花のない花屋

結婚し、別の家庭を築く私。一心同体のように生きてきた母へ

〈依頼人プロフィール〉
後藤あまねさん(仮名) 28歳 女性
東京都在住
会社員

私は長い間、母と一心同体のように生きてきました。母は子ども好きで、教えることも得意。これまでは保育士や塾の英語の先生として働いていました。

母は子どもを頭ごなしに否定することはなく、明るく前向きで、辛抱強いうえに誰よりもがんばり屋。そんな姿を見て、いろいろな場面で子ども心に「自分もがんばらなきゃ」と思わされてきました。いまでも覚えているのは中学受験のとき。母は自分でもノートを細かくとりながら勉強し、しっかり理解してから私にひとつずつ教えてくれました。そこまでやられると、子どもとしても勉強せざるを得ません。

そして、何かに迷ったときはいつも“ちょっと難しそうな方”を勧めてきました。「面白そうだし、挑戦してみたら」と言われると、こちらもつい出来そうな気持ちになってしまいます。

そんな風にいつも母に背中を押されて大学まで進んできた私ですが、試練が待っていたのは就職活動のとき。希望していたテレビ局、新聞社は惨敗。その他の企業も何社も落ち続け、母には心配をかけてしまいました。ようやく一般企業に就職が決まったときは喜んでくれましたが、「仕事はやりがいがあるか」「ちゃんと能力をいかせているか」など、言葉にこそあまりしませんでしたが心配をしてくれていたようです。

ケンカをしたことのなかった母と唯一ぶつかったのは、結婚相手のことでした。結婚を前提につきあっていた当時の彼と、「まずは数年、同棲(どうせい)してみよう」と一緒に住むことにしたら、母としては「(自分の)会ったこともない男と同棲なんてありえない」と怒り心頭。それでも、いざ結婚の意思がかたまり両親に紹介すると、とても喜んでくれましたが……。

この春にその彼と無事に結婚式をあげ、今は新しい家庭を築く一歩を踏み出しています。これまでは母に頼りっぱなしでしたが、これからは自分の足で立たなくては……と、最近改めて思っています。

そこで、これまでの人生の一区切りとして、母への感謝を込めた花束を作っていただけないでしょうか。いま母は専業主婦ですが、最近は仏教の勉強をしているようです。趣味はガーデニングと英会話。黄色やオレンジ色が好きです。満開の花ではなく、未来を予感させるつぼみの花が好きなので、つぼみの花束を作っていただけたらうれしいです。

結婚し、別の家庭を築く私。一心同体のように生きてきた母へ

花束を作った東さんのコメント

〝ちょっと難しそうな方〟。私もこれに共感できます。これまで選択する際に、 大変な方を選んできたことで、今の財産になっています。お母さんご自身も難しい方を選んでこられたのでしょう。

そんなお母様への感謝の花束なので、カラフルなものを意識しました。

ガーデニングがご趣味。ですので、パステル調のポップでカラフルなガーデン風に仕上げました。花材はバラ、マトリカリア、セダム、スカビオサ、ジニア、アガパンサス、アルケミラモリス、ヒペリカム、カーネーション。

花を通じてお母様と会話できることは、非常にいいことですね。改めてそう思いました。

結婚し、別の家庭を築く私。一心同体のように生きてきた母へ

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結婚し、別の家庭を築く私。一心同体のように生きてきた母へ

結婚し、別の家庭を築く私。一心同体のように生きてきた母へ

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

結婚し、別の家庭を築く私。一心同体のように生きてきた母へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

  • 宇佐美里圭

    1979年、東京都生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒。在学中、ペルー・クスコにて旅行会社勤務、バルセロナ・ポンペウファブラ大学写真専攻修了。ワールドミュージック誌、スペイン語通訳、女性誌、『週刊朝日』編集部を経て、『アサヒカメラ』編集部。料理研究家・行正り香さんの書籍を多数手がける。ラテン音楽、山、ワインが好き。

  • 椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

「私の人生、これから楽しくなる!」再び夢を追い始めた妹

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バイオリンが唯一の仕事に。人生の道しるべをくれた母へ

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