パリの外国ごはん

《パリの外国ごはん そのあとで。》あなたは揚げ派? 蒸し派? ベトナム風春巻きのコツ「Fraternité」

《パリの外国ごはん そのあとで。》あなたは揚げ派? 蒸し派? ベトナム風春巻きのコツ「Fraternité」

ベトナム料理・フラテルニテ風蒸し春巻き「バンクオン」(写真・室田万央里)

パリ在住のフードライター・川村明子さんと、料理人の室田万央里さんが気になるレストランを食べ歩く連載「パリの外国ごはん」。訪れたお店の「あの一品」を事前の打ち合わせなしで再現する「パリの外国ごはん そのあとで。」! 第4回は、前回のベトナム料理「フラテルニテ」の春巻きと焼きそばを、それぞれ2人でアレンジしたお話です。あなたは揚げ派? それとも、蒸し派? いやどっちも、た、食べたい~~! 

これはいいです! ニンジンの葉っぱの揚げ春巻き

最初に食事に行ったあと、すぐに再訪して、2度続けて焼きそばを食べたフラテルニテ。焼きそばは大好きだし、縮れ麺を買いに行って家でも作りたいと思ったが、私の口の中の記憶に最も存在感を残したのは、揚げ春巻きに入っていた半生状態のタマネギだ。

一緒に包まれたひき肉が、水分を飛ばしてよく焼かれていたおかげで、よりコントラストが出ていたのだと思う。そしてコショウがしっかり効いていた。ゆえに、タマネギの甘さが際立った。みじん切りのくせに、オニオンリングくらいの威力を口の中で発揮していた。

その存在をアピールしたタマネギにより、違う具材でもおいしいはずだ、と思った。オーソドックスな家庭のカレーを食べていた人生に、ナスとひき肉とトマトのカレーを初めて作って食べたときのような新たな味の世界が開ける期待を抱いたのだ。私は、タマネギと同等の効果を秘めた別の食材を頭の中で探していた。

試したいと思ったのは、きゅうりだ。

タマネギほどの甘みは無いにしても、火を通すことで柔らかなジューシーさとでも言おうか、生とは別の風味が出てくる。豚ひき肉はやはり焼き目がしっかりつくまで炒めて、あとはタマネギもスライスにして入れよう。キュウリの緑には、赤タマネギが色もきれいで良さそうだ。

《パリの外国ごはん そのあとで。》あなたは揚げ派? 蒸し派? ベトナム風春巻きのコツ「Fraternité」

ニンジンの葉っぱの使い道がここに……!(写真・川村明子)

それともうひとつ。ニンジンの葉っぱ。

フランスに三つ葉はないから、代替案で、かき揚げを作るときにニンジンの葉をたまに使う。以前はイタリアンパセリで作っていたが、どうしても味が強い。対してニンジンの葉は、少し蒸したお茶のような香りを伴い、ほかのハーブにはないおいしさが出る。

それで、2種類作ってみることにした。

キュウリバージョンは、気持ち太めの千切りにしたキュウリと、赤タマネギのスライス、それによーく炒めて、塩コショウでしっかり味付けをした豚ひき肉。

ニンジンの葉バージョンは、鶏のささみを合わせることにした。さっとゆでて手で裂き、ナンプラーとコショウで下味をつける。ニンジンの葉は毛が生えていてチクチクするので、茎はちゃんと取り除くようにして葉だけをつむ。そこにピーナッツを加え、塩コショウ、それにちょびっと粗糖(そとう)をふってあえた。この二つの要素をともに巻く。

タレは、常に作り置きしているヌクチャム。砂糖、ライム汁、ナンプラー、湯、赤唐辛子を合わせたもの。朝でもためらわず使いたいから、私はニンニクを加えない。

米粉の皮に包まれて揚げられたキュウリとタマネギ、食べたことありますか? もしパイ包みの何かが大好きな人なら、この揚げ春巻き、ハマるんじゃないかなぁ。熱ごと汁ごと包みこんで透明なんだけれどちょっとくぐもった、とろんと溶けているかんじ。冷めてもおいしい。

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鶏のささみを合わせた揚げ春巻き、ニンジンの葉バージョン(写真・川村明子)

でもそれ以上に、いやぁよく思いついたよ私!と自分をほめたくなったのはニンジンの葉バージョン。揚げ物の香ばしさとパンチがあるのに、蒸された葉の優しさにほんのりと苦味。でも、この苦味はまあるい苦味。そして、ピーナッツを加えたのが功を奏した。これはいいですよ、ビールにきっと。

実は、マルシェでいつも野菜を買う農家のスタンドで、ニンジンはいらないのだけど葉っぱだけ欲しい、と言ったら、みんなにいらないと言われて実から切り離され、収穫ケースにわんさか残っていた葉っぱを手提げのビニール袋にいっぱい詰めて、くれた。だから材料費は、ささみだけ。

もし直売所やファーマーズマーケットで、ニンジンの葉を見つけたら、それは包んで揚げ時です。これからの季節、ぴったりだと思います。

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焼きそばは、新ニンニクの葉と新タマネギの葉で(写真・川村明子)

2度も続けて食べた、大変気に入った焼きそばは、シンプルに新ニンニクの葉と新タマネギの葉で、塩焼きそばにしたい、と作った。

初めて買った縮れ麺は、ゆでると、思わず目を見開くほどに油が使われていることが見て取れた。あまりに驚いて、ゆで上がり、湯を切ったあとに水洗いした。

ごま油に香りを移すように、ニンニクとタマネギの葉を炒め、しっかりと塩コショウして、そこに麺を加え全体をあえる。最後にディルをたっぷり。

麺は、湯切りして食べるカップ焼きそばそのものだった。それで、ブルドックソース(だけれど、有機野菜で作っているらしいもの)をちょっとかけてみると、ペヤングになった。ディルの香りが、あのかやくに入っていた何かに非常に似ている気がした。

(川村明子)

室田さんの蒸し春巻きレシピ「あさりとニラのバンクオン」

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室田さんの制作メモ(写真・室田万央里)

全く食べないわけではありませんが基本的には私は肉を食べません。理由はいろいろあるのですが、あえて自分から選んで食べる食材でなくていいかな、と思って家では肉以外のものを手を替え品を替え食べています。

この連載でも、ベジタリアンのチョイスがあれば頼みますが、なければお肉の料理も勿論楽しみます。そして家に帰って肉の部分を何に変えたらおいしかろう、と妄想するのが好きなのです。

黒コショウのピリッと効いた豚ひき肉がおいしかったベトナム風クレープ又は蒸し春巻きと言われるバンクオン。豚肉を豆腐に変えても、ザ・肉の代替ベジタリアン用メニューで、つまらん。ならばキャラの濃い食材でなんかないかなーと思っていたところに例えばあさりなんか入れたらどうだろう、と思ったわけです。生姜とあさりを炒めて、そこに粗みじん切りにした玉葱とニラを入れてしゃっきりとろりっとしたのを米粉のクレープで巻いたらいけるんでないか、と。

結果、大変いけました。貝のうまみがプルプルの米粉とタピオカ粉の生地にピッタリ! うめえ! ビールもう一杯!
春雨とニラに、あさりから出た汁をたっぷり吸わせてくださいね。

あさりとニラのバンクオン
2人分(フライパンの大きさにもよりますが約10~12本出来ます)

■材料
クレープ
米粉 80g
タピオカ粉 70g
水 370ml
植物油(匂いの少ないもの)大さじ1
塩 ひとつまみ
全てをボウルに入れ泡立て器などでよく混ぜ、休ませておく間に具を用意する


あさり 20個ほど(殻付き)
ニラ(細かく刻んで) 100g(10本程)
緑豆春雨 15g (戻す前)たっぷりの水で戻し粗く刻む
タマネギ 1個(あれば新タマネギがシャキシャキしておいしい)粗く刻む
生姜(繊維に沿って千切り) 20g
植物油(ひまわり油、米油など香りが少ないもの) 大さじ1
酒 大さじ2
オイスターソース 小さじ1
黒コショウ

フライパンに油と生姜の千切りを入れ中火にかける。生姜がジュワジュワと香り立ってきたらタマネギをいれ一分ほど炒める。あさりと酒を入れ蓋をする。

殻が開いたらあさりを取り出す。鍋に残った汁に粗く刻んだ春雨、ニラ、オイスターソースを入れ春雨に汁を吸わせるようなイメージで時々かき混ぜる。その間にあさりの身を殻から外し、フライパンに戻す。そのときに出た汁も捨てずにフライパンに。
春雨が汁を吸ったら火を止める。
黒コショウをたっぷり挽く。

タレ
米酢 大さじ1
レモン汁 大さじ2
ニョクマム 大さじ2
水 大さじ1
醤油 小さじ1
きび砂糖 大さじ2と1/2
にんにく 1/2かけ みじん切り
赤唐辛子(好みで)みじん切り

全ての材料をよく混ぜておく

トッピング
もやし 70g
香菜、ミント 好きなだけ(全部合わせて片手に一掴みもあると良い。あればディル、バジル、紫蘇なども混ぜて)
揚げエシャロット (ベルギーエシャロットの皮をむき薄切りにし食物油で弱火で揚げる。揚げたオイルは香りがとても良いので炒め物、スープの香りづけなどに大活躍)

■作り方

《パリの外国ごはん そのあとで。》あなたは揚げ派? 蒸し派? ベトナム風春巻きのコツ「Fraternité」

何しろ作りたてがおいしいです!(写真・室田万央里)

フライパンより大きなサイズの平らな皿を一枚用意し、植物油を薄く塗る(分量外)。

フライパン(必ず油がよくなじんだフライパンやテフロン加工のものを使わないと、くっつきやすく途中で泣きます。サイズはあまり大きくない22~24cmくらいの物が丁度いい)を中火で熱し、植物油(分量外)を引きキッチンペーパーなどでさっとぬぐう。

クレープの生地は粉が下に沈んでいる筈なので、そこをもう一度泡立て器かおたまでよく混ぜたあと(かなりシャバシャバです)生地をおたま一杯分流し込み素早くフライパンを傾けてなるべく薄く広げる。広げている間に隙間や穴が多少開こうが、形がいびつだろうが、巻いてしまうので問題なし。

モタモタして生地が厚いまま火が通ってしまうとそれはもうひたすら餅を食べているようになってげんなりするのでそちらの方が避けたい。薄ければ薄いほど、口の中でとろりんつるんとうまいのです。

ふたをして弱火にし、生地が半透明になるまで熱する(約30秒ほど)。

ふたを外し、フライパンをエイやっとひっくり返し生地をお皿の上に乗せる。

10~12分の1くらいの具を手前半分にほそ長く乗せ、端を折ってくるくると手前から巻いていく。
生地と具がなくなるまで繰り返す。

器に盛り付け、もやし、ハーブ、揚げエシャロットを添えてタレをたっぷりつけていただきます。
何しろ作りたてがおいしい!ので、なんだったらコンロを食卓に持ち出して材料を並べみんなでわいわい作っては食べ、するのも楽しいですよ。

(室田万央里)

PROFILE

  • 川村明子

    東京生まれ。大学卒業後、1998年よりフランス在住。ル・コルドン・ブルー・パリにて製菓・料理課程を修了後、フランスおよびパリの食にまつわる活動を開始。現在は執筆のほか、パリで活躍する日本人シェフのドキュメンタリー番組『お皿にのっていない時間』を手掛けている。著書に『パリのビストロ手帖』『パリのパン屋さん』(新潮社)、『パリ発 サラダでごはん』(ポプラ社)、昨年末に『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス)を出版。
    日々の活動は、Instagram: @mlleakiko、朝ごはんブログ「mes petits-déjeuners」で随時更新中。

  • 室田万央里(イラスト)

    無類の食べ物好きの両親の元、東京に生まれる。
    17歳でNYに移り住んだ後、インドネシア、再び東京を経て14年前に渡仏。
    モード界で働いた後に“食べてもらう事の喜び”への興味が押さえきれずケータリング業に転身。
    イベントでのケータリングの他、料理教室、出張料理等をパリで行う。
    野菜中心の家庭料理に妄想気味のアジアンテイストが加わった料理を提供。理想の料理は母の握り飯。未だその味に到達できず。
    Instagram @maorimurota

蒸しクレープから焼きそばまで興奮が止まらない! ベトナム料理「Fraternité」

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