しい味付けがされていた。うすいしょうゆにちょっと甘みがあるからシーズニングソースもかかっているのかもしれない。この縮れ麺にとても合っている。具だくさんの中身は、主役のエビとイカに、チンゲンサイ、ニンジン、もやし、ほんの少しだけ熱を入れたかんじの半生の赤ピーマン。それにコリアンダーとミント。このミントが、全体の味をきりっと仕上げるキーに思えた。

蒸しクレープから焼きそばまで興奮が止まらない! ベトナム料理「Fraternité」

焼きそばですっかり興奮しながらも、フォーを食べると、ちゃんとおだしをとっているのが分かる味だけれど、ザ・牛だし、という強さはなくてやはり優しい。こちらにはタイバジルと刻んだレモングラスがたくさん。麺料理2品のハーブは使い分けられていて、だから、鼻で感じ取る味に重なりは無く、そのことにまたうれしくなった。

蒸しクレープから焼きそばまで興奮が止まらない! ベトナム料理「Fraternité」

食べている間に、「これ、おなか、全然大丈夫だね」とネムを追加した。ぎゅっと具を巻き込んで、ばりばりっと食べ応えある香ばしさを伴うくらいに揚げられたネムは、この日、いちばんパンチのある料理だった。

それでもすこしまだおなかに余裕があったので、デザートも。タピオカと豆にココナツミルクを合わせたもの。小さな器に盛られ、甘さ控えめで、この日食べた料理の延長線上にある味のデザートだった。

蒸しクレープから焼きそばまで興奮が止まらない! ベトナム料理「Fraternité」

翌週、もう疲れがたまっていた金曜のお昼に、この店が頭に浮かんで再訪した。入ったら、前回と同じ席に、万央里ちゃんのイラストに惹かれていたムッシュが座っていた。あ~!とお互いに驚いて、一緒に来ていたムッシュの同僚のマダムにも紹介され、結局同じテーブルで食事を共にした。このムッシュは、2年前にこの店がオープンして1週間も経っていないときに初めて食事をし、それから通っているのだそうだ。きっとまた会うだろう。

蒸しクレープから焼きそばまで興奮が止まらない! ベトナム料理「Fraternité」

Fraternité(フラテルニテ)
65, rue Galande 75005 Paris
09-72-96-51-87
12時~15時、19時~22時30分
月休

PROFILE

  • 川村明子

    東京生まれ。大学卒業後、1998年よりフランス在住。ル・コルドン・ブルー・パリにて製菓・料理課程を修了後、フランスおよびパリの食にまつわる活動を開始。現在は執筆のほか、パリで活躍する日本人シェフのドキュメンタリー番組『お皿にのっていない時間』を手掛けている。著書に『パリのビストロ手帖』『パリのパン屋さん』(新潮社)、『パリ発 サラダでごはん』(ポプラ社)、昨年末に『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス)を出版。
    日々の活動は、Instagram: @mlleakiko、朝ごはんブログ「mes petits-déjeuners」で随時更新中。

    https://www.instagram.com/mlleakiko/
    http://mespetitsdejeuners.blogspot.com/

  • 室田万央里(イラスト)

    無類の食べ物好きの両親の元、東京に生まれる。
    17歳でNYに移り住んだ後、インドネシア、再び東京を経て14年前に渡仏。
    モード界で働いた後に“食べてもらう事の喜び”への興味が押さえきれずケータリング業に転身。
    イベントでのケータリングの他、料理教室、出張料理等をパリで行う。
    野菜中心の家庭料理に妄想気味のアジアンテイストが加わった料理を提供。理想の料理は母の握り飯。未だその味に到達できず。
    Instagram @maorimurota

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《パリの外国ごはん そのあとで。》あなたは揚げ派? 蒸し派? ベトナム風春巻きのコツ「Fraternité」

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