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ゆったり過ごす「リトアニアの短い夏」を、銀座で味わう

ゆったり過ごす「リトアニアの短い夏」を、銀座で味わう

ヨーロッパの北東部で、バルト諸国の一番南に位置するリトアニア。日本からの直行便はなく、ヘルシンキやコペンハーゲン経由で約13時間。広さは北海道の約8割、約290万人が生活している。旧ソ連から独立を果たしたのは1991年のこと(松田沙織さん撮影・以下同)

リトアニアの夏は短い。人々は夏の訪れを心待ちにし、貴重な太陽の光のもとでゆるやかな時を過ごすことを大切にしているという。
6月26日から松屋銀座で、リトアニアのクラフトや若手デザイナーによるプロダクトを扱うセレクトショップ「LTshop」が、夏の旅に想いをはせるイベントを開く。オーナー兼バイヤーの松田沙織さんに「リトアニアの夏の過ごし方」を聞いた。(文・吉川明子)
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リトアニアの夏は6月にやってきて、7月後半くらいには終わってしまう。人々は、バルト海のリゾートやサマーハウスなどに拠点を移し、自然の中で思い思いの時間を過ごすことが多いという。冬ともなればマイナス20度まで下がり、15時過ぎには日が沈むが、夏は最長で22時頃まで明るいため、太陽の光を存分に浴びるのが、地元の人たちの大きな楽しみだという。

買い付けを兼ねて年3回、リトアニアを訪れる松田さんにとって、夏の訪問は特別なもの。現地に住んだことがない分、この時はできるだけ長めに滞在し、リトアニア人の暮らしぶりを体感するようにしているからだ。

ゆったり過ごす「リトアニアの短い夏」を、銀座で味わう

リトアニアの伝統的なお祭り、夏至祭の様子。一年で一番昼間の長い夏至を祝う

「現地の知り合いも夏休みにどこかに行くことが多いので、『一緒に行く?』と誘われるとくっついて遊びに行くことにしています(笑)」

そこで松田さんが見たものは、自然の中でゆったりとした時間を過ごす人々の姿だ。国土の1/3を緑が覆い、大小3000もの湖が点在しているリトアニア。首都ヴィリニュスであっても、車で20分も走れば豊かな森がある。

人々の暮らしは自然と地続きで、収穫の時期でもある夏には森で野いちごやきのこを摘み、ジャムやピクルスなど保存食を作る。仕事が終わってもまだ日は高いので、庭の手入れをしたり、友達や家族と湖のほとりに行ってのんびりと過ごす。

「特に何かをするわけじゃないんです。私も友達に誘われるがままに、車で海に遊びに行き、しばらくそこで時間を過ごして帰ってくるだけ。日本で同じことをしようとすると、地域によると思いますがそれなりのコストもかかります。リトアニアでは都市に暮らしていても自然との距離が近く、森や湖の中でのひとときと両立できる。うらやましいスタイルだと思います」

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リトアニアの夏の風物詩、シャルティバルシチャイ(ビーツの冷製スープ)。リトアニア滞在中は、現地の友人たちや仕入先の作家たちが手料理でもてなしてくれる

美大でファッションデザインを学んでいた松田さんは、衣装制作に携わった演劇公演について出かけたルーマニアのシェークスピア演劇祭で、リトアニア国立ドラマ劇場の演目を見た。その舞台や衣装のモダンな独特の美しさが忘れられず、30代を目前にリトアニアを訪れた。憧れの国立ドラマ劇場はオフシーズンで閉まっていたものの、その裏手にあったギャラリーのオーナー女性との出会いが、すべての始まりとなった。

「リトアニアは麻の産地で、テキスタイルは日本でもよく見かけていたので、現地でも見てみたいと思っていました。実は、そのお店の女性は建築家兼インテリアデザイナーで、その店を開いたばかり。しかも日本の文化やデザインに興味があることもあって、すごく親切にしてくれたんです」

その女性が「明日、民芸市に行くけど、一緒に行く?」と誘ってくれ、松田さんはそこでかごや木製のカトラリーなど、素朴な手仕事の工芸品に出会う。

「小売店が少なくて並ぶモノは少ないけれど、そこにいる人たちの心は豊かで、丁寧な手仕事によって作られたモノが日常的にある。それが何か、“正しいあり方”のように感じられたんです」

以来、松田さんはリトアニアに毎年足を運ぶようになる。人の紹介や、偶然の出会いによって、農閑期にかごを作る人や陶芸家などともつながりができていく。いま、「LTshop」に並んでいるのは、そういうつながりの中からもたらされたものばかりだ。

ゆったり過ごす「リトアニアの短い夏」を、銀座で味わう

店内に並ぶのは、松田さんが地道に親交を深めてきたリトアニア人の作家の洋服や小物、民芸品、そして名物のクラフトチョコレート”ナイーブ”も

「日本にとってリトアニアはまだまだなじみがない国。リトアニアも日本に対してとても好意的ですが、情報が偏っているのが現状です。お互いの国を知るためには、単発の文化的なイベントなどを行うより、活動を継続していくためにもビジネスを基盤とすることが必要だと思い、まずは現地で見つけたものを日本に紹介しながら、情報発信を続けています」

そう話す松田さんは、全国各地でリトアニアのクラフトを販売するイベントにも力を入れている。6月26日から松屋銀座(東京)で開かれる「Lithuania Diary 2019 – Summer trip」でも、夏の旅や暮らしを連想させるクラフトやリネンの服を紹介する予定だ。今年で2回目になる。

「リトアニアは資本主義国家としては国が新しいためか、既成概念にとらわれず、変化をいとわずに新しいことを取り入れたり、挑戦したりする人が多いような気がします。私たちもリトアニアのことをまだあまりよく知らない分、先入観なしに、自分の感覚でいいなと感じられるモノと出会えるのでは、と思います」

ゆったり過ごす「リトアニアの短い夏」を、銀座で味わう

ゆったり過ごす「リトアニアの短い夏」を、銀座で味わう

リトアニアでは古くから樹木の根をかごづくりに用いてきた。主に収穫に使う、働くかごだ。松の根のかご(7400円~・税別)


ゆったり過ごす「リトアニアの短い夏」を、銀座で味わう

シギタスさんの電話線のかご。電話線で編んだかごも、摘んだベリーの色がしみないので、現地で重宝されているという(3600円~・税別)

日本から約8000km離れた、森と湖の小さな国にも短い夏が訪れようとしている。松田さんが現地で心惹かれたモノたちを通して、彼らの素朴な夏の過ごし方に想いをはせるだけで、心が少し穏やかになれそうな気がする。

「Lithuania Diary 2019 – Summer trip」
日時:6月26日(水)~7月2日(火)
   10:00-20:00 (最終日は19:00閉場)
場所:松屋銀座 7階 デザインギャラリー1953

松田沙織(まつだ・さおり)

武蔵野美術大学でクリエイティブディレクター小池一子氏に学ぶ。卒業後、テキスタイルデザインの株式会社布を経て、デザインチームsuimokとして活動。2010年よりリトアニアの文化やライフスタイルのリサーチを開始。2013年、リトアニア製品の専門店「LTshop」を東京・外苑前にオープン(photo Neringa Sunday Photography)

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