てまひま

大量に廃棄される生花……“ロスフラワー”をよみがえらせる河島春佳さん

デジタルの進化が進み、世の中がどんどん便利になっている昨今。めんどうなことはすべてロボットが私たちの代わりにやってくれるという時代もくるのでしょうか。もちろん、歓迎すべき未来ではありますが1度、足を止めて考えたいこともあります。

この時代にあって“てまひま”かけて毎日を過ごしている人がいます。便利の波に乗らない彼らの価値観のなかには、私たちが忘れがちなこと、見落としがちなことが少なくありません。そんな“我が道を貫く”専門家の元を訪れ、生きるためのヒントを得る企画。今回、お話をうかがったのは、大量に廃棄されている生花の現実を伝え、“ロスフラワー”に新たな命を吹き込むフラワーサイクリストの河島春佳さんです。

大量に廃棄される生花……“ロスフラワー”をよみがえらせる河島春佳さん

まだ食べられる食品が廃棄されてしまう“食品ロス”が問題視されている昨今。食料廃棄削減へ向けた取り組みは拡大していますが、廃棄の問題は食品にとどまりません。

“ロスフラワー”。

それは、“食品ロス”のように、「大量に廃棄されている生花の現実を多くの人に知ってもらいたい」という思いを込めて、2017年に河島春佳さんが名付けました。

大量に廃棄されていく“生花”をどうにかしたい

大量に廃棄される生花……“ロスフラワー”をよみがえらせる河島春佳さん

毎週のようにお花屋さんに足を運んで生花を買い、部屋に飾る。花が弱ってきたら部屋につるしてドライフラワーに。「捨てるのがもったいない」という気持ちが芽生えたことをきっかけに、ドライフラワーに興味をもった河島さん。

「ドライフラワーをはじめて2年くらい経った頃、縁あってお花屋さんで働くことになりました。そんななかで、結婚式場にお花を届ける機会がありました。会場を彩った花は、式の後にお花屋さんが回収するのですが、回収したお花の行き先は、そのままゴミ袋のなか……。その現実を目の当たりにしたとき、ショックを受けました。まだ生き生きと咲いているのに、捨てなきゃならないなんて」

もちろん、メインのお花や、高砂に飾ったお花などは新郎新婦が持ち帰ることもあるのですが、アレンジメントによっては持ち帰りにくいものもあり、そういったお花は、状態に関係なく廃棄されてしまいます。やるせない気持ちになった河島さんは、ことわりを入れて廃棄のお花を持ち帰り、自宅でドライフラワーにして飾ることにしたのです。

大量に廃棄される生花……“ロスフラワー”をよみがえらせる河島春佳さん

「お花屋さんも、捨てたくて捨てているわけではありません。できることなら、廃棄したくないと思っているはず。でも、ほかのカップルに使うのは失礼にあたるので再利用するわけにもいかない。それに、土台に挿すために短くカットされたお花は、アレンジの自由が効かないので、そもそも使い道が限られています。お花屋さんは、日々フレッシュなお花を最優先しなくてはならないので、時間が経っているお花や、アレンジに使われたお花は廃棄せざるをえない。そんな悲しい現実を知って、どうにかしたいと思うようになりました」

大量に廃棄される生花……“ロスフラワー”をよみがえらせる河島春佳さん

結婚式に限らず、クリスマスや母の日、お祝い事などで花を贈るシーンは多い。しかし、そういった行事のためにアレンジされたお花は、売れ残ると廃棄されてしまいます。それは、2月3日の節分を過ぎると売り場から撤去され、廃棄されている恵方巻きと同じ。

“ロスフラワー”に新たな命を吹き込む

河島さんは「ロスフラワーをなくしたい」という思いを掲げ、共感してくれた生花店や結婚式場などから廃棄されるお花を引き取り、ドライフラワーの作品に。新たな命を吹き込む活動をはじめました。

大量に廃棄される生花……“ロスフラワー”をよみがえらせる河島春佳さん

「FUNFUN FLOWER」という屋号で、2017年よりロスフラワーを使った作品作りをスタート

生花をドライフラワーにするには、束ねて干したり、色を入れたりと、いくつもの工程と時間が必要になります。

そもそも、ドライフラワーにする生花も、生花を扱う各所に自ら交渉し、不定期的に足を運んで引き取りに行くわけですから、作業のスタートラインに立つまでもひと苦労。ゴミとして捨てるのは一瞬ですが、ロスフラワーに命を吹き込むためには、「ロスフラワーゼロ」への共感を得るための努力と、作品にするための制作時間が不可欠なのです。

大量に廃棄される生花……“ロスフラワー”をよみがえらせる河島春佳さん

大量に廃棄される生花……“ロスフラワー”をよみがえらせる河島春佳さん

ドライにしたお花をいくつか束ねてスワッグにしたり、色を付けてイヤリングにしたりして、各所のイベントに出店している

河島さんのロスフラワーを減らすための活動は、作品作りや販売に留まりません。東京・青山で開催されている『ファーマーズマーケット』に出店した際は、ロスフラワーについての現状をお客さんに直接伝える取り組みを行っています。

「鮮度は落ちているけれど捨てるにはまだ早い、というお花をその場で仕入れ、セミドライフラワーとしてブーケを作ってワンコインで販売します。でも、仕入れたお花のなかにはドライフラワーに向かない花もあるので、そういったお花は、足を運んでくれた方に無料で配っています。ただ単に配るわけではなくて、『わたしは廃棄のお花を使って商品を作っていて、廃棄の花って、じつは都内の生花店で30~40%位あるんです』と、ロスフラワーについて話を聞いてくれた方にプレゼントする形をとっています」

大量に廃棄される生花……“ロスフラワー”をよみがえらせる河島春佳さん

マーケットに出展したときの様子(提供/河島さん)

ひとりひとりに直接、自分の言葉でロスフラワーの現実を伝えている河島さん。1度にたくさんの人に伝えることはできませんが、ひとりであっても、花を手に取る人の意識が変われば、いつか生花を取り巻く環境を変える手立てにつながるかもしれません。

「今やっている活動は、全部好きなことばかり。お花が好きだし、好きなものを買うのも好き。自分で何かを作るのも、販売するうえで人と接するのも好きです。やっていることが楽しくて好きでしょうがない。身体が勝手に動いている感覚ですね。活動が不規則なので、朝が早かったり夜が遅かったりすることが体力的には大変だけれど、それでも今日はどんなお花に会えるのかなと思うと、いつもワクワクするんです」

大量に廃棄される生花……“ロスフラワー”をよみがえらせる河島春佳さん

めざすのは、廃棄のないお花屋さんをオープンすること

最後に、これからの展望をお聞きしました。

「2019年内を目標に、ロスフラワーだけを扱うお花屋さんをオープンしたいと思っています。店内には、本来は廃棄されてしまう生花に加え、すべてドライフラワーに適した種類にします。そうすると、お店で売る生花もいずれはドライフラワーにして再び販売することができ、店内での“ロスゼロ”を可能にできます。これこそ、廃棄のないお花屋さんです」

展開するお店も、河島さんがオーナーになる個人店ではなく、フランチャイズ展開を視野に入れています。

「ロスフラワーをなくすためには、フランチャイズにしてどんどん裾を広げていかないと解決できません。そのため、自分がお店に立つのではなく、オーナーになりたい人を募って、廃棄のないお花屋さんを展開できれば。年内には形にしたいと思って、今頑張っています」

大量に廃棄される生花……“ロスフラワー”をよみがえらせる河島春佳さん

■取材協力/FUNFUN FLOWER
http://harukakawashima.com/wp/

(文・山畑理絵 写真・茂田羽生)

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