このパンがすごい!

コーヒー焙煎士が焼く絶品の自家製食パン/メガネコーヒー

コーヒー焙煎士が焼く絶品の自家製食パン/メガネコーヒー

ハムのサンドイッチとホットコーヒー(ケニア カガアリ)

インストゥルメンタルの曲が小さく流れているだけで、話し声も聞こえない。静かな、とても静かなコーヒー店。だけども、店内にいる誰もが静かに満ち足りて時を過ごす。カウンターの中の竹日渉さんは、干渉することも、ほったらかすこともなく、絶妙の距離感で客と接する。

コーヒー焙煎士が焼く絶品の自家製食パン/メガネコーヒー

店内風景

コーヒーの焙煎(ばいせん)士でありながら、絶品の自家製食パンを焼く。それどころか、あんこやハムやバスク風チーズケーキもすべて自分で作る。

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竹日渉さん

夏だけに供される「ハムのサンドイッチ」は、竹日さんのクラフトマンシップを集大成したような一品だ。

夢見心地のやわらかさ。そーっと持ち上げると、つまんだところが沈んでぺしゃんこになってしまうほど繊細なのだ。はむっ。低反発まくらのようにふんわりと沈み、沈みきったところではじめて一瞬だけ反発したかと思うと、ハムといっしょにふにっとちぎれる。豚ロースとバターと食パン。ほのかとほのかとほのかが掛け合わされ、口の中に満ち満ちる甘さは、メープルシロップに似たやさしさ。その中から、じわっと肉の香りが吐息のように漏れる。

コーヒー焙煎士が焼く絶品の自家製食パン/メガネコーヒー

豚ひき肉とチーズのホットサンド

竹日さんおすすめのコーヒー「ケニア」を後口に注いでみよう。柑橘(かんきつ)のような酸味とロースト香が変化を与え、いぶされたように、豚の香りが色めきたつ。

シンプルイズベスト。竹日さんは注文を受けてから、その日焼きあがったばかりの食パンを厚切りで切り出してバターを塗り、うつくしいピンク色のハムをはさむ。たったこれだけ。ただし、このとき、刷毛(はけ)で半透明の液体をひと塗りする。

「真空パックした豚ロースを低温でゆでる。この肉汁がおいしいんですよ。(はさむとき)ハムに塗ります。最初は生クリームのソースを塗っていたんですが、これを思いついてからは、ソースなしになりました」

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ハムのサンドイッチ

食パンには砂糖を多めに、パン酵母(イースト)も極力少なく(酵母が糖分を食いつくさないよう)、甘めに。そのおかげで、ハムの塩気と反応して、ソフトタッチの甘じょっぱい味がめくるめく広がりを見せる。

「肉まんの皮みたいなのを作りたくて。窯に入れる前に生地を食べる。このときしっかり甘さが残っている事を確認する。生地の弾力と甘さは毎日チェックします」

たしかに、肉まんの皮をほうふつとさせる甘さ、ふわふわ感だ。パン職人の作ったパンでないからとあなどってはならない。コーヒー豆の微妙な風味とわたりあう繊細な舌と鼻をもって、パンと毎日向かい合っているのだから。たった1種類のみに集中できることもアドバンテージだ。

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小倉トースト

「小倉トースト」は自家製のあんこをトーストに添える。バター付きではないことにやや落胆したのもつかのま、その意図を知って興奮した。格子状に切れ目を入れたトーストの一片を引っこ抜き、あんこをなする。トーストに塗られたバターがミルキーさを発揮、さらにカフェオレを含めば、小倉アイスのごときマリアージュが見事完成。焦らしのあとだけに、感動はさらに強烈だ。

トースト加減も絶妙。表面は褐色に色がついてぱりぱり、切れ目にそって内部までぱりぱりゾーンは広がっているけれど、絹のようななめらかさをもつふわふわ部分も依然として残される。バルミューダを使用しているのに、何度も開け閉めして理想の焼き加減へ向かうべく自ら確かめているのもなんだかおかしい。

コーヒー焙煎士が焼く絶品の自家製食パン/メガネコーヒー

店内風景

コーヒーはフレンチプレス(紅茶のポットのような器具にコーヒーの粉を入れお湯を直接注ぎ入れるスタイル)。でも、客まかせにせず、最高の抽出具合で供してくれる。えぐみを寸止めにし、豆の特徴を十二分に引き出すこの方法もあいまって、マリアージュはその日供される豆の種類によって偶発的で、ときに強烈である。たとえば、エチオピアとトーストの耳。エチオピアならではの桃のようなフルーティーさや酸味が、耳の甘さと衝撃的な巡り合いを果たしていた。

コーヒー焙煎士が焼く絶品の自家製食パン/メガネコーヒー

店内風景

■メガネコーヒー
東京都杉並区下高井戸3-3-3
03-5374-3277
12:00~17:00、18:00~21:30
不定休(HPで要確認)
http://megane-coffee.com

↓↓フォトギャラリーは下部にあります↓↓ ※写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます。
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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

アメリカ西海岸のパン作りを、群馬県前橋市で実践するベイカー/クロフトベーカリー

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卸売市場の大衆食堂で味わうツナメルト/調理室池田

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