花のない花屋

結婚を機に知り合いのいない地域へ。うつになった私を支えた夫へ花束を

結婚を機に知り合いのいない地域へ。うつになった私を支えた夫へ花束を

〈依頼人プロフィール〉
堀静香さん(仮名)44歳 女性
栃木県在住
会社員

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今思えば、昨年の春頃から少しずつ眠れない日が増え、仕事中にやたらとのどが渇いたり、おなかや頭が痛くなったり、急に涙があふれてくる……ということが起き始めました。

時間が経つにつれ心身ともにつらさは増し、毎朝起きると「会社に行きたくない」と泣いてしまうことも。そしてある日、会社で義務づけられているストレステストを受けると、そのまま保健室のような場所へ呼び出され、すぐに病院へ行くように言われました。

結果は、うつ病でした。すぐに入院してもいいくらいだとのことでしたが、とりあえず薬と休養で様子を見ることになりました。

うつ病になった原因はおそらく仕事です。結婚を機に生まれ育った富山から、夫以外に知り合いも親戚もいない栃木県へ移り、すぐに現地の会社に契約社員として入社しました。その後は慣れない仕事に悪戦苦闘しながら、正社員登用試験、社内資格試験、国家資格を受け、一心不乱に家事と仕事を続けてきました。

仕事内容がどんどん難しくなっていきましたが、一段とつらくなってきたのは、隣にいた先輩がうつで休職してからです。仕事量が増え、仕事はやってもやっても終わらず、朝は6時40分に家を出て、帰宅は21時過ぎ。休日出勤もあり、心身ともに悲鳴をあげていました。

病院の先生からは、「寝ることと食べることだけに専念するように」と言われ、昨年秋から今にいたるまで仕事はおろか、家事も一切禁止されています。

この間、私を支えてくれているのが結婚11年目になる夫です。夫は仕事をしながら掃除、洗濯、料理といった家事をすべて引き受け、さらに私に気を使わせないよう文句ひとつ言わずに、いつも明るく振る舞ってくれています。今は私の母が隣の家に住んでいますが、母のことも同じように大事にしてくれています。夫がいなかったら私はきっと途方に暮れてしまっていたでしょう。

そこで、そんな夫へ感謝の花束を作っていただけないでしょうか。「絶対によくなって、また無理せず働くから。本当にいつもありがとう!」という気持ちを込めて……。

夫は赤い色が大好きで、Tシャツや家電、持ち物はなんでも赤い色を欲しがります。夫は花には詳しくないので、花の魅力がわかりやすい、いい香りのする赤い花でアレンジしてもらえるとうれしいです。

結婚を機に知り合いのいない地域へ。うつになった私を支えた夫へ花束を

花束を作った東さんのコメント

花の魅力がわかりやすく伝わるよう、真っ赤なバラの花束にしました。ダリア、ガーベラ、アルストロメリア、ヒペリカム、エピデンドラム、ポリシャスを織り交ぜており、旦那さんの優しい雰囲気なども表現。

改めて思うのですが、花を贈ることはいいことですね。当然、ずっと生きているものではないのですが、だからこそのたくましさがあったり。ストレスの多い時代ではありますが、僕も花に生かされています。

結婚を機に知り合いのいない地域へ。うつになった私を支えた夫へ花束を

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結婚を機に知り合いのいない地域へ。うつになった私を支えた夫へ花束を

結婚を機に知り合いのいない地域へ。うつになった私を支えた夫へ花束を

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」まとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

結婚を機に知り合いのいない地域へ。うつになった私を支えた夫へ花束を

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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http://azumamakoto.com/

PROFILE

  • 宇佐美里圭

    1979年、東京都生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒。在学中、ペルー・クスコにて旅行会社勤務、バルセロナ・ポンペウファブラ大学写真専攻修了。ワールドミュージック誌、スペイン語通訳、女性誌、『週刊朝日』編集部を経て、『アサヒカメラ』編集部。料理研究家・行正り香さんの書籍を多数手がける。ラテン音楽、山、ワインが好き。

  • 椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

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