パリの外国ごはん

スープもタコのクスクスも濃厚。太陽のようなチュニジア食堂「Tounsia」

スープもタコのクスクスも濃厚。太陽のようなチュニジア食堂「Tounsia」

イラスト・室田万央里

スープもタコのクスクスも濃厚。太陽のようなチュニジア食堂「Tounsia」

スープもタコのクスクスも濃厚。太陽のようなチュニジア食堂「Tounsia」

冬のグレーの空の下、前を通りかかったときに、まるでそこには太陽があるかのように感じて立ち止まった店があった。室内の暖かさで窓が曇っていて、店内はとても小さく見えた。満席のようだ。貼られたメニューを見ると、店名の下にチュニジア食堂と書かれている。ここは万央里ちゃんと来たいなぁと思った。

季節は移り、パリは夏模様。太陽のように思えた店トゥンシアは、窓を開け放していた。やはり満席で、でも外から見て受けた印象より、店内には奥行きがある。メニューには、食事前のおつまみと、チュニジアのストリートフード、前菜、メイン、デザートが並び、知らない言葉が散らばっていた。

スープもタコのクスクスも濃厚。太陽のようなチュニジア食堂「Tounsia」

店名の下にチュニジア食堂と書いてある

着く前から決めていたのはシャクシューカだ。これまで食べたことがあるのはイスラエル系のレストランで、朝食としてだった。赤ピーマンとトマトソースに卵を割って焼いたそれは、いつだって食べたい味だ。でも北アフリカ系の店では食べたことがなかった。

それにやっぱりクスクスも。メニューの下に、私のママのレシピ、と書いてあるのを見たら頼まないわけにはいかない。野菜のクスクスの次に、タコのクスクスがあった。これは興味深い。即決した。

スープもタコのクスクスも濃厚。太陽のようなチュニジア食堂「Tounsia」

さらっとしたチョルバ、麦入り。ぷっくらした麦の食感が楽しい

その二つと同じくらい、これも!と惹かれたのは、前菜の最後に列挙されているチョルバである。前回ご紹介したベトナム料理店フラテルニテを再訪したときに、相席で食事を共にしたフランス人のガイドさんたちにこの連載の話をしたら、パリの外国ごはん話で盛り上がった。その中で挙がったひとつが、チョルバだったのだ。

ラマダン明けに食べるスープで、だから、イスラム系の店に行ったらメニューになくても必ず作ってくれるわよ、と教えてくれた。帰って検索すると、チョルバはスープを指すらしく、ラマダン明けとは限らないようだったけれど、でもそのチョルバにここで出合えるとは! 図らずも万央里ちゃんが「スープも食べたい」と言ってくれたので、頼むことにした。

スープもタコのクスクスも濃厚。太陽のようなチュニジア食堂「Tounsia」

上がニンジンのキャビア。ニンジンとツナにオリーブの組み合わせ

すでに欲張り気味だったが、さらにストリートフードのひとつと、「チュニジアで母の味として最もポピュラーな料理」と銘打ってあるニンジンのキャビア(中近東系の料理で、野菜を潰したピュレ状のものをフランスでは“キャビア”と呼ぶことが多い)も取ることにした。

5品も注文するほどにすでに興奮気味だった私たちの前に、ほどなくして、ニンジンのキャビアとチョルバが運ばれてきた。器がかわいい。「断食のあとに最初に胃に入れるものだから優しい味よ」と聞いていたが、ミネストローネのようなスープはさらっとしていて、レンズ豆にひよこ豆、それと大麦のような食感の小さな粒も入っていた。あとからメニューを見たら、緑色のひきわり小麦だったようだ。塩気が控えめでするすると胃に収まる優しい味。

ニンジンの方は少しぴりっとして、食欲を刺激した。それでもニンジンの甘みがあるから攻撃的ではない。この一皿以外にもツナを具にした料理がいくつか見られた。シェフの出身地が地中海沿岸なのかもしれないなぁ。

スープもタコのクスクスも濃厚。太陽のようなチュニジア食堂「Tounsia」

シャクシューカには、オプションのメルゲーズソーセージを追加

続けてシャクシューカも登場。赤みが少ない印象だ。ほじくるようにすると、緑と黄のピーマンが見えた。赤ピーマンだけのものより、味が和らぐ気がした。シャクシューカは食べるたびに、家でも作ろう、そしてごはんを入れよう、と思う。この店のものはとりわけ、子どものときに出されたら大好物になっていたであろう味で、ドリアのようにして作り置きをしたい気にさせた。

スープもタコのクスクスも濃厚。太陽のようなチュニジア食堂「Tounsia」

一口でリフレッシュできる甘さ控えめの自家製レモネード

待っていたドリンクも出てきて、喉を潤す。私は、ミント入りの、万央里ちゃんはオレンジ花水風味の炭酸割り自家製レモネードを頼んでいた。味わいすっきりで、ますます食が進む。

最初、ツナとハーブのオムレツをセモリナ粉のパンに詰めたチュニジアン・ストリートフードのスターなるものを注文しようとしたのだがもう売り切れで、代わりに、やはりセモリナ粉で作ったガレットのロール状サンドイッチをお願いしていた。

スープもタコのクスクスも濃厚。太陽のようなチュニジア食堂「Tounsia」

薄く香ばしい皮で野菜がたっぷり包まれているラップサンド

食べたら、だいぶ前に紹介したYemmaのガレットサンドイッチ(これもすこぶるおいしかった!)を思い出した。Yemmaのは生地がもちっとしていたが、こちらのはとても薄くてパリパリだ。ヨーグルトソースが爽やかで、生野菜もたっぷりで、チキンもしっとりで、すでに結構食べているのに中断することなく食べてしまった。

スープもタコのクスクスも濃厚。太陽のようなチュニジア食堂「Tounsia」

初めてのタコのクスクス

そして、お待ちかねのクスクス。本当だ。タコが主役。具にピーマンも入れたクスクスをレストランで見たのは初めてかもしれない。クスクスの粒の上にすでに具が装われ、ブイヨンだけ別に出てきた。このブイヨンがまた、むむっと注意を引く濃度である。魚介の味がした。「タコのゆで汁入れてるのかなぁ」「濃厚だよね。なんか甲殻類の出汁も入ってそうだよ」なんて話しながら、食べ終えた。

誰もお客さんは他にいなくなって(私たちはランチとは思えないほどに満喫した)、ずっとサービスをしていた女性に尋ねた。彼女がオーナーだった。ブイヨンは、タコのゆで汁を加えているのではなく、野菜のブイヨンの中でタコをゆでているという。そりゃぁ濃厚になるわけだ。

スープもタコのクスクスも濃厚。太陽のようなチュニジア食堂「Tounsia」

外観 鮮やかなブルーの外観

「イタリアの近く? タコがよく獲れる地域なのですか?」と聞いてみた。イタリアのかかとにあたる地方ならチュニジアと目と鼻の先だし、タコが多そうだ。すると、たしかにイタリアには近くて、チュニジアでも他のエリアではタコのクスクスはないらしい。郷土料理のようなものみたいだ。

「シチリアにもタコのクスクスがあると聞いたことがある」と彼女は言った。それと、ブイヨンの色が濃い理由はもうひとつあって、マグレブ(北アフリカ)でも、モロッコやアルジェリアに比べチュニジアはずっとたくさんトマトを使うのだそうだ。全体的にトマト味が強い、それが特徴、と。そうか、やっぱり南イタリアと近さを感じさせるんだなぁ。魚介のクスクスっていうテーマで旅行がしたくなった。

Tounsia トゥンシア
55, rue de Paradis 75010 Paris
06-65-26-38-28
12時~15時、19時~22時30分
日月休

PROFILE

  • 川村明子

    東京生まれ。大学卒業後、1998年よりフランス在住。ル・コルドン・ブルー・パリにて製菓・料理課程を修了後、フランスおよびパリの食にまつわる活動を開始。現在は執筆のほか、パリで活躍する日本人シェフのドキュメンタリー番組『お皿にのっていない時間』を手掛けている。著書に『パリのビストロ手帖』『パリのパン屋さん』(新潮社)、『パリ発 サラダでごはん』(ポプラ社)、昨年末に『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス)を出版。
    日々の活動は、Instagram: @mlleakiko、朝ごはんブログ「mes petits-déjeuners」で随時更新中。

    https://www.instagram.com/mlleakiko/
    http://mespetitsdejeuners.blogspot.com/

  • 室田万央里(イラスト)

    無類の食べ物好きの両親の元、東京に生まれる。
    17歳でNYに移り住んだ後、インドネシア、再び東京を経て14年前に渡仏。
    モード界で働いた後に“食べてもらう事の喜び”への興味が押さえきれずケータリング業に転身。
    イベントでのケータリングの他、料理教室、出張料理等をパリで行う。
    野菜中心の家庭料理に妄想気味のアジアンテイストが加わった料理を提供。理想の料理は母の握り飯。未だその味に到達できず。
    Instagram @maorimurota

《パリの外国ごはん そのあとで。》あなたは揚げ派? 蒸し派? ベトナム風春巻きのコツ「Fraternité」

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《パリの外国ごはん そのあとで。》チュニジア食堂「Tounsia」のシャクシューカとサラダを再現!

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