このパンがすごい!

アメリカ西海岸のパン作りを、群馬県前橋市で実践するベイカー/クロフトベーカリー

アメリカ西海岸のパン作りを、群馬県前橋市で実践するベイカー/クロフトベーカリー

メロンパン、クロワッサン、グリーンオリーブのバトンなど

世界の最先端をいくアメリカ西海岸のパン作りを、日本で実践するベイカーが群馬県の前橋市にいる。クロフトベーカリー久保田英史さんは、地域の生産者とつながりあい、地元でとれたものを使ってパンを作る。

アメリカ西海岸のパン作りを、群馬県前橋市で実践するベイカー/クロフトベーカリー

古代穀物のパン

「古代穀物のパン」は、おにぎりのようなパンだ。たくさん水分をふくんだ中身がほわっとやわらかくほどける。高温で焼いたパンならではの旨味(うまみ)と濃い香ばしさ。そこにぷちぷちと穀物の粒が弾ける。スーパーフードといわれるキヌア、アマランサス、そして小麦の古代種であるファッロ。香ばしさ、穀物感、それに根菜っぽさなど、あふれだすさまざまな香り。飲み込んだあとには、口の中にやさしい甘みが残る。

アメリカ西海岸のベーカリーで経験を積んだ久保田さん。このパンの場合、世界中でフォロワーが続出しているサンフランシスコの名店「タルティーンベーカリー」にインスパイアされた。

「古代穀物の知識はタルティーンベーカリーのシェフ、チャッド(・ロバートソン)の言葉を参考にしました。近年収量を増やすために改良された穀物はアレルギー症状などの原因にあたるかもしれないとささやかれている(科学的因果関係は不明)ので、先史時代からあるファッロや、スペインが制服する前から食べられていたキヌアやアマランサスなどをパンに加える発想が生まれました」

一方、製法は日本の巨匠・志賀勝栄シェフ(シニフィアン・シニフィエ)から気づきを得た。4種類もの種(老麺、ルヴァンリキッド、サワー種、レーズン種)を加えて18℃という酵素が活発に働く高めの温度で17時間の長いあいだ発酵。芳醇で濃厚な香りがあるのはこのためだ。

久保田さんは、近年、西海岸のパンに起こった「革命」を見てきた。全国どこでも同じ大量生産の小麦粉を使う代わりに、地元でとれた小麦を地元の製粉会社が挽(ひ)いた「ローカル」な小麦粉でパンを作る。挽いてすぐの粉が届くので、フレッシュな風味をパンに生かせる。

「同じ地域で農作物やお金が循環するのが価値につながる。地域の生産者、製粉会社と手を取り合って、パンの質を飛躍的にあげれば、地元のお客様にも還元できる」

群馬県の高崎や藤岡には、農薬を使わずに作物を作る意欲的な農家が数多い。こうした顔の見える生産者の思いを、地元の人たちに届けることができる。「古代穀物のパン」で使われるのも、高崎市「すみや農園」の全粒粉や、福田農園のファッロなど、直接取り寄せた素材だ。

たとえば、「すみや農園」からクロフトベーカリーまでは、車で30分足らず。生産者の小林祐さんが「農林61号」を自ら挽いたすぐの全粒粉を持ってきてくれる。ふすまに油分がある全粒粉は特に酸化しやすく、劣化が早い。だから新鮮な状態の粉でパンを作れるのは、大きなアドバンテージがある。

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くらかけ豆のパン断面

「くらかけ豆のパン」は、長野県の佐久の在来種である「くらかけ豆」を生産者から取り寄せて作られる。枝豆のフレッシュ感と、ピーナツの土っぽさが両立、ぷるぷるの生地の中にこりこりとした食感があるのはおもしろい。豆の味わいとともに、国産小麦のほんのりな甘さ、発酵種のやさしい酸味が、ぐるぐるとめぐり、豆ごはんのようにむしゃむしゃ食べてしまう。

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グリュイエールチーズのクロックムッシュ

レストランの厨房(ちゅうぼう)でパンを作っていた経験は、総菜パンに生かされている。もちろん地元の食材を使用。「グリュイエールチーズのクロックムッシュ」に使われるのは、群馬県渋川市「ハム工房ぐろーばる」のももハム。グリュイエールチーズ、そして、栃木県産小麦で作られるバゲットの香りと、個性的な食材同士が出会ったときのめくるめく愉楽がある。

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ベーグル&ロックス

アメリカのパンといえばベーグルだが、これをサワードウで作ってしまうのは、いかにもいまっぽい。「ベーグル&ロックス」はクリームチーズ、サーモン、赤玉ねぎと、ど定番ど真ん中の組み合わせ。むちっむちっ。噛(か)み締めて、噛みきれないパン。でもしっかりと湧きあがる小麦の旨味が、具材との最高のパートナーだ。

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対面販売の売り場に立つ、久保田さん

久保田さんは、地域の生産者や製粉会社とつながり、また他のパン屋さんをつなげ、アメリカ西海岸のような、パンの新しいムーブメントを作り出そうとしている。ここから、群馬のパンは、いや日本のパンは革新されていくだろう。

クロフトベーカリー
群馬県前橋市日吉町2-5-1 みずき館 1F
027-257-9052
10:00~18:00
日月木曜休
https://www.facebook.com/CROFTBAKERY/

↓↓フォトギャラリーは下部にあります↓↓ ※写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます。

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)
http://panlabo.jugem.jp/

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