MUSIC TALK

ハンバート ハンバート流、働き方改革。新譜は『フジ三太郎』とコラボ

佐藤良成さんと佐野遊穂さんのフォークデュオ、「ハンバート ハンバート」。昨年、「来年は平日しかライブをしません」と宣言し、話題を呼んだ。週末を休むようになり、2人とその家族の生活にはどんな変化が? また、バラードを集めたベスト盤の新譜のこと、初の試みとなるブルースハープのワークショップ(主催:&w編集部)への意気込みなど、ハンバート ハンバートの気になる「近況報告」をお届けします。(文・中津海麻子、写真・山田秀隆)

仕事に集中できるようになった

――「平日しかライブをしません」と宣言し、ワンマンライブ中心の今年も半年近くが過ぎました。日々の暮らし、音楽活動に変化はありましたか?

佐野 今年はゴールデンウィークが10連休だとわかっていたので、宣言してから「どうやって過ごそう」とずっとワクワクしていました。そして、最初の日は前から入っていたお仕事があったものの、翌日から9連休が実現! 息子3人と計6泊の旅行を楽しむことができました。

佐藤 僕は後半3日間合流したのですが、その前の3日間は曲作りをしていました。家に子どもがいないことがほとんどないので、久々の一人きりの時間。これは集中できるな、と。

佐野 山の中で暮らしている友達の家へ泊まりに行きました。とても遠くて不便なところなので、まとまった休みがないと行けない場所なんです。同じ年ごろのお子さんもいたので、子どもたちは一緒に遊ぶことができて本当に楽しそうでした。「また行きたい!」って。

佐藤 自分たちで計画を立てて家族で旅行するなんて、ほとんど初めて。本当にいい経験ができました。

ハンバート ハンバート流、働き方改革。新譜は『フジ三太郎』とコラボ

佐野遊穂さん(左)と佐藤良成さん

佐野 週末や祝日にライブは入れないと決めたことで、仕事の時間とそれ以外の時間を分けようと、意識するようになりましたね。それまでは週末に家にいない分、平日は仕事をしながらも家事をしたり子どもに向き合ったりしなきゃと思い、結局ごちゃごちゃになることが多かった。でも、会社勤めされている方は、休みの日に仕事で気になることがあってもきっと割り切ってるんだろうな、と。私もそう考えるようにしました。最近その感じに慣れてきて、すごく気に入っています。

佐藤 僕も締め切りが迫っているときなど以外は、基本的に週末は休んでいます。最近、休日は子どもたちと一緒にスケートリンクに通うようになったんです。僕も息子たちもヨチヨチしか滑れませんが(笑)、すごく楽しいですね。平日は仕事して週末は休む。そうすることで自然に気持ちが切り替わり、より仕事に集中できるようになったかもしれません。

泣けるバラードをセレクト

――新譜『WORK』がリリースされます。どのようなアルバムですか?

佐野 初めてのライブ音源によるベスト盤です。これまで2枚出したベストアルバム『FOLK』シリーズに入らなかった曲を集めてライブ盤にしてみよう、と。初期の頃の曲も含め、じっくりと聴き込めるような「泣けるバラード」をセレクト。「平日だけライブ」のスタートとなるツアー「ハンバート家の正月 2019」の全6公演でのライブ音源から厳選し、収録しました。

ハンバート ハンバート流、働き方改革。新譜は『フジ三太郎』とコラボ

佐藤 僕らにとって一番の仕事はライブ。そのライブを週末にやらないことは、ハンバート ハンバート流の働き方改革と言えます。そんな今年にリリースするライブ盤を、一言で表現するなら? と考え、さらに、『FOLK』の番外編として連動した感じを出せるワードとして、『WORK』と名付けました。

――ジャケットに登場したのが、かつて朝日新聞朝刊で連載されていた4コマ漫画『フジ三太郎』です。なぜ?

ハンバート ハンバート流、働き方改革。新譜は『フジ三太郎』とコラボ

ハンバート ハンバート ライブ音源によるバラードベスト『WORK』(6月26日リリース予定)

佐藤 ここ数作、アートディレクションをしてくれているチームからの提案です。それはおもしろいね! と盛り上がりました。高度経済成長時代からバブル時代に連載されていたフジ三太郎は、日本を代表するサラリーマン。『WORK』にはピッタリですし、何より小さいころから新聞連載でなじみのあるキャラクターだったので、これはいいなと。

佐野 バラード感がありますよね。

佐藤 そうだね。働いていると、いいことも悪いこともつらいこともある。その感じが、ジャケットに使った『フジ三太郎』の泣き笑いの表情からも伝わってくる。

ハンバート ハンバート流、働き方改革。新譜は『フジ三太郎』とコラボ

佐野 歌詞カードにはほかのキャラクターも登場します。その曲にどのキャラを合わせるか、ちょっとこだわりました。

佐藤 より「物語」が感じられる構成になったと思います。

――収録曲『小さな声』は書き下ろしの新曲です。曲が生まれた経緯、込めた思いは?

佐藤 ライブ盤の中で唯一の新曲で書き下ろし、ということで、まさに「一曲入魂」で作りました。曲を作るときはまずメロディーを、そしてそのメロディーから感じる雰囲気や感情みたいなものを言葉として紡いで詞にしていきます。今回はその作業の中で、学校や会社、社会の中で、うまく立ち回れない、生きづらいと感じる……僕の中にもあるそんな気持ちが生まれ、詞にしていきました。遊穂やスタッフたちの意見を聞きながら少し書き直し、ちょっとずつピントがあっていって、今の時代の空気感をくんだ一曲になったと思います。

佐野 いつもそうなのですが、良成からは何が出てくるかわからないし、予想していないものが出てくる。『小さな声』も、こういう物語の曲が出てくるとは思っていなかったので、ちょっと意外な感じはしました。でも初めて聴いた時、今回のアルバムに入れる曲としてはこれがいい。そう思えました。

「できた!」という感覚が味わえるワークショップを

――今回、ライブで佐野さんが演奏するブルースハープのワークショップを開催します。ブルースハープをライブのステージに取り入れたきっかけは?

佐藤 ハンバート ハンバートとして活動を始めたころはバンド編成でライブをしていて、サポートのメンバーが間奏や歌の合いの手を入れてくれていました。それが2人きりになって、出せる音が圧倒的に少なくなってしまった。間奏も、ただギターでコードを弾いているだけだと何も起きない時間になってしまうので、とりあえず遊穂に何か楽器をやってほしい、と。

佐野 ギターとかほかの楽器とか、あれこれ挑戦したんですが全然うまく弾けなくて。

佐藤 この人、本当に楽器が何もできないんです(笑)。どんな楽器でも基本ができていないと間違いが目立ってしまうのですが、ハーモニカだけは、弾き方によってはなんとなくサマになる。それで、僕が中学時代から使っていたブルースハープを渡しました。

佐野 教則本もセットで貸してくれたけど、読んでもよくわからない。とりあえず吹いたり吸ったりして……今日に至っています(笑)。

佐藤 曲と曲の間がもつぐらいには弾けるようになったね。

――楽しむコツは?

佐野 これは良成にアドバイスされたことなんですが、「迷っちゃダメ。思い切り!」。あとは、書道みたいな感じがいいんじゃないかな、って。ここは濃くしたいとか、ここは薄くしてみようとか、止めてみたりはねてみたり。そんな風に筆で線を描くようなイメージで吹いてみたら楽しいんじゃないかと思っています。

佐藤 なるほどね。いい感じのこと言うね。初心者の方は、メロディー通りにちゃんと吹こうとすると「不正解」が起きてしまう。そうじゃなくて、なんとなく音楽っぽくなっていればいいんだ、なんだってアリ! と堂々と演奏すれば音楽になる。ハーモニカはそれができる楽器なんです。だから初心者でも大丈夫。あとは、曲の終わりは「ジャーン!(終わるぞ!)」という感じで思い切り吹くこと。絶対に吸わない(笑)。

――ワークショップの参加者にメッセージを。

佐野 昔、母に教わって編み物をしたとき、ちょっと形になっただけで「ちゃんと編み物になってる」と感激しました。そういう「できた!」という、楽しくてうれしい感覚が味わえるようなワークショップにしたいと思っています。

佐藤 コードを押さえられないと弾けないギターや、両手を上手に使わないと演奏できないピアノなどと違い、ハーモニカはルールがとてもシンプル。今回のレッスンが音楽を楽しむ入り口になるといいなと思っています。みなさんが知っている曲と、何かハンバート ハンバートの曲とを吹けるようになっていただけるようなレッスン内容を考えているので、楽しみにしてくださいね。


ハンバート ハンバート
1998年結成、佐藤良成(さとう・りょうせい)と佐野遊穂(さの・ゆうほ)によるデュオ。2人ともがメインボーカルを担当し、フォーク、カントリーなどをルーツにした楽曲と、別れやコンプレックスをテーマにした独自の詞の世界は幅広い年齢層から支持を集める。芥川賞を受賞したお笑い芸人・又吉直樹氏がファンであることを公言するなど、クリエーターからの評価も高い。映画「包帯クラブ」(堤幸彦監督)、「プール」(小林聡美・もたいまさこ出演)で劇中音楽や主題歌を担当し、「シャキーン!」「おかあさんといっしょ」などの子ども番組、人気アニメ「この素晴らしい世界に祝福を!」にも楽曲を提供。話題を呼んだCMソング「アセロラ体操のうた」を始め、現在もミサワホーム、パリミキ/メガネの三城などのCMが多数オンエア中。2017年には細野晴臣氏・長岡亮介氏らをゲストに迎えたアルバム「家族行進曲」を、2018年には結成20周年記念盤「FOLK 2」を発売。2019年6月26日、ライブ音源によるバラード・ベスト『WORK』をリリースする。
ハンバート ハンバート公式サイト:http://www.humberthumbert.net/

【ライブ情報】
「ハンバート家の平日 2019 夏篇」
7月11日(木) 静岡県 静岡 LIVE ROXY
7月18日(木) 大阪府 なんばHatch
7月19日(金) 岡山県 岡山 YEBISU YA PRO
8月22日(木) 盛岡 Club Change Wave
8月23日(金) 仙台 Rensa

「ハンバート家の平日 2019 秋篇」
9月13日(金) 札幌 サンプラザ
9月19日(木) 島根県民会館 中ホール
9月26日(木) 広島 クラブクアトロ
9月27日(金) 広島 クラブクアトロ
10月10日(木) 福岡 イムズホール
10月11日(金) 福岡 イムズホール
10月17日(木) 長野 ネオンホール
10月18日(金) 長野 ネオンホール
10月31日(木) 高知 蛸蔵
11月1日(金) 高知 蛸蔵

「ハンバート家の平日 2019 Final」
12月04日(水) 愛知県 名古屋市芸術創造センター
12月05日(木) 愛知県 名古屋市芸術創造センター
12月13日(金) 大阪府 NHK大阪ホール
12月19日(木) 東京都 中野サンプラザホール
12月20日(金) 東京都 中野サンプラザホール

PROFILE

中津海麻子

執筆テーマは「酒とワンコと男と女」。日本酒とワイン、それらにまつわる旅や食、ペット、人物インタビューなどを中心に取材する。JALカード会員誌「AGORA」、同機内誌「SKYWARD」、ワイン専門誌「ワイン王国」、朝日新聞のブックサイト「好書好日」、同ペットサイト「sippo」などに寄稿。「&w」では「MUSIC TALK」を連載中。

birdデビューから20年 「いま、自分の声に取りつかれている」

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